メグとエイジ2
前回のあらすじ
私は川上メグ十六歳。
ある日の夜、私は部屋で一人目覚めて、身寄りがなく、恋人であるエイちゃんの家に行くことにした。
エイちゃんは私を見て驚き、どうやら私は死んでしまったと知らされ、よみがえった私を快く迎えてくれた。
それはそれで良かったんだけれども、私は吸血鬼として蘇り、そんな私でもエイちゃんは拒まず、吸血鬼の好物である血をエイちゃんは吸わせてくれて、私は何とか生きながらえることが出来た。
そして朝、起きたら、私は太陽の光を浴びて、全身が燃えるように熱くなり、そんな私をエイちゃんは、太陽の光を浴びないように、部屋をベニヤ板で囲い太陽を遮断してくれた。
様々な不安がわき起こり、私は人知れず、みんなに力を貸してほしいと懇願したのだった。
目覚めると爽快な感じだった。
それに私は良い夢を見れた。
私が吸血鬼になっても、塾のみんなが快く迎えてくれることに。
真っ暗な部屋の中デジタル式の時計を見ると、午後六時を回ったところだった。
ノックの音がして、私は「はい」と返事をしたら、中に入ってきたのは聡美ちゃんだった。
そこで聡美ちゃんを見て、私は私の中で何が起きたのか分からないが、聡美ちゃんはエイちゃんの本当の兄弟じゃないんだと脳裏に駆けめぐった。
「メグちゃん。寝ていたの?」
「うん。私どうやら吸血鬼で太陽の光には弱いみたいで、日中は部屋からは出られないかな」
「じゃあ、もう日も暮れている事だし、塾のみんなに顔を合わせに行こうよ。
みんなメグちゃんに会いたがっているよ」
「本当に」
みんなの前からいなくなったことを私は心から謝らなくてはいけない。
聡美ちゃんに手を引かれて、豊川先生が経営する塾に着いていき、みんな娯楽室で私の事を待っていた。
みんな私の顔を見ると、目を大きく広げて驚いている様子だ。
「本当にメグちゃんなの?」
弱虫の麻美が泣きながら私のところに身を乗り出して近づいてくる。
「麻美ちゃん。ごめんね。私が死んでみんなを悲しませちゃって」
「良いのよ。メグちゃんが生きていれば」
私に泣きつく麻美ちゃん。
そんな麻美ちゃんを見ると、なぜか麻美ちゃんに対する過去が復元される。
麻美ちゃんは学校でいじめられ、不登校になり、ここのフリースクールに通う事になった。
その情報は知っているが、なぜかそれ以上の情報が私の脳内に駆けめぐった。
いじめやそれに関する事を一人で思い悩み、追い詰めてしまい死ぬ事を考えてしまうみたいだ。
だからこうして一人で悩まないで、極力塾のみんなと過ごすようにしている。
そこで双子の十一歳のませた女の子の盟と梓が、
「本当に何をやっているのよ。あんたが死んだと聞いたときは本当に悲しかったんだから」
「まあ、でも生きているみたいだし、結果オーライって感じだね」
盟と梓を見ると、また脳内に謎の記憶が駆けめぐった。
二人の事は事情は父親の虐待と聞いている。
そこでも私が知られざる記憶が駆けめぐり、私の心臓はつぶれそうな気持ちに陥った。
父親は二人を外国の闇ルートに売買されそうな所を豊川先生に助けられたと言っている。
何だろう?この知られざる私の記憶は。
そこで私のお姉さん的な存在の里音が、
「メグ生きていたんだな」
淡々とした口調で言っているが、この人は感情をあまり表に出さない人だと言うことは知っている。
里音に関する事は私も知らないし、私の中に眠っている謎の記憶も知らないと言っている。
その謎の記憶は里音の事は豊川先生しか知らないと語るように脳内に巡っている。
まあみんなの事、私の中に存在する私が知らなかったみんなの事を教えてくれた謎の記憶。
そんな事はともかく、みんなが私の事をこんなにも思っている事に感極まって涙を流してしまった。
麻美ちゃん。双子の盟と梓。私のお姉さん的な存在の里音。
朝眠っていたときに見ていた夢は正夢だったことに昨日の不安が嘘のように思えてきた。
生きていた私に麻美ちゃん、双子の盟と梓、そして私のお姉さん的存在の里音達四人は、私を快く歓迎してくれ、私の心は潤った。
色々と語り合い四人には吸血鬼である事は伏せておいて、たわいもない会話を繰り広げながら、楽しく語り合った。
部屋に戻り、みんなの知らなかった謎の記憶が駆けめぐったのはなぜか?疑問に思う。
私は吸血鬼として、何らかの未知の力が身についたのか?不安にもなるけど、もしかしたらこの力はみんなを守る為に使えるかもしれないと言う期待もあった。
ベットの上で仰向けになって、私は胸に手を当てる。
私は一人じゃない。
そう人知れず呟いた直後、その通りだと言わんばかりに私の恋人のエイちゃんが帰宅してきた。
「ただいま」
とエイちゃんは嬉しそうだ。
「おかえり」
「いい子にしていたかメグ」
私の頭をなでて子供扱いするエイちゃん。
そしてそのエイちゃんの笑顔を見ていると不安な事が思い上がってきた。
そんな私をエイちゃんは察したのか、
「大丈夫だよメグ。お前は一人じゃない。お前には居場所はある」
「でも私はいつまでもエイちゃんに甘えるわけには・・・」
「メグ、俺はメグが生きている事が俺の生き甲斐なんだよ。俺はお前がいるから頑張れた。だからこれからも強く生きて俺を頑張らせてくれ」
「エイちゃん」
エイちゃんの気持ちを聞いて私は嬉しくて、涙がこぼれ落ちる。
そんな私にエイちゃんは、
「そうだ。明日俺休みだから、お前は夜は平気なんだよな。だから久しぶりにオールで夜中にデートしようぜ」
「本当に」
私のテンションは最高潮になった。
エイちゃんと久しぶりにオールナイトデート。でも私は、
「でもエイちゃんはもう大学生でしょ。夜中に夜遊びなんて、それはちょっと不謹慎何じゃない?」
「大丈夫だよ。たまにならいいんだよ。たまになら」
エイちゃんがそういうなら。
「分かった。エイちゃんがそういうなら」
私は意気揚々に答えて、エイちゃんとハイタッチ。
と言う事でエイちゃんは私との夜中のデートに備えて、早い眠りについた。
そして午後二十三時。
フリースクールには東大受験を目指して、勉強している徳川さん七十歳に生きていたことを挨拶をして私とエイちゃんは外に出た。
真夜中のデート。本当は不良のやることかもしれないけど、私たちはもう大人だから大丈夫。
エイちゃんが原付にエンジンをかけ、ヘルメットを着用して、エイちゃんが運転する原付の後ろでエイちゃんにしがみつき、「しっかり捕まっていろよ」そして目的地の眠らない町、仙台へと向かった。
こうしてエイちゃんとぎゅっと密着しているとすごく安心してしまう。
そして何だろう?不思議な感覚にとらわれた。
こうしてエイちゃんに密着しているとエイちゃんの考えている事が手に取るような感覚にとらわれる。
メグが生きていて本当に良かった。
もしメグが生きていなかったら、俺ももしかしたら後を追っていたかも。
メグは俺の生き甲斐だからな。
メグが生きていたからこそ、俺は俺でいられて夢に向かって頑張ることができたんだよ。
もしかしてエイちゃんの心の声?
こうして人に密着することで私は人の心が読めるの?
先ほどの聡美ちゃん達を見て、謎の記憶が頭に浮かんで、里音意外のみんなの事情を知ることが出来た。
私は吸血鬼になって、何か得たいのしれない力が身についたみたいだと確信した。
なぜそうなったのか?考えると無性に不安に思えてくるので今は、エイちゃんの心を読んで気持ちを和ませようとしたが、
今日こそはメグと一線を越えよう。
メグの××。メグの××。
その他にも色々と私に対していかがわしいことを考えているエイちゃん。
後ろから首を締め付けてやりたいと思ったが、人の心の中ってこんなもんじゃないかと割り切った。これ以上エイちゃんの心の中を探ると、気がおかしくなりそうなので、もう探るのはやめようと思った瞬間、エイちゃんの心の声が途切れた。
どうやら人の肌にふれて心を読むんだと念じれば、読めるようになるようだ。
それにあまり人の心を読むのは良くないだろうし、私も心の中身を知られたら嫌な思いをするから、あまりこの力は使わない方がいいかもしれない。
それにあまり深く心の中を読むと、その下心までも探れるようになり、そうなると、私まで気がおかしくなるので控えた方がいいな。
「よし、到着したぞ」
そこは眠らない町仙台だった。
仙台のアーケード街は市販のお店は閉まっているが、カラオケやゲームセンターはオールナイトで遊べて、退屈しない。
私とエイちゃんはとりあえず、ゲームセンターに入って二人で記念のプリクラをとった。
画面に向かって私とエイちゃんは楽しそうに笑って撮影された。
できあがった写真を見てみると、見ている私まで幸せになってしまう程の笑顔だ。
何かエイちゃんとこうしているだけで私は幸せでいられる。
私はこうしてエイちゃんと腕を組んで町を歩いているだけでも幸せだ。
「エイちゃん。今度はカラオケに行こうよ」
「良いねえ」
早速私とエイちゃんはカラオケ店に入り、フリータイム六時まで一人、九百八十円のコースに二人で入った。
部屋に入り、私はカラオケ何て久し振りだ。
心躍らせながら、何を歌おうか、デンモクで検索して、
「私から歌わせてもらうね」
「おうおう。好きに歌えば良いさ」
私はこんな時にうってつけの歌を考える。
こんな時どんな歌を歌えば良いかな。
考えても埒があかないので、とりあえず明るい歌を歌った。
曲は、GL×Yのグロリ×ス。
歌っていて爽快な気分になる。
私は以外とビジュアル系の歌が好きで、男性ボーカルのバンドをよく歌う。
エイちゃんは有頂天になってマラカスを両手にもち、「いいねえ」と盛り上げてくれる。
エイちゃんが歌っているとき、私も同じようにタンバリンで曲のリズムに合わせて盛り上げている。
そんな事を繰り返して、なぜかエイちゃんは、
「はぁー疲れた」
「私まだまだいけるよ」
「俺は疲れたから、少し休むよ。その間メグは好きなように歌えばいいさ」
私は言われた通り、歌いに歌いまくった。
エイちゃんは疲れながらも、ソファーにもたれてぐったりしているが、私の歌を盛り上げようとタンバリンをたたいて盛り上げてくれた。
そこで私は不思議に思う。
エイちゃんは私と同じように歌い、疲れてしまったのに私はてんで疲れていない。
何か違和感を感じたが、気にすることなく歌い続ける。
しばらく私が歌い続けて、エイちゃんの疲れも大分回復してきたと思うので、私はエイちゃんに歌ってほしい曲があった。
「エイちゃん。尾×豊のオーマイリ×ルガールを歌ってよ」
「お前この曲好きだな」
エイちゃんは私のリクエストに応える為にデンモクで操作して尾×豊のオーマイリ×ルガールを選曲した。
ゆったりとしたメロディーが流れ、私の心はうっとりとしている。
エイちゃんは歌う。
この歌詞はまるで私たちの事を言っているみたいで想像を膨らませて恍惚した気持ちになる。
この歌はまさに私たちの為にあるような歌だと私は密かに思っている。
私はうっとりと自分の世界に入っていると、良いところの二番に入るところで曲が止まってしまった。
「何?どうしたの?」
思いに浸っていたのにそれが中断されて私は少し不快に思ってしまう。
するとエイちゃんは、
「今日こそ、ここで一つになろう」
私のスカートをゆっくりをめくって、私はつい・・・
「ありがとうございました」
受付の店員さんに私たちはそう言われて、外に出た。
「何だよメグ。殴ることないじゃん」
エイちゃんの頬は私の平手で思い切りはたいた為、叩いた頬が真っ赤に染まり、鼻血を吹き出している。
鼻血を出してしまう程、本気でやった訳じゃないのに、どうしてか不思議に思ってしまう。
「いきなりあんな事をしたら怒るよ。そういった事は結婚してからにしようよって約束したじゃん」
「って言うか、今時、カップルになって一線を越えない何て滑稽だと思われちゃうよ」
「そういった行為はちゃんと契りを結んでからじゃないと私は嫌なの」
「俺このままじゃあ、童貞のままだよ」
「良いじゃん童貞で。このまま私とつきあい続ければいずれ消えてなくなることは目に見えているでしょ」
「じゃあ、お前も処女のままでいいのかよ」
そう言われてムカつき、威圧感的な目でエイちゃんを見る。
「悪かったよ」
謝った事で収まり。エイちゃんが急に改まった顔をして、
「お前忘れていたけど、早く帰らないとまずいんじゃないか?」
そういわれて私もハッと気がつき、夜明けが来たら私は太陽の光をもろに浴びて消滅してしまうかも。
エイちゃんは時計を見て、
「今四時だから、夜明けまであと二時間だ。だから急いで帰ろう」
そうだ。私は吸血鬼だったんだ。
デートに浮かれて忘れていた。
私はもっと自分が吸血鬼で太陽の光に弱いことをちゃんと自覚を持たないと危険だと思い知らされる。
そして原付を止めた駐車場に行くと、駐車場入り口で暴走族の連中がその道を塞ぐように、たむろっていた。
私は怖かったし、エイちゃんも怖いみたいだ。
そういえば仙台は暴走族が徘徊していて危険な町なんだ。
とにかく原付の所まで行こうとすると、
「こんな時間にデートですか?」
因縁を付けられてしまった。
私は恐ろしく怖かった。
「行こう」
とエイちゃんは私の手を強く握り、心の中を覗いてみると、
『やばい連中に目を付けられた。怖いがここはやりすごして逃げるしかない。メグと一緒に』
「シカトしてんじゃねえよ」
金髪リーゼントの男が憤り、私はやばいと思ったし、エイちゃんも同じ事を思っている。
「逃げるぞメグ」
私の手を引き、止めてある原付は諦めて、走って逃げる。
私も走る。
「何逃げてんだよ」
連中は激しくバイクをかき鳴らし、回り込まれて囲まれてしまった。
それでもエイちゃんは私の手をしっかりと握る。
『メグを守らなきゃ』
エイちゃんは必死に私の手を離さずしっかりと握り、逃げようとしたが、リーゼントに鉄パイプで頭を殴られて気絶してしまった。
倒れたエイちゃんを見つめて、
「エイちゃんエイちゃん。しっかりして」
エイちゃんの意識はなくなっていた。
「どうしてこんな事をするの?」
「意味なんてねえよ。お前等みたいなのを見ていると無性にムカつくんだよ」
理不尽な事を言われて、私は為すすべもなくやるせない気持ちで倒れたエイちゃんにしがみついた。
「この女犯してやろうぜ」
リーゼントが恐ろしい事を言う。
こんな最低な輩に襲われるなんて最悪だ。
だったら不本意だがこいつらに襲われても良い。そうすれば、何とか私達の命は助けてくれるかもしれない。
でもこんな奴らに私の貞操を奪われたくない。
これは将来エイちゃんに捧げるものだと、心の奥底にしまってある私の大事な気持ちだ。
だが、そんな事を考えている場合じゃない。
「ふん」
と下品な声を漏らしながら、私の胸を掴んで、
「やめて」
と叫びながら、思い切り相手を手で振り払ったら、相手は十メートルぐらい吹っ飛んで気絶してしまった。
えっ、何?いったい何が起こったの?