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召喚理由が理不尽すぎる!  作者: キリアイス
一章:召喚~勇者見習い
9/181

値踏み大会 ~能力値~

説明会がしばらく続きますが、ご容赦くださいませ


誤字修正しました。

 夕はシャワーを浴びた部屋へと戻ってきていた。


「質問いいですか?」

「ええ、お伺いします」


 夕はベッドの上へと座るよう促される。ブリキッタはイスを机の方から持ってきて、対面して座っていた。


「魔法とか、魔物とかって、何ですか?」

「……、そこからですね?わかりましたご説明させていただきます」


 そう言ってブリキッタは夕に向かって薄水色のついた透明なプレートを渡す。


「まず、そのプレートの上に血を一滴だけ垂らします。よろしいでしょうか?」

「えっと……どうやってでしょうか」

「ここにナイフと注射器がありますがどちらがいいですか?」

「注射器でお願いします」


 メリットデメリットの話をまだしていないのですが、とブリキッタは言いながら、慣れた手つきで夕の左腕から採血をした。

 刺されたこともわからない程痛みも感覚もなく、引き抜いたあとは刺した箇所から血がにじむこともなく、無事に終わる。

 採血したばかりの血をプレートの真ん中へと一滴垂らしてもらう。


「このプレートは適性調査の魔道具というものです。貴方の世界には『ゲーム』というものがありますよね?」

「確かにゲームはありますが……よく知ってますね」

「持ち込んでいた方がいましたので。登場人物の特性を表す画面をステータスというらしいですね。パラメータという概念もわかりやすくて面白かったですよ。このプレートはそのステータス画面の再現……したようなもの、ですね」

「はぁ……といっても、私はそういうステータスとか確認するゲーム、ほとんどやったことないですけど……」


 誰だ、こんなところにまでゲームを持ち込んだのは。

 そう出かかった言葉を飲み込む。能力値を視認できるようになったきっかけと思えば、悪くない。

 ただし、夕は育成系のゲームも冒険系のゲームも途中で飽きてしまった人間である。友人から話を聞いたり、ゲームを見せてもらったりする、見る専門・聞く専門の人間だ。

 ゲームみたいなことが今から起こるのか。いまいち現実味がわかないが、想像はできないわけではない。


「そうなのですか?イオト ユウ様のステータスを見ながら適性がある魔法や、異世界人が持つ特殊能力についてお話ししようと思っていたのですが……大丈夫でしょうか?」

「……まあ、なんとかなるんじゃないですかね?」


 それならば、とブリキッタが魔道具を操作し始める。中央にあった血がすっと消えてなくなると、プレートが薄っすらと発光した。

 これもまた、地球ではない光景だなぁと頭の端で思う。


「こちらがイオト ユウ様の現在のステータスになります」


 手渡されたプレートを見て、確認する。


===

 庵戸イオト ユウ 18歳  女性

 状態:正常

 称号:異世界人・勇者見習い・剣聖


 ■潜在能力値■

 体力:A

 筋力:A-

 敏捷:A+

 魔力:S

 物理耐性:A-

 魔法耐性:S-

   ▼

===


「うわ、能力値Aばっかり」

「全体の潜在能力値は高めですね。最低ランクはF、最高ランクはS+ですよ」

「Fにはマイナスってないんですか?」

「符号が付くのはCからですね。潜在能力値のCというランクは、戦いを生業にする人にとっての最低レベルですので、ここから細かく分かれているわけです。潜在能力値ですが、病気とかでない限りFはいませんよ。その人が最大まで伸びることができる限界値ですから。現在能力値もあとで検査しましょうかね。それよりも、珍しい称号が付きましたね」

「珍しい称号、ですか?」


 そういえば称号なんて欄があったな、と手元のプレートを見る。

 能力値のAの多さに忘れていたわけではない。


「“剣聖”という称号は、本来ならばマニュスの神山へ洗礼後に修行……試練を受けて得るものですからね。飛び級のようなものです」

「……飛び級ですか。本職の方から、何か言われませんか?」

「そうですね、神聖マニュス連邦国から熱烈なアプローチが来るくらいでしょうか」


 うわぁ、勘弁してほしい。無宗教に近いし、宗教って散々なものを見てきたから良いイメージがない。

 顔に出ていたのだろうか、ブリキッタの光を通さない漆黒の瞳が同情するように細められる。ああ、この人の感情、初めて見たな。


「まあ、頑張ってくださいね。宗教にのめりこんでいる人が大半ですから。どうせ『試練を受けずに“剣聖”になっている勇者だなんて、きっと神が遣わした使徒に違いない』とかいいそうですし。唯一の救いは、今回の使者の方は、他の信者よりも大変良識のある方ですので、強引に引き抜きには来ないでしょう。ああでも“剣聖”は大変強い称号ですので、他の国が強引に引き抜こうとしてくるかもしれませんね」


 大変なことになったなぁ、とどこか他人事の考えが浮かんでいる。夢なら早く醒めてほしいが、一度寝て起こされているからこれは現実だ。


「それでですね。プレートに下三角の記号があると思うのですが、そちら押していただけますか?」


 潜在能力値の下にあった不思議な下三角を押す。少し気になっていたので言われなかったら質問していたところであった。


===

  ▲

 ■潜在魔法適性■

 神聖魔法:S+

 火属性魔法:S

 回復魔法:S-

 強化補助魔法:A+

 水属性魔法:A

 風属性魔法:A

 土属性魔法:C-

===


 魔法の適性。それを見て、ああ私に適性あったんだなぁと夕は思った。

 異世界というのは理解して受け入れていたのだけれども。自分まで地球人とは違うようなことになっているだなんて。

 少し、地球とは別の考え方をしないと本格的にまずいかもしれない。

 非現実な事象に適応するため、魔法も受け入れよう。思えば、ルーカスが忽然と消えたり、魔物と呼ばれた生き物が突然現れたりしたのも、魔法なんだろうな、と考えた。。


「珍しいですね、四大元素すべてに属性魔法に適性が出るのは。この潜在魔法適性の欄に出る魔法は、努力次第で使えるようになるものしか出ません。そして、最低がC-ですので、指導さえしてもらえれば使えるようになるでしょう。これがDランクやEランクでしたら、血反吐を吐く思いをしないと駄目でしたが」


 さらっと恐ろしいことを言ったなこの人。無表情で無感情、というわけではなさそうだが、無機質に感じてしまうほど、表情の変化がない。

 頬が引きつりそうになりながら、夕は尋ねる。


「そういえば、ブリキッタさん」

「はいなんでしょう」

「ブリキッタさんは、どんなステータスですか?」

「私ですか?私は魔法に関する能力がS以上、他はB以下ですよ。魔法は解析魔法と闇属性魔法、冷却魔法が主に使えますよ」


 燃えるような赤の髪を見て思う。冷却って色じゃないよね。


「魔法にも種類があるんですねぇ……」

「八百万――とまではいきませんが、種類は多いですね。研究者が増えれば増えるだけ、齟齬が出て新たに魔法として独立したりもします。内容がかぶっている魔法もありますが、魔法はほとんど適性からのイメージですから。火属性魔法で氷を作った人もいましたから、この世界の魔法は定義を設けない方がいいと思いますがね」


 なんともややこしい話である。火が氷とは何事だ。その人は熱を思いのまま奪う火を使って氷を作ったらしいが、いまいちピンとこない。

 この辺りは発想の違いでしかない、と言われ、柔軟な思考が必要だなと思った。


「さて、魔法と魔物とは、というご質問でしたが、魔法はステータスの魔力が高ければ連続して出せたり威力が大きくなります。国に抱えられたら訓練が始まると思いますから、気にしなくても良いかと。魔物は動物の突然変異ですね。魔力を供給する器官に異常をきたすと魔物となるそうですが、ここ最近のは魔物同士の交配によって残っているようなものと、あとは魔族の中に魔物創造という魔法を使える方がいるらしく、それで増えているとか。この辺りは魔族じゃないので分かり得ませんがね」


 あの時斬り伏したのは、やっぱり生き物で間違いないらしい。

 人を襲うのは、クマやハチのようなものと考えればいいのだろうが、しばらくはためらいそうだなと思った。


閲覧ありがとうございます。前話予約投稿トチったので、二章も毎日更新の方向で……。

誤字・脱字等ありましたら、教えていただけるとうれしいです。

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