表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

2項 成人の儀



 あれから、あのまま何事もなく神殿へ到着した。

 神殿に用事がある人間はそんなにいないので数十分ほどの待ち時間で成人の儀を執り行うことが出来た。


「リムル・ロッドです。よろしくお願いいたします」


 成人の儀を行う窓口にて、神官の方に挨拶をする。


「誕生日おめでとう。私はマシューというものです、宜しくお願いします」

 神父のような恰好をしたその人は、なんとも言い難い不思議な安心感を与えてくれる優しい笑みを浮かべながらそういうと自分の目前のカウンターに水晶を置く。



「では、ここに手をかざして魔力を流してください」


「はい」

 言われた通り、手を翳し魔力を流すとその水晶は淡く光り出す。


「ありがとうございます、結果が出るまでお近くの椅子におかけして10分ほどお待ちください」


 年中行われている成人の儀ではまず、個人が持つ魂の性質が反映されるユニークな魔法、無属性魔法の開放が行われる。


 今行った水晶に魔力を流すのもその工程だ。

 能力によってはそこに在るだけで危険な能力も存在するため、まずは自分の能力を判明させる。


 その情報は国で管理され、能力に応じて自分の進路を決める。


 今日俺は"冒険者ギルド" か "商人ギルド" に所属をすることになるのだが、ここで俺が魔王と戦う事が出来るかどうかの重要な進路が決まってくる。

 非戦闘職用の能力だと判明した場合、冒険者ギルドに所属すること事態が難しくなるからだ。


 冒険者ギルドに所属した場合、国や個人からの依頼クエストを受けたり、街にいるモンスターの狩猟、ダンジョンの攻略、薬草や希少性の高い鉱石を採取し生計を立てることになる。この場合は魔王と戦うことが出来る。

 しかし、商人ギルドではサービスや物を提供し生計を立てる。

 鍛冶屋や道具屋、解体屋等もそれに含まれているが、基本的に戦闘向けの能力ではない者が所属する。


「リアムさん、窓口へおいで下さい」

 呼ばれた、これで俺の進路が決まる。

 受験の時のような気持ちだ。


「はい、宜しくお願いいたします」


 俺の緊張が伝わったのか、先ほどの神官は優しい笑みを浮かべる。


「そんなに緊張なさらなくても大丈夫ですよ、あなたの能力は素晴らしくとても珍しいものです」

 そう言って自身の身分を証明するカードを手渡してくる。


 名:リアム・ロッド

所属:---

能力:魔人化

位階:---


 能力は魔人化……

「魔人化……これはどんな能力なのでしょうか」


「リアムさん、能力は千差万別です。そのため、今から別室で検証を行いますので、あなたには別室に移動して能力を使用していただきます」


 マシューがそういうと俺は別室に案内された。

 そこにはマシュー以外に明らかに神官ではない、大盾を持った重騎士と赤髪の剣士、白魔法士の若い男と深くフードを被った黒魔道士の4人の冒険者がいた。


「マシューさんあちらの方々は」


「冒険者ランクBのパーティ "ウィンクルム" の方々です。能力の開放は制御不能であったり、とても危険な能力だったりしますので検証の際はBランク以上のパーティ付き添いで行うのです」


「"ウィンクルム" リーダーの フィン です。よろしくお願いいたします」

 マシューさんとのやり取りを見て白魔導士の男が挨拶をしてくれたようだ。

 てっきり剣士の方がリーダーかと思ってたが、この人が

 Bランクといえば上から3番目の階級だ、今後お世話になるかもしれないな……


「リアムです、本日は宜しくお願いいたします」



「では、始めましょうか」

 一通りの自己紹介を終えたところでマシューさんが言う。


「まずは私が能力の開放を行います。開放を行うとあなたの体からは魔力が噴出します。

能力とは無属性魔法、あなたの魂の性質がそのまま反映されたあなただけの魔法です。それを使用するにはまずは知ること。それが重要です。あなたの能力は"魔人化"です。開放した状態でそれを口に出して下さい」


「分かりました」


「では、始めます」


 マシューさんの手が淡い光を放ち形を伴って俺の体へ衝突する。

 解放感とともに自分の体から魔力が吹きでてくる。


「……魔人化」

 刹那、脳が沸騰したような感覚に陥る。

 視界は黒の濁流に飲まれ、手足の末端から灼熱の炎に焼かれるような痛みを感じた。

 魔力が、暴れるッ!


「熱い……!!」

 2、3分は経ったであろうか、自分がどう立っているのか、そもそも立っているのかも分からない。

 どうなって……いる、んだ。


――――そしてそのまま俺は意識を手放した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ