其の弐拾肆
『我を嘘吐き呼ばわりするか?』
「はい。だって本当だって証拠は無いですから」
『……ならばどうすれば証とするか言えば良い』
「知りません」
『何だと?』
「嘘吐きさんは何でも作り出せるのでしょう? だったら言った傍から作られたら信じるしかないじゃないですか。だって偽物の本物を作れるんですから」
踊り続けるレシアは絶好調だ。
自分の踊りに聖地に住まう全ての者たちが集まっている。
自分以外に見えなくても居るのだから、相手に対してレシアは踊りを見せ続ける。
「何でも作れる人が何を作ってそれが本物だと言うんですか?」
問われそれは答えに困った。
本物の偽物と言われてしまえばその通りだ。
何でも作れると言うことは、それが本物であると相手に認めさせるのは不可能だ。
証明できるのは自身の力のみ。それを証明しても……自身が人等の『親』である証明にはならない。
「だから私が聞きます。貴方は何故、人に対してそんなに気をかけるのですか?」
『それは人等が我の子であり』
「人以外も作ったんでしょう? だったらどうして人だけなんですか?」
『……人は争い続ける。殺し続ける。愚かな生き物である』
うんうんと頷いたレシアは、そっと首を傾げた。
「作ったのは貴方ですよね? だったら争わないように作れば良かったんです。殺さないように作れば良かったんですよ」
『それでは人等は生きていけない。戦わずして食事を得ることも出来まい』
「……だから戦うように作ったんですか? だったら戦わないで人が食べられるように作れば良かったんです」
『それでは他の生き物は食べられるだけだ。全てを食べたら人等は何を食べる?』
「それは貴方が考えて下さい」
えっへんと胸を張りレシアは言う。
「馬鹿な私が分かる訳ないじゃないですか!」
『……』
「頭が良い人がちゃんとしないから後になって問題が出るんです。ミキもそうです。私が後で太って困るのに気付いているなら、その時に食べるのを止めてくれれば良いんです。止めてくれないから私が後で困るんです! 分かりますか!」
そんな他人任せな言葉を言われても……と思いそれは気付いた。
自身は人に対してどれほどのことをしたのであるかと?
生きる世界を作り、戦い生き残れる力を与えた。後はそれを覗き見るだけで何もしなかった。何もせず、殺し合いを続ける人等に絶望したのだ。
一方的に勝手にだ。
レシアはゆっくりとその踊りを大人しいものに変化させた。
「人は確かに殺し合いをします。怒ったり恨んだり憎んだりして殺し合いをします。でも全員がそうじゃ無いと私は知ってます。だって今も全力で戦っているミキだって……私を愛してくれるんです。優しくしてくれるんです。だから私のここにはその証が居るんです」
そっと自分のお腹に手を当ててレシアは慈しむように笑う。
「みんながみんな……殺し合いを望んでいるなら、人はずっと前に死に絶えてます。でも今だってたくさんの人が生きてます。生きて子供を得て育てているんです。人は決してみんなが殺し合いを望んでいません」
『だが殺し合うであろう』
「はい。だって貴方がそう作ったんですから」
『……』
「自分で作っておいて文句を言うのが間違いです」
グッと拳を握ってレシアは踊る。
「嫌だったら食べなければ良いんです。私は料理が苦手なのに作らせておいて『拙い』とかは本当に失礼なのです。だったらミキが作ればいいんです。ミキの料理の方が美味しいんですから」
『何を言っている?』
「はい。あれです。えっと愚痴です」
『愚痴か』
「そうです」
ふんわりと一度踊りを止めて、レシアは光球を見つめた。
「貴方も自分が作ったものが思っていたようなことにならなかったから、愚痴を言っていたのでしょう?」
『……我の言葉を愚痴と言うか?』
「はい。だって子供なんて親の考えた通りに育つ訳が無いんですから!」
とびきりの笑顔を見せてレシアは天に向けて両手を広げて掲げる。
「親の思い通りに子供が育ったら面白くないじゃないですか! だったら思いもしない成長を見せてくれた方が私は楽しいと思います!」
本当に無茶を言う。そして何と言う我が儘な娘なのか。
それは人であれば苦笑でもしそうな感じで言葉を発した。
『面白いと申すか?』
「はい」
『好き勝手に生きるのが?』
「はい」
『……お前はとんでもない娘だな』
「褒めないで下さい。照れちゃいます」
『決して褒めてはいない』
「……」
天に両腕を掲げていたレシアは、少しむっとした表情を見せてから踊り始めた。
今までの踊りとは違い軽快なステップで、とても楽し気に踊りだす。
「きっと私は両親から見たら……『どうしてあんな風に?』と思われる育ち方をしたかもしれません。それでも私は後悔なんてしてません。だってこんな私を愛してくれるミキが居ます。命がけで無茶をしてくれた友達だって、仲間たちだって居たんですから。だから後悔なんてしたら失礼です」
まるでタップを踏むかのように軽やかな足の踊りを見せてレシアは笑い続ける。
「何か気分が良くなって来たから貴方の質問に答えますね」
『答えると?』
「はい」
あははと笑いながらレシアは踊る。
「私の答えは簡単です。つべこべ言わずに見てて下さい、です」
タンッと両足で石の舞台を踏みしめレシアは動きを止めた。
「貴方が私たちを子供だと言うなら、親は子供の成長を見守れば良いんです。で、間違いを犯せば注意して、良いことをしたら褒めるんです」
髪を振り払ってレシアは光球に笑いかける。
「それが親と言うものだと思いますよ?」
(C) 甲斐八雲




