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68.きっとマッピング王になれる

20:40神官の名前間違えてた!!

私の『観察・考察』という能力は私の中にある知識でしか物事を測れない代わりに通常ならば忘れてしまうような些細な知識さえも使い私の知識を総動員して物事を測る能力であるらしい。

 それはつまり私が見たものはどんな些細なものでも記憶しておけ、また自在に引き出すことができるという事だ。



 私は『羊飼い』のキャンプ地で『精神支配』を掛けられたまま両手を後ろ手に縛られている奴隷の女の子が二人、並んで腰かけているのを中級神官Hの首にぶら下がったまま見ていた。


 つまりめっちゃマッピング捗るという事である。


 

 今日の昼、『羊飼い』に遭遇した私は一番近くの町や周辺地域を探索させておいた神官の中で一番近くの場所にいた中級神官Hを呼び戻した。


 彼らには私の『精神支配』が切れない様にソウルイーターの体で首輪を作り首にはめさせている。これで鏡や水面などに自分の姿が映るたびに彼らは私の『精神支配』を掛け直すことができるし、うっかり『精神支配』から抜け出すことがあれば首を絞めて落したり最悪『魂狩り』で魂を回収することも出来る。


 とにかくそうやって呼び戻した神官Hをあの狼男やオートマタがキャンプ地から離れるのを確認してからキャンプ地の奴隷達を襲わせる。

 因みにキャンプ地の場所は最初に奴隷が洗濯をしていた場所や狼男たちに罠にかけられた場所から―普通に狼男に入り組んだ細い森の中を案内されただけでは罠にかけられた場所はわからなかっただろうがそこはまさにソウルイーターの能力がフルに活用されて簡単に座標が割り出せた―大体の地域に目星をつけて複数人での足跡を探して突き止めた。


 後は魔法も腕力も無い年若い娘たちだけだ、いかに神官Hが荒事に向いていない体格をしていようが、魔法なりなんなりで無力化できる。

 後は『精神支配』をかけて奴隷―3人いた―の一人を洞窟まで連れてくるだけで仕掛けは終了。


 後は入り口に付近に通路を拡張して作った小部屋に待機させるだけ。


 私が来ていたローブを着せたのは狼男が罠に警戒して誘いの乗ってこなかった時の作戦のために攪乱に使えるかもしれないと思ってなんとなく着せただけだ。

 まさかいきなり殴りかかってくるとは思わなかったので肝が冷えた。ここで狼男自身が仲間を殺していしまったらいくら他二人の奴隷の命をちらつかせてももう交渉には応じなかっただろう。


 と同時に狼男の私への怒りが垣間見えたようで背筋が薄ら寒い。

確かに狼男の主人も仲間も殺してしまったがそもそも相手が私を捕まえて売り飛ばそうとしたからで、正当防衛とも言えるのではないだろうか、この世界に正当防衛を訴えて聞き届けてくれる判事が存在するかは不明だが。

 第一どうも狼男からは『羊飼い』への義理を感じない、とうか魂の感覚から伝わる『羊飼い』への狼男の感情は決して親愛や友情のような明るい物ではないし、『羊飼い』の方としても出会った時の犬への態度や奴隷の扱い、私を捕まえた時の言動を見る限りあまり褒められた人間でも主人でも無かったように思える。


 だというのに狼男のこれほどまでの私への敵意はいったいどこから来るというのか。


 やはり、あれだろうか。犬達―狼男の言葉のカロリア・ベア・ウルフという名前から察するにどうやら本当は狼のようだが―を崖下に落っことしたのがまずかったのだろうか。

 あの高低差なら死にはしまいと思ったが、骨を折ったりすれば競走馬はもう走れない様に彼らも治療魔法が無ければもう元の仕事には戻れまい。

 魔法のあるファンタジーな世界観と、ここの神官達の中には割と使えるものが多かったからあまり考えなかったが治療魔法というのは案外一般的な魔法ではないのかもしれない


 これは覚えておけばいつか何かの切り札になるかもしれないなと考えながらもう一度、声伝管に要求を述べていく。

 声伝管は通常、声の振動を吸収しにくくするため金属で作った筒を使うものだが、そんな鉄パイプのようなものはここには無いのでソウルイーター直型蛍光灯の端を無理やり切り落として筒にして―普通蛍光灯にはフィラメントとかが入っていると思うのだがまったくの空だった、普段光っているのは多分表面部分なんだろうけどいったいどういう原理で光っているのやら―使っている。

 物理無効のソウルイーター素材は音の振動を全く吸収しないため声伝管としては申し分ない素材だった。ソウルイーター素材はふんだんに使えばそのうち完全防音室も作れそうだ。作る予定も必要も今のところないが。


 もう二人の奴隷までもが人質になっている事を悟った犬が私の要求の正否を問うてくる。確かに人質までとっておいて、ここから出てってくれれば皆解放してあげるよというのは私にとって何の利も無い。そして利の無い要求は裏がありそうに思われるものだ。

 でも特に狼男たちから欲しいものも無い、彼らは金銭なんかを持っている風でもないし、神官たちの遺品がある今特に欲しいものでも無いし、彼らの持ち物で一番高価なものと言えば恐らくオートマタだろうが魔力の無い(ミコト)に使える訳もないし、今一番欲しい物を強いてあげれば(ソウルイーター)が欲しいのは魂だし、そんなモノ要求したら取引は決裂するに決まってるからやっぱり要求できない。


 ちょっとだけ迷った挙句やっぱりオートマタにした。多分そこそこ高価で、相手も納得しやすいものはやはりそれぐらいしかない。私には使えないだろうがひょっとしたらセラが使えるかもしれないし。


 後はいなくなった犬と奴隷だが―どっちがモレアでどっちがアズルか知らないが―狼男と別れた後暫く洞窟内を犬と一緒にうろうろしていたのだが、ソウルイーター体を配置していない場所に迷い込んだらしく今はすっかりどこに行ったんだがわからなくなってしまった。まあ、特段人が死ぬような罠は他に仕掛けていないし彼女たちが隠れているのでなければそのうち出てくるだろう。


 そう答えた瞬間、私は立っていた足元を崩落させて狼男の目の間に飛び降りた。

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