47.ソウルイーターの洞窟暮らし8(挿絵有)
お風呂回っていうかパンツ回
私は夕食の片付けをしながら暖炉の蓋をあける。そこには夕飯の準備を始めた時に入れておいたサウナ石が熱せられて転がっている、私はトングで石を拾うと私の隣に浮いているソウルイーターの上に乗せていく、壊れた宿舎から拾った穴の開いた鍋を乗せた私 は中に入っているサウナ石を落さないように運び風呂場の浴槽の中に飛び込んだ。水が蒸発する小気味のいい音が響く。
浴槽の中には井戸からまたソウルイーター瓶で往復して水を満たしている。浴槽の水を適温まで上げるには後何往復が必要だ。空になった鍋をぶら下げて―40型円形蛍光灯は物を持てないので体に直接鍋をくくりつけてある―ソウルイーターが戻ってくる。私は何度か同じ工程を繰り返しお湯が沸いた事を確認すると竃の火を消した。
セラは台所の椅子に座って私たちを眺めていたが、お風呂の準備が出来た事を見るやいなや、40型円形蛍光灯に壁伝いに近づいて体に括り付けた鍋を外し始める。
別に鍋を外すのがセラの仕事なわけではない。最近セラは私が家事をしている間一人待つのが手持ちぶたさなのかこうやって折を見ては自分でも出来そうなことを手伝ってくれるようになった。
これは少しでも私に慣れてくれたのか、それともただ単に早く風呂に入りたいだけか。
今だ手足の動作に不安のあるセラは一人で風呂に入れない―というか危ないので一人で入る事を許してない―ので早く風呂に入るには私の仕事が終わるのを待たなくてはいけない。まあつまり後者なんだろうな。
風呂から上がった私はセラの着替えを手伝った後自分の着替えを手にとり、素肌の上にそのままズボンを穿く。
私が神官たちの衣類を漁りを始めた理由はもう一つある。
下着の替えが無い。
祭壇質のプールにダイブしてびしょ濡れになった私に中級神官Dが着替えを持って来た時は、他人の中年男性の下着を穿くには抵抗があったので持って来た服の中に下着が入っていないことに何の疑問も抱かなかった。
だがここで暮らしていくにあたっていつまでも同じパンツをはいている訳にもいかない、だからといってノーパンのままではさすがに座りが悪い。
という事で替えの服と一緒に替えの下着も探し始めたのだが、そうやってようやく気付いたのだ。
どうやらこの国の人間はパンツを穿いてない。
もちろん直接確認した訳ではない、無いがこうやって神官たちの箪笥をしらみつぶしに漁っているのにパンツの類は全く出てこないのだ。
中世ヨーロッパの人間はワイシャツの裾を縛って下着にしていたとか聞いたことがあったがあれは本当だったのだろうか、そしてそれはこの世界でおいても適用されているのだろうか。その場合私は何を穿いたらいいのだ。
ついでに言えばセラもパンツは穿いていない。あのだぼだぼのシャツをワンピースのように着ている下は何も穿いていない。パンツじゃないから恥ずかしくないもんとかそういうレベルじゃない。大変危ない。おなかも冷えるし。本人はそれが当たり前で育ったせいか何も感じていないようだが。
私が今なんとかしなければいけないものは大量の食料でもソウルイーターの余った体でも冬用の衣類でもなくパンツなのかもしれない。
セラがベッドに入るのを見届けた私は自身の光量を弱めると元から開けておいた窓から外に出て外側から窓を閉める。そのままふよふよと居住区の外に出る。夜の洞窟は正しく闇で私以外の光源は見つからない。私は当たりを弱々しく照らしながら昨日進んだ所まで飛んでいく。
目的地まで飛んだ所で私は魂の検知に力を入れて探索範囲を真円から長い楕円に変えていく。そして伸ばした楕円を私を軸に回転させ、辺りに私以外の何かがいないか確かめていく。
こうすれば通常10m程度しかないの私の魂探知でも50m先の魂を感知出来るし『精神支配』している魂とも連絡が取れるのである。
居住区に火を放った時に遠くにいる『精神支配』した神官と連絡が取れないと不便だと思い、なんとか工夫してこの方法を生み出したのだ。
理想としては魂探知の範囲が広がれば一番良かったのだが、まぁ贅沢は言うまい。
ただ、問題としてはこれをすると凄く疲れるので常時は出来ないと言う事だろうか。それでも未開拓の場所を探索するなら十分な能力である。
私は洞窟の中に昨日と変わったところがない事を確認すると、宿舎の台所の机に座りノートを広げ、ノートに洞窟の中のマップを描いていく。
私と私の体はどれだけ離れていても意思の疎通が可能で一方で洞窟中を探索し、もう一方でこうやって洞窟の中をマッピングしていく事も可能なのだ。
因みにこのノートはミコトの鞄の中に入っていたものでルーズリーフ用紙を別売りのバインダーに閉じていくタイプだ。ミコトの鞄の中には袋を開けたばかりの200枚入りルーズリーフが入っていた。暫く筆記用具には困ることはなさそうである。
そうやって一時間ほどで日課になっている洞窟マッピング終えるとようやく私もベッドに入る。
これが最近の私の日常の一日である。




