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46.ソウルイーターの洞窟暮らし7

 基本的に洞窟での集団生活しかしていない神官たちの私服は少ない。したがって私はさくさくと並ぶ下級神官の部屋を片付けて最後の部屋の扉を開けた。


 「・・・・・」


 (ソウルイーター)の魂感知ので分かるセラの魂は今だ最初の部屋で黙々と衣類を仕分けしている最中なので大丈夫だったのだと思うのだが、今後同じ事をセラに頼むときは一度部屋の中を確認してからの方がいいなと思いながら部屋に滑り込みドアを閉める。

 部屋の中は血まみれだった。


 恐らく火事に気付いて逃げる所に『精神支配』した神官と鉢合わせしたのだろう椅子は倒れ、ベッドの位置も壁から少しずれている。そしてその床や壁に飛び散った血がどす黒く色を変えて悪趣味なアクセントを加えていた。廊下側に血が付いていないのは死体を窓から放り出した所為だろう。引きずったような血の跡が部屋の中央から窓枠まで続いている。窓が開け放たれて血の匂いが薄れているのがせめてもの救いか。


 部屋の中央、一際血の跡が濃い場所に立つと足元にぐちゃぐちゃに丸められた布の塊を摘み上げる。分厚い生地から乾いた血糊がぱらぱらと落ちていく。大部分を赤黒く染めた緑色の生地は私も知っている、神官たちがよく着ているローブだ。

 ローブ開いた大きな穴、そこを中心として血がこびり付いている。私はつまんだローブを壁際にばさりと落した。

 これは処分だ。


 何の感慨も無くそう考える私はやはりもう人間ではないのだなとだと思った。

 だからどうだというわけでもない。

 私がソウルイーターだという事は当に分かっていた事だ。


 そう感じた私に少しがっかりした事は事実だけれども。



 結局使えそうな衣類はそう多くなく、殆どの衣類と血の付いた家具を―血の飛び散った壁と床はどうにもできないので放置した―ソウルイーター体に『肉体吸収』しセラと共に宿舎の外に出る。大分膨らんだ円形蛍光灯を宿舎の壁に立てかけて底から40型円形蛍光灯分だけソウルイーター体を分離する。


 こうやって放置している円形蛍光灯がこの居住区にはごろごろしているのだが神官の宿舎だけで無くこっちのほうもどうするかいい加減考えなくてはいけない。体が大きくなれば大きくなるほど動かす魂の量も多くなるようで大きな体の状態で動くと非常に動く速度が遅くなる。もちろんその分魂をつぎ込めばいいのだが体を動かすためだけに魂を使用するのもなんだがもったい無い気がしてそのままなのだ。もちろん動かして何処にもって行くかという問題もある。洞窟は広いので別にそこらへんに立てかけていて邪魔になる訳ではないのも放置の理由だ。

 やはり暫くはこの問題は棚上げになりそうである。


 セラに身軽になった40型円形蛍光灯をつかませると私は衣類を抱えたまま二人が寝泊りしている宿舎へと帰る。

 今日はこのまま一旦帰って昼食をとり午後もあと2,3件衣類漁りをしたが結果は芳しくなく私が求めるレベルの衣類は見つからなかった。


 夕食を食べるとお風呂の用意に取り掛かる。この国では湯船に入る習慣があまり無くサウナで体を温めいたようだ。確かにお湯を張っても寒冷地では直ぐに冷めてしまうし焼いた石に水を掛けて蒸気に当たるほうが効率よく体を暖めることが出来るのかもしれない。

 水蒸気で蒸されて逆上せたところに水をかぶるのは確かに気持ちがいいかもしれない。サウナは別に悪くない、しかし日本人の価値観を持つ私としてはどうしてもお風呂に入りたい。どうやっても入りたい、身体を温めるのならば蒸気で頭まで蒸されるよりも首から手足の先まで熱いお湯につかって弛緩したい。


 浴槽があったのは上級神官の居住区にあった沐浴室だけだけで上級以外の神官たちは居住区にいくつかあるサウナで身体を温め水風呂は大きな盥に入った水を被ることで代用していたらしい。

 残念ながら沐浴室の壁は火事から逃げるために大きな穴を開けたし、あそこの浴槽は広々としているがその分水をためるのが大変そうだったので結局『精神支配』した神官たちと共に宿舎の隣にお風呂場を増設した。壁は土魔法で何とかなるとしても床や浴槽は流石にそうはいかない。結局床は廃材―壊れかけた神官宿舎を壊して出た奴―をすのこ状に組み、浴槽も同じように廃棄する予定だった家具を解体して作り直した。素人が突貫工事で作った物なので若干水漏れしているような気もするが隙間には油分の高い粘度質の土を詰めたので暫くは持つだろう。


次回はお風呂回ですが挿絵作業をするので1~2日お休みします。低速更新で申し訳ない。

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