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41.ソウルイーターの洞窟暮らし2(挿絵有)

 よばれた声に振り返るとそこには丈のあっていない服を頭からかぶった、白い髪の少女が立っていた。

 この宿舎には私とこの少女しかいない、つまり今彼女が呼んだ名前は私のものだ。彼女の名前はセラフィマ。神官たちにソウルイーターの一時置き場に使い捨てにされそうなっていた子供である。なんとなく名前がいいづらいので私はセラと呼んでいる。本人は何も言わないが特に不服でもなさそうだ。


挿絵(By みてみん)


 セラが眠り続ける間、私は死体(暫定)の所持品であろう荷物を改めたのだが私が死体(暫定)についてわかったのは恐らく死体(暫定)が学生で携帯はガラケー派でパッド所有者で手持ちの残金は2146円だということだけだった。

 携帯は充電が切れ、パッドの電池も残り少なくなっていたので電子データの中身を改めることは殆ど出来なかったが死体(暫定)の素性と名前がわかるものは見つけられなかった。財布もしかり。せめて電車定期でも持っていてくれたら名前ぐらいはわかったのだがそれも持っていなかった。自転車らしき鍵を持っていたので自転車通学だったのかもしれない。

 そんな訳で死体(暫定)の名前が分からなかったので私が適当に死体(暫定)に名前を付けたのだが…ソウルイーターだから(みこと)はさすがに安直だったかなぁと反省している。

 でももう名乗っちゃったし。今更改名するね!なんて言ってもセラを混乱させるだけだ。


 セラは壁に手を付き、そのまま壁伝いにこちらへと歩いてくる。目が覚めて一週間、そこまで足はもう覚束なくはないのだが、目覚めたばかりの頃に起きてすぐに立ち上がろうとして盛大に顔面を床に強打した記憶が根強く残っているのだろう。おでこにはその時の青たんがまだ残っている。この洞窟に『精神支配』した神官たちが残っていれば治癒の魔法でこれぐらいのこぶはすぐに直せると思うのだが、残念ながら今現在、神官たちはここにはいない。そんな訳で彼女の額には痛々しい内出血の跡が、手足にはその後何度となく転び着いた大小さまざまな擦り傷が残ったままなのである。

 まぁ、子供は怪我の治りが早いからこの程度なら放っておいても大丈夫だろう。

 

 セラはだいぶ遠回りをして私の側にたどり着くと火にかけたフライパンの中を覗き込んだ。そこにはベーコンと割りいれたばかりの卵が焼けた鉄の上で仲良く並んでいる。ベーコンの油が弾けて食欲をそそる匂いが漂ってくる。


 「スクランブルエッグ?目玉焼き?」

 私はもう一つ卵を手にセラに問いかける。

 セラはちらりと私の手の中の卵に視線を走らせると指でフライパンの中の目玉焼きを指さしてきた。どうやら目玉焼きにしてほしいらしい。私は要望通り何も乗っていないベーコンの上に卵を落とし半熟のサニーサイドアップを作る。現代の地球でも日本以外の卵は生食に向かないという事だからこの世界の卵の安全性には一抹の不安が残るが、割りいれた卵の黄身の状態を見るに古い卵では無いようなのでまぁ大丈夫だろう。目玉焼きは半熟に限る。

 出来上がったそれはお皿に移して、ベーコンの油の残ったフライパンの上に輪切りにした丸パンを乗せてトーストしていく。トースターの無い生活はした事が無かったと思うのだが意外とフライパンでもちゃんとパンは焼けるものである。

 ベーコンの油の浸みたパンは焦げ過ぎない様に火の側にいないといけない事を除けば中々に絶品だ。ただ贅沢をいうのなら固い丸パンではなくやわらかい食パンを食べたいところではあるが、こんな場所では食感よりも保存性の方が重視されるは仕方がない。 


 パンをベーコンとは別の皿に移すと、私はセラに顔を洗ってくるように言いつけ、調理台のすぐ隣にあるダイニングテーブルの上に皿を並べていく。テーブルの上にはサラダと作り置きのドレッシングが並んでいる。ベーコンを焼く間に隣の鍋で温めておいたトマトのスープをスープ皿によそい並べて朝食の完成。デザートに果物入りのヨーグルトも用意した。果物が多すぎて果物のヨーグルト和えみたいになっている。なかなかにボリューミーで豪勢な朝食だがそれには訳がある。この神官達の旧居住区には低温で食料を保存するために地下室がいくつか作られていてそこそこに深めに作られていた地下室は火事の影響はほとんどなかったのである。燃え移らなくとも地下室なので多少熱が籠って痛んでいる物もあるのだが早々に火事に気付いて火を消して回っていた物がいたため食品の大半は完全な状態にで保存されていた。つまり80人近い人間を支える食料がまるままここにはあるのだ。食べきれない。


そんな訳で私たちの食事形態は足の速い生鮮食品や野菜を中心になっているのだ。


 地下室を凍らせて冷蔵庫や冷凍庫みたいにできないかと思ったが神官たちの弁によると物を冷やす、凍らせるという魔法は非常に高度な魔法で使える者は非常に少ないらしい。確かに現代でも冷蔵庫やクーラーは電気を食うし排熱も凄いので難しいのはなんとなくわからなくもない。

 今のままでも地下室はそこそこ涼しいのだがせいぜい冷暗所という程度で冷蔵庫までは冷えてはいない。しょうがない、現代人として冷蔵庫は欲しいので冬場に大量に雪が降ったら集めて地下に押し込んで氷室にして保存して冷蔵庫の代わりにでもしよう。

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