第五章 『挫折との触れ合い』
誰でも挫折はあると思います。いや逆に無い人はいないと僕は思います。挫折は色々ありますが、僕は『恋』の挫折しか味わった事がありません。昔、スポーツをやっていましたが本気じゃなかったので。しかし『恋』に関しては別です。ただでさえ、恋をした事の無い僕にとってはどんなに『小さな恋』でも全力を尽くしてしまいます。そんな経験を踏まえて書きました。
就職一年目の夏が幕を開けた。この夏は前の夏に比べ大夫休みそうな気がしている。この夏は俺にとってどんな夏になるのだろう、咲には何をプレゼントしよう、などと色々考えていた。だがこの夏、俺に待っていたのは予想外の出来事だった。
夏休みが始まって二日が経ったある日、咲から電話があり、『今から会えないか?』という内容だった。きっと会いたくなったんだなと思い、近くの喫茶店で会う事にした。
店へ行くと咲は既にいて、俺に気付くと悲しそうな顔をした。不思議に思い咲の元へ行くとそこには見知らぬ男がいた。
『なあ、こっこれどういう事?』
『ごめん、別れてくれない?』
『待てって! 意味わかんねえよ』
『だから言ってるじゃん、この人が良いって!』
『勝手すぎるだろ? なあ?』
咲は本気らしい。こんな事になるとは微塵も思っていなかった俺はその場を駆け出した。悲しみに包まれる心は闇の底へ落ちていく。誰か助けてくれ。俺の心を癒してくれ。カファロに乗り込み、音楽をかけると『永遠の愛』が流れていた。聴けば聴くほど涙が溢れてくる。この感覚、あの時と同じだ。遠い昔、中学の時咲にふられた時だ。
今になって気付いた。俺がしてたのはなんてバカな事なんだと。ただ夢に浸り、咲を彼女と思い込んでいたのだ。相手が何を思っているのかも知らずに。俺は自分の事しか考えていなかったのかもしれない。 俺は急ぎすぎたんだ。
家に戻り、友達に知らせると『笑う奴』もいれば『心配する奴』もいただろう。しかし俺はふられたばかりでどいつもこいつも笑ってやがるとだけ思い込んでいた。そして自分自身でも笑っていたのだろう。なんてバカなんだと。
すると、中学時代の友達『蒼原』から『今度遊ばないか』と誘いがあった。どうやら蒼原は俺に話したい事があるらしい。とてもその気にはなれなかったがどうしてもと言ってきたので行く事にした。
『んで、話したい事って何?』
『お前がふられた事に関して』
『どうせ笑いもんにするだろ?そんぐらい分かってるよ』
『お前、そんなんで諦める奴だったか?』
『うっせえな! お前に何が分かんだよ』
『ほっといてくれよ』
すると蒼原があきれた顔で俺にこう投げかける。
『んじゃあ、知らねえよ。もう一回考えんだな。』
『考えるって、何を?』
『決まってんだろ! 今やるべき事をだよ』
その言葉は俺の心に揺さぶりをかけた。大した事は言っていない。でも今の俺の腐りきった心にはとてつもなく大事なものだった。思えば中学の時も蒼原に言われたのだった。慰めとは違い背中を押されたように。
昂喜の夏が始まった。しかしこの夏は昂喜にとって『最大の難所』だったのだ。というのも、恋人だった咲に別れを告げられたのだ。腐りきった心の昂喜に手を差し伸べてくれたのは、中学時代の友達『蒼原』だった。蒼原の説得により二度も救われた昂喜はさらなる旅へと足を踏み入れたのだった。




