第四章 『横浦の海』
この夏休み、僕が一番心に残っているのが『横浜に行った』時の事です。横浜の海は綺麗でこそないものの眺めは一級品で誰もを魅了します。僕も家族と行き、帰りたくなくなってしまいました。誰もがそんな気持ちになってしまう。そんな横浜でした。
楽しい日々も終わりを告げ、いよいよ『就職先での生活』。俺が入ったのは『松縞車会社』という会社であまり売り上げは良くない会社であった。だが有一うちの高校にオファーを出した会社だった。
元々、車好きの俺にとってこれほど良いものはない。大好きな車の為に日々も汗かいて働く。それはある意味俺の夢なのかもしれない。確かに機械を扱うのは危険だし重労働かもしれない。でも慣れれば何とかなるだろうと思っていた。
会社に入って一ヶ月が経った頃、久しぶりの休み。まあ今までも休みはあったが最初というのもあってかなりきつい日々が続いていた。だからこそ、この休みは俺にとってかなり『重要』な休みなのだ。
咲からの誘いも受けていたので、遠慮なく遊ぼうと思った。咲は大学へ進みより美しさが増した気がする。いつも通り待ち合わせをしてから出かける事にしていた。待ち合わせ場所へ一早く行って咲を抱きしめたかった俺は真っ先に車を走らせた。
待ち合わせ場所にはいつもと違う咲の姿が。何と言えば良いのだろう。少し大人になった気がする。咲を女子席に乗せ、旅へスタート。
『今日さ、横浦行こうよ』
『良いね。始めてじゃない?』
『ああ、楽しみだね』
久しぶりの休みに胸を踊らせる二人。もしかしてこれを『付き合う』と呼ぶのだろうか。今となっては他の女など目に入っていない。咲の事しか頭になかった。
横浦まではいつもの道とは少し違う行き方で行くので少し心配ではあったが大丈夫。迷ったら迷ったで一つの楽しみになるからだ。咲がどう思うかは知らないけどね。
『なあ、咲?』
『もしさ、俺が彼氏だったらどう思う?』
『何言ってんのw もう彼氏じゃん』
それを聞いた時、何故だか知らないが安心感が湧いてきた。いつの間にか俺が咲の彼氏になっていたのだ。まあ悪い気はしない。むしろこれまでにないほど嬉しさに苛まれた。
何もない空が俺達を見つめていた。絶好のドライブ日和かもしれない。カファロからは俺の好きな歌が流れていた。幼い頃、親とドライブに行った時の事を思い出す。今は自分の手でハンドルを握り、隣には咲という彼女を乗せている事をこの身で感じている。
『咲は海好き?』
『好きだよ、昂喜は?』
『俺も凄え好きだよ』
でも俺の本音は違う。海よりも好きなのは咲なのだ。それを伝えようと思ったが言い出せなかった。あまり好きという気持ちを表し過ぎないようにした方が良いと誰かから聞いた。でも無理だと思う。何故なら『誰かを愛しくなれば、その人しか見えなくなるのが真実』だからだ。
横浦市に着いたのは十時ちょい過ぎぐらいだった。今回は渋滞にもあわずすんなり来れた。やはり心地良い空だ。また横浦に広がる海もまた煌めいていた。
『なんか海見てると、嫌な事全部忘れちゃうよなw』
『だから海好きなのかもね』
『確かにね、凄え気持ち良いね』
横浦の海は決して綺麗ではない。でもそんな事関係ない。綺麗でなくても眺めは最高級なものだ。この景色をいつまでも眺めていたい。いや見惚れてしまい時を忘れそうになる。
『写真撮ってやるよ、ほらそこ立って』
『ここ?』
『おけおけ!』
『行くよー』
撮った写真には煌めく海と光に包まれたように映る咲の姿が写っていた。もう夢なのか現実なのか分からなくなっていた。それ程までに俺を魅了した。
いよいよ『就職』への道を歩み出した昂喜であった。しかしその日々は昂喜の身に重くのしかかってきた。そんな毎日を送る中、有一の楽しみである『休日』がやって来た。昂喜は咲と共に横浦へドライブに出かけた。彼を待っていたのは『どこまでも広がる海』だった。




