第2話
気怠い頭で教室に向かう。
月曜日の1コマ目の授業はしんどすぎる。
かといってこれ以上さぼれば単位を落とすのは確実だ。
エレベーターに乗って扉が閉まろうとしたとき。
『…すいませんっ!』
飛び込んできた少年に目を奪われた。
…似てる。
細い目も、すっきりとした鼻筋も、薄いめの唇までも。
あの人にそっくりだった。
『…降りないの?』
ぼんやり彼を見ていたら、その彼が声をかけてきた。
気付けばそこは最上階で。
すでにエレベーターの扉は開いている。
『あ…ごめんなさい』
なんだかとても恥ずかしくて私は真っ赤になった。
彼は別に気にする風もなく私がエレベーターを降りるまで『開』ボタンを押していてくれた。
つらつらと事実をならべたてるだけの講義が始まった。
私の頭からはさっきの少年の面影が離れない。
というよりも彼が私に思い出させてしまった、故郷にいるあの人の面影が離れないのだ。
私は本当にどうかしているのかもしれない。
あの人の声を、顔を、思い出すだけで胸がいっぱいになる。
心の底から大好きだったのだと、他人事のように思った。
退屈な講義は延々と続いているが、全く頭に入らない。
もう何もかもがどうでもよくなって、私は黙って教室を後にした。
外に出ると、抜けるような青空が広がっていた。
あいちゃん。
あの人の声が離れない。
無性にあの声が聞きたくなって私は青空を見つめ続けた。




