方便と裏切りのあいだ
柏木という男は、穏やかな才と慎ましい気質を備えながら、胸の奥に秘めた情の深さゆえに運命を狂わせた人である。光源氏を敬いながらも、その妻・女三の宮への抑えがたい恋情に心を乱し、ついには越えてはならぬ一線を踏み越える。その悔恨は彼を静かに蝕み、言葉にもできぬ苦しみのまま命を縮めてゆく。誠実さと弱さが交錯するその姿は、物語に痛切な影を落とすのである。
口は災いの元と言われる。何かを話すと、そこからドラマが生まれることもあれば、災いが起こることもある。この子も、そのうち何かトラブルに巻き込まれるかもしれない。
***
僕はよく嘘をつく。嘘は方便だと思っているからだ。
例えば、会社で先輩に
「週末は何してた?」と聞かれて、
「洗濯してました。天気が良かったので干して、ビール飲んで昼寝してました」
と当たり障りない嘘をつく。
実際は彼女が遊びに来ていて、ご飯を作って食べて、いろいろ忙しかった。
でも、そんなこと正直に言う必要もない。
多分、聞く方も沈黙が嫌で、思いついたことをただ聞いただけだ。特に知りたいわけでもないだろう。
彼女にもたまに嘘をつく。友達に誘われて合コンに行ったけれど、
「男同士で飲みに行った」と言う。正直に言うと面倒だし、浮気したいわけでもない。ただ誘われたから行っただけだ。実際、何もなかった。
親にも嘘をつく。
「仕事が忙しい」と言って正月に帰省しなかったこともある。帰省するとお金もかかるし、こっちで遊んでいる方が退屈しない。でも両親が嫌いなわけではない。次の正月はちゃんと帰省した。
こういう些細な嘘はたくさんつくが、人をだます、あざむくということはしていない……そう思っていた。
でも、ちょっと待てよ。先輩や彼女や両親に迷惑をかけていないと思っているのは僕だけで、実は心配をかけていたのかもしれない。よく分からない。
僕は僕の尺度で、迷惑をかけない程度の嘘はついていくのだと思う。
***
嘘に関わることわざはたくさんある。
嘘つきは泥棒の始まり
嘘から出たまこと
嘘も方便
そもそも、人は嘘をつける唯一の動物だ。一度嘘をつくと、その嘘をつき続けなければならない面倒くささがある。つまり、それなりの覚悟を持って嘘をつかないといけない。
さらに、こんな言葉もある。
正直者が馬鹿を見る。
昔から人は愚かだが、どこか憎めないのである。
読んで頂き、ありがとうございます。
評価と応援よろしくお願いします!
ほぼ毎日更新しています。フォローして頂けるとうれしいです!




