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緑の手って、こんなんだっけ?

緑の手って、こんなんだっけ?4

作者: 汐琉

軽く人物紹介。


レティシア→主人公かつ語り手の幼女(五歳)転生者。

セレスト→レティシアの相棒となった魔狼という特別な存在。今はまだ子犬。


ロンダン→名前だけ出てくるレティシアの従兄。レティシアの母の兄の息子にあたる。レティシアの母の兄は、この国の王。具合が悪くて、リュコス辺境伯邸に逗留中。レティシアのおかげで自身の体調が良くなったと思っている。


コラリー→同じく名前だけ出てくる。レティシア付きのメイド。猫耳美女。


ルト兄様→やっと出て来たレティシアの兄。正式な名前はラインハルト。



誤字報告ありがとうございます!まとめて直したら違う所まで反映していたようで、ルト兄様大量発生しておりましたm(_ _)m



 私の名前はレティシア。


 リュコス辺境伯の次女として生まれたけれど、少しだけ変わっているところがある。


 それは、前世の記憶のある、いわゆる転生者だという事だ。


 ラノベでテンプレな流れである神様(自称)との会話もちゃんと覚えている。


 私の死に様に大笑いした神様(自称)から、何か転生特典あげるよ、と言われた私が選んだのは『緑の手』だ。

 もちろん、チートでウハウハに憧れなかったと言えば嘘になる。

 でも、それ以上に面倒事は嫌だったので、どんな転生先でも役立ちそうだし、前世の小さな心残りを解消出来そうな能力を選ばせてもらった。


 そのつもりだったのに……。


 よくよく思い返してみれば『緑の手』の説明をする際にテンパった私は、どうやら主語を抜いて説明してしまっていたようで。

 そのせいか私が神様からいただいた『緑の手』は、何か私の予想していたものとは少し違っていて、そのせいで──ううん、違う。そのおかげ(・・・)で、私には新たな家族が増えた。

 お父様の上司(だと私は思っていた)の嫌がらせで押しつけられた死にかけの魔狼の子。

 私の『緑の手』のおかげ! とは決まっていないけど、すっかり元気になった上に、灰色っぽかったはずの毛色は、この国の初代の王様の相棒と同じ青みがかった銀色になった。

 魔狼は国に保護してもらうべきとお城へと連れて行ったのだけれど、魔狼は一度片割れとなる相手を見つけると、決して裏切る事も忘れる事も無く、当然死ぬまで心変わりなんてしないという衝撃の事実を知らされてしまう。

 そして、連れて行った魔狼が片割れとして選んだのは、お父様ではなく私だった。

 魔狼に関して目立つのは諦めた。

 でもまだ、魔狼を世話して懐かれただけ。だから大丈夫! そう思っていた帰り道。

 お城の中で迷子になった私と、セレストと名付けた魔狼が出会ったのは、具合悪そうないかにも訳ありっぽいお兄さん。

 そのお兄さんが国王陛下の息子で、つまり私の従兄であるロンダン様だと判明したのは先日の事。



 どうやらロンダン様にも、私の『緑の手』は効果あったみたいー。あはははー。



 なんて軽口は脳内でしか叩けないけど。


 わざわざ王都からやって来たロンダン様は、毎日のように屋敷を訪れて──。

 すっかり私とセレストが気を許した頃、私の目の前で倒れてしまった。

 迷う私をセレストが後押ししてくれて、私は初めてしっかりと願いを込めて『緑の手』を使ってみようと試みた。

 うまく行ったら儲けもんぐらいの気持ちだったが、ロンダン様の苦しそうな表情は和らぎ、私は色んな疑問とか不安を吹っ飛ばして安堵するのだった。

 まだ少し具合が悪そうなロンダン様をお父様に任せた後、私はコラリーによって自室へと戻されてしまった。

 なので今はメモ帳を手に、ふんすと気合を入れて植物が植えられた丸い植木鉢と向き合っている。

「そうはいったものの、けんしょうしたほうがいいとおもうの」

 植木鉢と睨み合っていた私が真剣な顔で話しかけたのは、頼りになる相棒のセレストだ。

「わふっ」

 なんとなく意思疎通出来るからわかるけど、今の「わふっ」は同意ではない気もしたが、私はあえてスルーする。

 言っておくけど、ダジャレじゃないからね。


 本日検証のため用意したのは、萎れてしまった植物(茶色の陶器製植木鉢入り)。


 最近急に暖かくなったから、それが駄目だったのかな。

 ちなみにルト兄様の部屋に置かれていた物だと思う。

 新しく入ったらしいメイドさんが、ルト兄様の部屋の前でこの植木鉢を持ってうろついてるのを見かけて、無理矢理預かってきてしまった。

 かなり困った顔をしていたけれど、幼女特権の一つであるワガママを行使させてもらった。

 見覚えのない顔のメイドさんだったけど、スカートをぎゅっと握って小首を傾げながら「それ、ほしいの、だめ?」ってワガママ言わせてもらいました。

 私の隣でセレストも同じように首を傾げて「わふ?」と鳴いてくれてたのも良かったのかも。

 でも、あのメイドさん口元を手で覆ってたから、少しイラッとさせちゃったのかもしれない。

 それか「部屋に置けって指示だったし、別にあげても構わないわよね……」みたいな事を小声かつ、早口で言ってたから、新人さんで判断出来なくて困らせたのかも。後でコラリー経由で謝らせてもらおう。



 そんな植木鉢入手の流れを思い出して少々反省すべき点に気付いてしまったが、今はそれより検証だ。



 この『緑の手』で不意に何かしでかしてしまっても目立たないためにも、



 ──何よりロンダン様に良くなってもらうためにも、私はこの『手』と向き合いたい。



 それでどうしようもない場合は、幼女だからわからなーいという逃げ口上を使う予定だ。



「それでは、まずおみずをあげます」


 今の私には簡単に持てないサイズの植木鉢なので、水をあげやすいよう床の上に置いてある。

 なので見下ろす体勢で、植木鉢に生えている植物へ口に出して宣言しながらコップで水を注いでいく。

「わふん」

 植木鉢へ注がれる水を見ながら私の隣にお座りの体勢で待機しているセレストが、合いの手を入れてくれる。

 なんだかんだでセレストも気になるのか、尻尾がぶんぶんと振られている。

 揺れる尻尾の微笑ましさに口元を緩めながらも、私は水をあげた植物の様子を眺める。

 少し青みがかった緑色で、山菜のゼンマイみたいにくるりと丸まった形の芽だが、今はぐったりとしてお辞儀するようにくるりとした頭を下げている。

「おみずはもういらない?」

 答えはないのはわかっているが、つい話しかけてしまう。

 セレストも一緒になって、わふわふと話しかけていて可愛い。

 可愛らしいセレストから目を離し、水をかけた植物の様子をじっと見ていると、水で濡れたせいかくるりとした芽が少しゆらゆらと揺れている。

「あ……ちょくせつかけないほうがよかったかな?」

 出たばっかりの朝顔の芽にジャバジャバ水をかけて怒られた前世の記憶が頭を過ぎるが、このくるりとした芽はしっかりしてるから大丈夫……と思いたい。

 そのまま、しばらく心配して見つめていたが、水の勢いでゆらゆらとしているだけで特に倒れてしまうような様子はなく、ホッと安堵の息を吐く。

「……つぎはちゃんとねっこにかけるからね?」

 そっとくるりとした芽の部分に触れて話しかけると、まるで応えるようにゆらゆらが少し大きくなる。



 まぁ、私が触れたせいで揺れただけなんだろうだけど。



 少しだけこの芽が元気になろうとしてくれてるのでは、と期待してしまった。







「たしかにきたいはしてたんだけど……」



「わふぅ……」



 次の日、植木鉢を前に戸惑う私とセレスト。


 目の前の植木鉢には、三十cmぐらいの高さのある、小さな木みたいな姿となった植物が厚みのある葉を揺らしている。

 私の前世の記憶にあるバオバブの苗木に少し似ているけれど、まさかあんな大きな木になるんだろうか。



 ちなみに何故バオバブの苗木を見た事があるかというと、某薔薇好きな王子様の絵本から興味を抱き、うちの庭で育てられないかなとネットで調べたから。

 小学校低学年の時なので、バオバブがどれだけ巨大になるか理解してなかったから出来た妄想だ。

 もちろん行動に移す前に親バレし、バオバブがどれだけ大きくなるか本物の映像を見せてもらって諦めたのは懐かしい思い出……かもしれない。



 そんな私の記憶の中のバオバブの苗木似になってしまった、小さな芽だったはずの植物。

 別に大きくなって姿がかなり変わった事に戸惑っていた……のも少しあるけれど、一番大きな戸惑いは別な点にある。



[聞いてるの? 今日はもっと優しく水をかけなさいよ!?]



 苗木サイズの植物の上に乗っかっている、お人形サイズな少女からそんな注意をされているという、理解不能な事態。

 しかも少女の背中には二対の透明な羽がある。形は先が少し尖った蝶の羽のようだ。



[だぁかぁらぁ! ちゃんと聞いてるの!? 耳ついてる!?]



 見た目は完全に愛らしい妖精ぽい姿なのに、少々お口が悪いというギャップまであり、色々容量オーバーになってしまった私は、しばらくの間呆然とする事になるのだった。



 私の『緑の手』の検証のため、ルト兄様の部屋から持ち出されようとしていた植木鉢を部屋に持ち帰り、植木鉢の中の謎の芽に水をあげた次の日。



[無視してるんじゃないわよ!]



 くるりとした小さな芽だった植物は苗木サイズまで成長し、ちょっとお口の悪い妖精ぽい少女まで付いてきてしまった。



「わふわふ」


 私が固まっていたら、私より一足先に復活したセレストが吠えながら私の服を軽く引っ張って、正気に戻そうとしてくれる。

 そのおかげで何とか衝撃から復活した私は、目の前の妖精みたいな少女を真っ直ぐに見つめる。

 シルバ◯アファミリーのお人形ぐらいの身長で、青みのある不思議な緑色の長い髪に、若葉みたいな色をした瞳をしていて、ふわふわした白いドレスを着ている。

 背中の透明な羽も相まって、文句無しに可愛らしくて神秘的だ。


「……あなたはだぁれ?」


 わざと幼女っぽく訊ねたら、小馬鹿にしたようにふんっと鼻を鳴らされる。

[その馬鹿っぽい話し方止めなさいよ。昨日は普通に話してたじゃない]

 やれやれと言わんばかりに肩を竦める少女に、私はえへへと笑って誤魔化してもう一度同じ問いを口にする。


「わたしはレティシア。あなたはだれかしら?」


[ワタシはこの木の妖精よ! …………それしかわからないわ]


 咄嗟に、それしかわからないの? と突っ込みそうになったのを飲み込んで正解だった。

 自身を妖精だという少女が同じ言葉を口にして、先ほどまでの自信満々な強気の様子が嘘のようにしゅんとしてしまったから。

「あなたは、ずっとそのきといっしょにいたの?」

 危険はなさそうなので植木鉢に近寄った私は、少女へ向かって両手で掬うように手の平を上へ向けて差し伸べながら優しく問いかける。

 私なら自分が何者かわからなければ、不安で押し潰れされそうになると思う。

 その点、ちょっと高圧的な口調になったぐらいだったこの少女を尊敬する。

[……そう、だと思うわ。ずっと眠くて体に力が入らなかったけど、あなたが触ってくれたら、急に目が覚めたのよ? あなた、何したの?]

 もともとの性格なのか、ほんの少しだけ強気な態度が戻ってきた少女は、警戒した様子もなく私の差し伸べた手の平の上に乗って、窺うように私の顔を見上げてくる。

「わたしも、あなたといっしょでわからないの。でも、わるくなったんじゃないならよかった!」

 本当に心からそう思う。

 検証のため、とは建前で言っていたけれど、本当は捨てられようとしていたあの小さな芽を見た瞬間、どうにかしてあげたいと思って水をあげたから。

[……あなた、変わってるわ。ニンゲンってもっと、嫌な生き物なのに、魔狼まで連れてるなんて]

 笑う私を見て、顎をくいっと上へ向け、可愛らしい見た目にそぐわない高飛車な仕草で言い放つ少女。

 なんかイメージ的に悪役令嬢とかに似合いそうな仕草だ。

「あ、そういうきおくはあるんだね。あの、でも、できればわたしとセレストのこと、なまえでよんでもらえるとうれしいなぁ、なんて……」

「わふわふ」

 可愛い生き物が不審者を見てくるような眼差しにちょっと心折れそうになりながら恐る恐る提案してみたら、セレストも乗っかる形でフォローしてくれた。

 セレスト──魔狼の後押しのおかげか、警戒心いっぱいだった少女の態度が目に見えて軟化していく。

[あなたみたいなチビを怖がる必要なんてなかったわ、よく考えれば。まぁ、仕方ないから、名前で呼んであげるわ、レティシア……それとセレストだったわね]

 ふんっと鼻を鳴らした少女に軽くディスられながらも、なんだかんだ気を許してくれたようなので良かった。

 片手でセレストを撫でながら、もう片方の手の上に少女を乗せて安堵でふにゃふにゃと笑っていると、不意に少女が私の顔の前までふわりと飛び上がる。

 なんだろうと瞬きをしながら少女の動きを追っていると、胸を反らせて可愛らしく偉ぶってみせた少女からビシッと指を突きつけられる。

[レティシア! ワタシに名前をつける栄誉をあげるわ! 光栄に思いなさい!]

「え? わたしがつけていいの?」

[……ワタシだけ呼び名が無いの不公平じゃない]

 先ほどの勢いはどうしたと言いたくなるような、寂しげな顔でポツリと洩らした少女の姿に、私は躊躇いも忘れて一も二も無く頷く。

 とは言っても、なかなか責任重大だ。


 見た目は絵に描いたような妖精だから、フェアリーってどう? と提案したら、


[そのまんま過ぎるわよ!]


と、当然かと納得してしまう半ギレの突っ込みをもらってしまった。


 たしかに私も、『あなたは今日からニンゲンよ!』と言われたら同じ反応をすると思う。


「わふん……」

 セレストも責めるように私を見上げてくるけど、名前付けるのって難しい。

 セレストの場合は、なんか『セレスト』って言葉がポロッと降りてきた感じで決められたけど。


 ポロッと降りてこないかと、神様にでも祈ってみようか思ってしまったが、あの高笑いが脳裏を過ったので止めておく。

 また面白そうだからと妙な手出しをされたら困る。


 んーんーと唸りながら、目の前をふよふよとしている少女を見つめる。

 まだ決まらないの? と言いたげな若葉みたいな色をした瞳とバッチリ目が合った瞬間、私の脳裏に一つの色の和名が浮かび上がる。


萌黄(もえぎ)! ……萌黄ってどうかな? あなたのひとみみたいなきれいなみどりいろのなまえなの」


 私がポンッと手を打って思いついた名前を口にすると、少女の表情がパァッと輝き、浮かんだのは嬉しそうな笑顔。

 だけど、少女の笑顔はすぐ消えてしまい、ふんっと鼻を鳴らして顔を横へ向けて、いかにも仕方ないわと言わんばかりのポーズをとって私の肩へ降りてくる。


[し、仕方ないわね。ワタシは、今日からモエギって呼ばれてあげるわ!]


「よかった! きょうからよろしくね、萌黄」


 素直じゃないけれど、喜んでいるのがわかりやすい少女──萌黄の反応に、嬉しくなった私は頬を緩めながら萌黄の前に手を出す。


 私としては握手するつもりだったんだけれど、萌黄はまたぴょんっと私の手に飛び乗ってくれる。

 ほんのりと温かく、綿菓子ぐらいの軽さだけれど、確かな命の感触にドキドキしてしまう。

 それと同時に、ちょっと落ち着いて冷静になったおかげで、妖精なんてドファンタジー定番な存在が目の前にいるの事に今さらながらの感動が込み上げてくる。



[レティシア……助けてくれて、ありがとう]



 感動にうち震えていた私は、不意に聞こえた萌黄の囁くような声にハッとして萌黄と苗木サイズまで成長しま植木鉢の植物を交互に見やる。



「こちらこそ、げんきになってくれてありがとう、萌黄」



[何よそれ……本当にレティシアはおかしなニンゲンね]



 言葉の表面だけ聞けば悪口だが、そう呟いた萌黄の表情は楽しそうな笑顔で、私はさらに嬉しくなってくすくすと声を上げて笑い出す。


「わふわふっ」


 セレストも同じ気分なのか、私と一緒になってまるで笑っているような吠え声を披露する。


 そんな感じで笑い合っていた私達だったが、部屋の扉がノックされたのでピタリと笑うの止めて扉を窺うように見つめる。

 扉から聞こえてきたのは、


「レティシア? 入ってもいいですか?」


というルト兄様の柔らかな声で、少しだけ警戒していた気持ちは一気に霧散してしまう。


「ルトにーさま? だいじょうぶよ、どうぞはいって!」


 大好きなルト兄様の声に、反射でいつも通り答えてしまった私は、一瞬遅れて手の中できょとんとこちらを見ている萌黄の存在を思い出して慌てる事になる。



「あ! ちょ、まっ……」



 ルト兄様を止めようと脳裏に前世のイケメンさんが過っていく台詞を口にしてしまったが、その時にはもう扉は開かれた後で……。



「え? レティ、何か駄目でしたか?」



 扉を開けた体勢のまま、ルト兄様が首を傾げて困惑した表情で問いかけてくる。

 その表情には驚いた様子は欠片もなく、少し心配そうに私を見ているだけ。

 あれ? と萌黄を手に乗せたままルト兄様の表情を窺うが、ルト兄様の目は萌黄を映していない気がする。


 これはもしかして……。


「レティ、どうしてそんな不思議な体勢なんですか?」


 首を傾げて訝しげに私を見つめているルト兄様。


 ルト兄様が言う、私の不思議な体勢。それは手の平の上に萌黄が座っているから仕方ない。

 こうしていないと、萌黄が滑り落ちてしまうから。


 それなのにルト兄様ははっきり『不思議な体勢』と言った。


 つまりは──。


「おにーさま、みえてない?」


「え? 手の上に何かいるんですか?」


 私の独り言にルト兄様はきょとんとした表情で首を傾げている。

 ルト兄様は変な嘘を吐いて人をからかうようなタイプじゃない。


 どうやら本当に萌黄はルト兄様には見えていないらしい。


[当たり前よ! 妖精は妖精から気に入られたニンゲンにしか見えないんだからね!]


 戸惑う私に対して、自慢するようにふんっと鼻を鳴らした萌黄がそう言い放ち、ルト兄様の方へと飛んでいく。

 楽しそうに笑いながら萌黄はルト兄様の顔のギリギリとか攻めた飛び方をするので私の顔が百面相状態になっていたのだろう。


「レティ……少し休んでください」


 心配したルト兄様から抱っこされてしまい、抵抗虚しくベッドへ寝かされて、しっかりと布団まで掛けられてしまう。

「ロンダン様がいらっしゃっていたから、気疲れしたんでしょう」

 布団の上からぽふぽふと優しく私の体を叩いてくれながら、ボソッとルト兄様がそんな事を口にする。

 確かにそれは少しあるかもしれないと納得しかけた私だったが、ルト兄様の表情に違和感を覚えて布団の中からルト兄様の顔を見つめる。

 なんでだろう。いつも通りの優しい笑顔のはずなのに、副音声で『あの野郎』とか聞こえてきそうな感じに見えるのは。


 ちなみにだが、私は立派(?)な幼女でまだ五歳。ルト兄様は十五歳。今日はいないけれど、お姉様は十三歳だ。

 ちょっと年が離れているのもあって、ルト兄様もお姉様も私に甘々で過保護過ぎると思う。



「今、レティ付きのメイドを呼びますから、おとなしくしていてください」



[レティシア、大丈夫なの!? 具合悪かったのなら言いなさいよ!]



「わふん!」


 ルト兄様と萌黄、それにセレストまで心配してくれているが、萌黄の行動にハラハラして百面相をしてしまっただけなので、正直申し訳ない。


「わたし、だいじょうぶよ?」


 そう訴えてみたもののルト兄様は譲らず、私はベッドから出してもらえそうもない。



 仕方なく眠ったフリをしてやり過ごそうと目を閉じた私だったが、幼女な私にそんな器用な事は無理だったらしい。



 あっという間にぐっすりと眠ってしまい、目が覚めたのは次の日の朝だった。


 目を覚ました私を待っていたのは──。



「それで、レティ。どうしてこれがここにあるのか答えてくれるかな?」



 私によって元気になった植物が生えているあの植木鉢を手に優しく微笑みながらも、有無を言わせぬ口調で問いかけてくるお父様だった。




 これは、ラノベ定番のあの台詞を言う場面だろうか。




『え? また私何かしちゃいましたか?』ってやつ。


 ……うん、たぶん違うのはわかる。



 どちらかというと、あの神様(自称)へ向けて、いつも通り問いかけるべきなんだろう。



 「緑の手って、こんなんだっけ?」と。

いつもありがとうございますm(_ _)m


おかげさまで、拙作がランキング入りしております。

お読みくださっている皆々様のおかげです、ありがとうございます。


これからもよろしくお願いします(^^)


そして、短編なのに次回へ謎へ持ち越していくスタイルですみません。


こちらは、もうまとめて長編にした方が良いのではと悩んでますが、気が向いたら(ネタ浮かんだら)書くスタイルなので、もうしばらくはシリーズで対策していこうと思いますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
お話は楽しく読ませて頂いていますが、短編なのに続きは次回!というのもがっかりしてしまいますので、長編として「気が向いたら更新します」とか「気長にお待ちください」とでも注意書きを書いていただければ良いよ…
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