第1話 転生、そして異世界へ
西暦20XX年、冬の寒さも厳しくなる頃、一人の男の人生が終わろうとしていた。
「あ、これしんだわ。」
そう言うのは日本の高校に通う男子高校生、佐藤健斗。
彼の目の前に迫るのは、大規模イベントで使用予定の大型恐竜模型であった。
クレーンで釣り上げられたそれは、バチっという何かが切れる音と共に下に落下。
地面に到達するもバランスを崩した巨大怪獣は今まさに彼を押し潰さんとしていた。
「ぐへっ。」
現場を指揮していた作業員が動揺する。
「おいおい、うそだよな。下に人いなかったか?」
作業員のうち一人が大声で叫ぶ。
「急いで救急車を呼べ!」
そうして彼、佐藤健斗の人生は幕を閉じた。
かに思えた。
「ここは、、、?」
たしか僕は、でかい恐竜に踏み潰されると言う、なんともジュラシックな体験をして死んだはず。
はて。一体この真っ白い空間はなんなのだろう。
そう思っていると、目の前に光のリングが現れ、それが一つ二つと増えていくと奇妙な幾何学模様となり一際光が強まると両開きのドアのように光るリングで作られた模様のある空間が開き、なかから女性が出てきた。
「こんにちは。」
ドレスのような、一枚の布のような輝く衣装を纏った女性が僕に言った。
「こんにちは?あなたは?」
そう聞くと、彼女は髪を耳にかけながら答えた。
「私は異世界の神、モモ。あなたを異世界に導くために来たわ。」
異世界??てことはこれは例のアレか。
「フっいいだろう。その話乗った!」
「キャラおかしいわよ?」
「少し舞い上がってしまってね」
何を隠そう、僕は異世界モノの小説やアニメが大好きでよく鑑賞していた。
「まぁ、いいわ。あなたにはあなたの魂が許容する範囲で能力を付与してあげるわ。」
来た。異世界モノでもっとも重要なイベント。そう、チート付与。
これなしには異世界にはいけないよね。
とはいえ、どんな能力にするかが肝だ。
ここは慎重に決めなくては。
「まず、その異世界はどんな世界なの?レベルはあるの?魔力は?魔法は?ステータスは?」
「レベルやステータスとかゲームみたいなものはないわ。魔力や魔法はあるけどね。」
他にもあれやこれやと聞いた僕は、能力を決めた。
「じゃあ分身で。」
「分身?そんなのでいいの?」
「うん、その代わり魂のリソースを全部分身に割いて。他の能力はいらない。」
「わかったわ。固有能力【分身】を授けるわ。」
そういって女性もとい、女神は僕の頭にそっと手を置いた。
「おっ?。」
何か自分が根本から生まれ変わるような感覚になる。
「これで分身できるようになったはずよ。じゃあ行ってもらうわね。異世界では基本的に好きにしていいから。」
その言葉を最後に僕の意識は途絶えた。
目が覚めた時、僕は女性の腕の中にいた。
「あらあら、この子の目はあなたそっくりよ。」
「確かにそうだな、しかし髪の色は君譲りだな。」
背後からそんな声が聞こえてくる。
そう、僕は赤ん坊に転生した。
「おぎゃあああああ!(赤子スタートはないよー!)」