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第44話「帝国への遠征」

国境の森を開拓して大きな利権を得たシチトラは、騎士団副団長としての務めと領地経営を両立しながら、さらに国全体を動かす新たな局面へと踏み込むことになる。

王女セレスティアが進めていた内政はこの1年で大きく成果を上げ、国の体制は明らかに強固になっていた。そんな状況で、いよいよ弱体化した帝国への遠征が本格的に浮上。

王都は再び熱気に包まれ、騎士団や貴族たちが一斉に準備を加速させている。



---


王城の大広間。

一年越しの内政改革を主導した王女セレスティアの周囲には、功績を称える家臣や文官たちの姿がある。


街道整備や農地拡大、商業活性化により国の富は顕著に増え、騎士団の装備や兵力強化も充実。


王女が実質的な政治を仕切り始めており、王は半ば退き気味だが、政務をスムーズにやりとりする術を心得ている。



「陛下の健康も安定しており、姫様が政を進められるのはこの国にとって幸いですな」

ある文官が小声で言う。

「これで帝国領への遠征が成功すれば、国はさらなる領土を得て盤石となるでしょう」

周囲が頷くなか、王女セレスティアは流れるような段取りで“遠征作戦”の最終承認を取りまとめる。

誰もが「姫様はやはり次の王になるお方だ」と認める雰囲気が醸成されていた。



---


王都の騎士団本部では、副団長シチトラを中心に幹部たちが動き回り、帝国領遠征のための編成を加速させている。

「そうか、兵力はこのくらいで足りるのか? もし抵抗勢力が強い地域があれば、そこを避けて迂回する作戦も考えないと」

「はい、副団長。王女様の方針だと、まず北側から帝国領を進んでいき、中央部に抑えを置く案が有力です。…総隊は3つに分けて進軍する構想になりそうで……」


そんな話をしながら、シチトラは地図を広げ、配下の騎士たちに指示を出す。

この1年の間に、新たにシチトラの下で修練を積んだ若手騎士が育ってきた。中でもロデリック、フェリシア、ガレットの3人は、魔物の森開拓でも行動を共にした優秀な部下である。


大柄で豪快な性格なロデリック、忠誠心が厚く、剣技に長ける。

フェリシアは女性騎士で魔物の森でシチトラの剣術を間近で見て憧れを抱き、真面目に稽古を重ねている。

ガレットはどちらかというと策略型で、森の開拓時にも小隊をうまく率いて活躍した。臨機応変に動ける参謀肌。



今、彼らが騎士団本部の一角に集まり、シチトラから遠征作戦の大筋を聞かされている。

「この遠征、姫様が直々に軍を率いると聞いています。俺たちは副団長の下、先遣隊として動く可能性が高いですよね?」

ロデリックが期待に胸を膨らませると、フェリシアは少し緊張した表情で「あまり無茶しちゃ駄目よ、私たちはシチトラ様の援護も大事なんだから」と落ち着かせる。

ガレットは地図を見つめ、「帝国の各諸侯がどれだけ抵抗するか、あとは内部で寝返る勢力もあるだろう。そこを利用できれば、被害を最小限に抑えられる」と冷静に分析する。


シチトラは三人の顔を順に見渡す。

「みんな、1年前に比べて逞しくなったな。今回の遠征は大規模だが、力を合わせれば上手く行くはずだ。ロデリックは前衛の切り込み役、フェリシアは中衛を支えてくれ。ガレットは別動隊を率いて裏回りのサポートをお願いすることになるだろう」

三人とも声を揃えて「はいっ!」と答える。頼もしい若手が育っているのがシチトラにとっても心強い。



---


遠征に出る前、シチトラは自領である男爵領をどうするか、フロリウスらと打ち合わせしていた。


“留守中の治安”については、騎士団から少数残してもらうか、剣術を覚えた住民による自衛体制を強化。


ラニアとベアトリクスも一緒に遠征へ行くかどうかは悩ましいところ。二人の魔法は非常に貴重だが、領地経営にも欠かせない存在だ。



「フロリウス、領地を頼む。俺が遠征で不在の間に問題が起きたら、魔法を学んだ住民たちを中心に協力して対応してくれ。あとは資金繰りなど、常に連絡を取り合おう」

「かしこまりました、男爵殿。留守中こそ領地の発展を止めぬよう、全力で当たります」


ラニアとベアトリクスは、結局遠征には同行する方針になった。「あなたを護らなくてどうするの?」というラニアの言葉に、ベアトリクスも「私は引き続き魔法支援をしたいわ。領地はフロリウスたちが大丈夫」と賛成したのだ。



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王都からは大規模な軍勢が出ることが決まりつつあり、ここ1年で強化された騎士団や新装備をまとった兵たちが続々と王城近辺に集結している。

騎士団長が総指揮を執り、セレスティアが事実上の大将として指示を飛ばす形。シチトラは副団長として先陣を切るポジションに入り、ロデリック、フェリシア、ガレットの三人がその部下として付く流れが固まった。


「みんな、もうすぐ遠征の発令が出る。準備は抜かりないか?」

シチトラが三人に声をかけると、それぞれ静かな興奮をみなぎらせて応じる。

「はい、副団長! こんな大きな戦、燃えますよ!」




シチトラは頷いて、ふと空を見上げる。

(領地もある程度形になり、騎士団との信頼も深まった。そして、姫様はさらに実績を積んで……いよいよ帝国領へ遠征か)


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