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第43話「王女の功績と帝国への遠征計画」

王都の空は晴れ渡り、風にはどこか熱を孕んだ活気が漂っていた。

あれから半年――王女セレスティアが内政を任されるようになってから、国の様子は驚くほど変わり始めた。老いた国王の意向もあって、次期王としての実績づくりに邁進する彼女の取り組みは着実に成果を上げている。



街道整備を進め、国境近くの治安維持も強化。王女セレスティアは巡察を繰り返し、実態を掴みつつ官僚や貴族たちを動かしてきた。


商業税の見直しで交易が活発化し、王都には多彩な物資と商人が流入。


農地改革にも着手し、各地の収穫量が前年を上回りそうな勢い。


騎士団の再編にも口を出し、国防力を底上げする下準備を進める。



「まったく、姫様には頭が上がりませんな……」

王城の廊下で、ある文官が小声で囁く。

「この半年、セレスティア殿下が実質的に政治を動かしてるようなもんです。やはり、次の王は姫様しかないですね」

同僚の文官もうなずき、「王もそれを望んでおられる」と返す。誰の目にも、彼女の即位が近いと映っていた。



---


一方、男爵となったシチトラ・ハシダの領地も、この半年で見違えるほど成長していた。


移住者が増え、新しい集落や商業施設が形になっている。


ラニアとベアトリクスの魔法指導を受け、初歩的な魔法を扱う若者が少しずつ増えており、領地の特色として話題になっている。


剣術教室も定期的に行われ、一部の住民は自衛や警備を担えるレベルに達しつつある。



「最近はほとんど騎士団の力を借りなくても、魔物の退治ができる集落が出てきてるそうだ」

シチトラは屋敷の書斎でフロリウスからの報告を聞き、胸を張る。

「うん……いい傾向だな。領地が自立して強くなるのは心強い」

ラニアとベアトリクスも頷き、「教えた甲斐があるわね」「みんな頑張ってる」と微笑みあう。



---


そんなタイミングで、王女セレスティアが大きな一手を打つ。

内政で実績を積んだ彼女は、国王に「いま弱っている帝国の領土を取り込み、国をさらに拡張すべきだ」と正式に上申し、大規模な遠征計画を立ち上げたのだ。

「帝国は内乱続きで中央の統治が崩壊している。うちが先手を打てば、国益は計り知れない」

セレスティアは、王の前で堂々と演説する。老いた国王もこれを認め、「わしの代わりに、そなたが指揮を執ってもよい」と許可を与えた。


数日後、王都の騎士団本部では、この帝国領遠征に向けた作戦会議が開かれることになる。

騎士団長以下、幹部が集められ、その中には副団長のシチトラ・ハシダの姿もあった。



---


「……だが、帝国領とはいえ内乱中だ。何が起こるか分からんぞ」

騎士団長が地図を指しながら口を開く。

「中央政権が崩壊してるとはいえ、まだ各地で残党勢力がゲリラのように抵抗している。下手に突っ込めば大被害を受けるリスクもある」


シチトラや騎士団幹部らはテーブルを囲み、詳細な情報を睨んでいた。


帝国を事実上牛耳る諸侯の勢力図。

内戦で荒れ果てた地域と、比較的安定している地域の差。

王国が投入できる兵力や、セレスティアがどの程度の騎士団を動かすかは戦力配分の焦点だ。



「今回は姫様が主導して軍を動かし、王の勅命という形で遠征が承認されたわけだが……」

副団長としての立場で、シチトラが地図を指差す。

「帝国領に入ったら、まずはこの辺りの拠点を押さえたいですね。物流の要衝らしいし、住民も比較的穏健派と聞く。そこを上手く味方につけられれば、南方まで一気に進めるんじゃないか」

騎士団長は静かに顎を撫でつつ、「ふむ……おまえの意見も一理あるが、抵抗勢力との衝突は避けられんぞ。俺も出陣するが、万が一の事態には副団長のおまえが指揮を任される場合もある」と重々しく言う。

(騎士団長自身が怪我を抱えていることは一部の団員しか知らないが、もし戦いが長引けば交代の可能性もある……)



---


こうして、半年で蓄えた力を背景に、王国全体が帝国領遠征の準備を本格化していく。


軍資金はセレスティアが内政で得た増収を軍需に回す。

兵力は騎士団の再編と、シチトラのような若い幹部への権限移譲。


シチトラの領地も留守中の治安を確保するため、人員配置を考えねばならない。



シチトラは一通り作戦会議を終え、廊下を歩きながら、ふと視線を遠くに向ける。

(俺も領地経営を一段落させなきゃならないし、遠征に集中するには万全の体制が必要だ)



あの帝国の侵略侵攻から約1年で、王女セレスティアは内政手腕を見せつけ、民衆や貴族からの信頼を高めた。

シチトラは領地と騎士団副団長の仕事を両立し、周辺の魔物や秩序の維持に尽力、夫人たちとも穏やかな日々を築いている。

だが、いよいよ帝国領遠征が動き出せば、新たな戦いが待っているのは確実だ。

「副団長、今回の遠征、姫様も直々に軍を率いるそうですよ。あなたも護衛兼、先陣を担うかもしれません」

同期の騎士が小声でささやき、シチトラは身を引き締める。

「分かった。油断せずに準備を進めよう。……遠征が成功すれば、この国はさらに強固になるだろうし、領地の未来も明るい。おれも全力を尽くすさ」


こうして、王国は満を持して帝国領への進軍に乗り出そうとしていた。王女セレスティアの巧みな政治と、シチトラの領地による後押しがどう結びつくか。


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