第37話「帰還と区画整理──領地経営への新たな局面」
森の開拓を見事に成功させ、ほぼすべての利権を握る形となったシチトラたち少数精鋭は、凱旋のため王都へ戻っていた。
王都では開拓区画をどう分割・管理するか、また新たな居住区をどのように整備するかを検討する重要な会議が開かれることになり、シチトラも出席するよう招集を受けている。
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「おかえりなさいませ、男爵様!」
市街地へ入った途端、騎士団の見張りが出迎えの声を上げ、あちこちでざわつきが起こる。噂はすでに広まっており、あの“魔物の森”をものの数日で切り拓いたという話に、人々は驚愕していた。
「男爵殿が本当にやったらしいぞ! ほとんど被害なしで奥地を確保したんだって」
「この国でも前例がない快挙じゃないのか? あの森は何度も開拓失敗してたはず……」
ラニアとベアトリクスは街の熱狂に少し戸惑いながらも、今回の成功を胸に安堵の表情だ。
「大変だったけど、結果的には大勝利ね」
「うん……でも、きっとまた色々面倒な会議があるんだろうな……」
とシチトラが苦笑いしながらつぶやく。
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王城の会議室には、高位貴族や騎士団上層部が集まり、開拓した森の“新たな区画”をどう分割するか議論が行われていた。
もともと「最も成果を上げた者が多くの利権を得る」という取り決めがあったため、シチトラを中心とする意見が大きな重みを持つ。とはいえ、周囲は簡単に黙って引き下がらない。
「おいおい、男爵殿がほぼすべてを総取り、というわけには……」
「いや、しかし実際のところ、男爵殿がいなければ我々はあの森の奥へ到達できなかったんだ」
「それに、あちこち救援してもらいましたし……実質、彼が魔物を討伐していなければ何も残らなかったでしょう?」
マルクス・レイヤード侯やファルデン子爵といった貴族は顔をしかめつつも、助けてもらった手前、強く反論できない様子。
結局、会議は「大部分の区画の権利はシチトラが保持し、希望する貴族が共同開拓に参加する場合は彼に“協力費”を支払うかたち」とまとまっていく。
元から申し合わせていたルールにも沿っているため、皆やむを得ず納得するしかない。
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「おれとしては、森を発展させるために協力してくれるなら歓迎します。誰も排除するつもりはない。……けど、主導権はおれが握ることになる。異論はありますか?」
シチトラが淡々と述べると、一部は「むう……」と不満げに唸るが、大多数は「仕方ない」と肩をすくめる。
こうして、森の新区画の利権はほぼシチトラの手中に収まり、周辺貴族は彼に協力するか離脱するかを選択する流れになった。
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会議の後、シチトラは自室に戻り、腹心のフロリウスと合流する。
彼は領地の現状や、新たに加わる森の区画をどう運用するかを緻密にまとめた書類を持参していた。
「男爵殿、現行の領地はまだ再建途上ですが、人口が増えつつあります。そこへ今回の“森の土地”が加われば、大きく経済が回せるでしょう」
フロリウスは熱心に報告を進める。
「それで、例の村……以前男爵殿が助けたあの村の人たちにも、移住を勧めてはどうですか? 農地を拡大するには人手が要りますし、彼らも信頼を寄せてくれていると思います」
「そうだな、村長を通じて打診してみる価値はあるかもな。俺もあの人たちには恩があるし、信頼関係もあるから、森の区画へ移ってもらえれば心強い」
現領地はまだ小規模だが、騎士団や学院の協力で治安維持を進めており、農地や商業スペースの整備も始まりつつある。
新しい森の区画は主に材木や薬草、魔石などを採集できる場所が見込まれ、大きな利益が予想される。さらに拠点を作れば村を立ち上げることができるだろう。
「フロリウス、お前の計画書によると、早ければ半年程度で採算が軌道に乗るって話だが、本当にそこまでいけるか?」
「もちろん、簡単じゃありませんが、男爵殿の強大な武力がある以上、魔物の脅威を排除しやすいのが大きいです。あとは人手と資金をどう効率よく回すか、ですね」
彼らは細かい数字や区画の割り当て、村人の移住計画などを話し合い、今後の方向性を大筋でまとめていく。
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会議や領地の報告を一通り終え、夜が更けた頃、城では別の動きがあった。
王女セレスティアは、長らく沈んだ表情を浮かべていたが、ここへ来て何か強い決意を胸に秘めたらしい。
「……そう、わたくしも動かなくちゃ。いつまでも打ちひしがれていてもしょうがないわ」
彼女は護衛を少数だけ伴わせ、侍女にも具体的な指示を出している。
「ちょっと私用があるの。なるべく大げさに騒がないで。……あとは、父上には“心配はいらない”とだけ伝えて」
高貴で硬い表情を残しつつも、その瞳にははっきりした意志が宿っていた。
(今のままじゃ、遠くから見てるだけになってしまう。なら、わたくしも……行動を起こすのよ)
何を狙うのか、それはまだ周囲に知られていないが、王女が明確に動き始めるとなれば、また大きな波を呼ぶかもしれない。
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こうして、シチトラは大成功の開拓を果たし、大きな利権と領地経営の展望を手中に収める形となった。
森の区画整理会議では、ほぼすべての貴族が彼に従う結果に。右腕となったフロリウスと共に、住民の移住計画や新しい区画の方向性も順調に進みそうだ。
しかし、その裏で王女セレスティアが決意を固め、新たな行動に移ろうとしていることを、シチトラはまだ知らない――。




