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第31話[本当に建てるのか、俺の“家”を……」

視察や騎士団副団長の仕事をこなしながら、俺は王都の一角にある空き地を見下ろしていた。

まさか自分が家を持つなんて、戦国のころは考えもしていなかったが、今は男爵として、そしてラニアとベアトリクスの二人を“同時に娶る”と決めた以上、それなりの住まいが必要になる。



---



「シチトラさん、おはようございます! 今日はいよいよ敷地の下見をするんですよね?」

弾んだ声で駆け寄ってきたのは、ラニア。魔法学院の制服ではなく、少し動きやすい服装で、瞳をきらきらさせている。

「おう、ちょうど今から地ならしの職人と会うところだ。……なんだか落ち着かねえな」

「ふふ、わたしも楽しみですよ。一緒に住む家なんですから」

そう言った後に、彼女ははっと頬を染めて言葉を切る。周囲にはまだ騎士団の関係者がちらほらいて、彼女の“奥さんになる”話は公式にはこれからだから、少し遠慮しているらしい。


そこへ、ベアトリクスが黒いローブ姿で現れ、冷ややかに言葉を投げかける。

「やっと“家”を建てる気になったのね。男爵として、そろそろ拠点を構えてもおかしくないわ。それに……私たちが落ち着ける場所も必要でしょう?」

口調はクールだが、ほんの少し照れを隠すように視線をそらしている。先日、「二人と同時に娶りたい」という俺の申し出を受け入れてくれたのだが、その実感が湧かないのだろうか。



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場所は王都の外れ、少し広い土地が余っていた場所だ。王から男爵領として与えられ、自由に建物を構えていいという。

「ここなら家の周囲に庭を作れますし、厩舎も建てられますよ。将来的には子どもが走り回れるスペースも……」

ラニアが恥ずかしそうに言いかけて、「あっ、子どもってまだ早いですね……」と慌てて付け足す。

俺は苦笑いで応え、「ま、将来的な話なら、そういうのもあるかもな」と先を夢見るように言う。


ベアトリクスは足元の土を軽く踏みしめて、「この地盤なら大きな屋敷でも平気そう。魔法陣で強化もできるしね」と実用的な視点で確認している。

「ただ、建材の調達にはそれなりの時間がかかるわ。式を挙げる時期によっては、完成が間に合わないかもしれない」

「そうか……そりゃあ仕方ねえな。急ぐわけじゃないし、多少時間をかけてでも、満足いく家を作るのが優先だ。」


3人で話し合いながら、雑草をかき分けて敷地を見回る。想像力が膨らむたび、ラニアは目を輝かせて「ここに花壇とか置けますか?」「魔法の研究室も必要ですね!」と嬉しそうだ。

ベアトリクスは「騎士団としての打ち合わせスペースも確保したいわ。あなたが副団長なら、急な会合があるでしょうし」と現実的な提案をする。

俺は「全部一度に作ると金がかかりそうだが……まあ、せっかく褒賞金もあるし、将来を考えれば投資してもいいのか」とうなずく。



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翌日以降、複数の大工や職人、魔法工房の者たちが集まってきた。設計図を叩きながら「ああでもない、こうでもない」と議論が飛び交う。

「うちは建築には魔法の力も使っているんで、早く立てられますが、その分コストが高くなりますよ?」

「地盤強化には結界師を呼んだほうが安全だ。地震や魔獣対策にもなるからな」

「厩舎を造るなら、馬だけでなく魔獣も飼える設計にするか?」


頭が痛くなるほどの情報量だが、ラニアとベアトリクスがそれぞれ魔法の観点から助言してくれるので助かる。

「ここは予算との兼ね合いだね。シチトラ、あなたが望む屋敷の規模をちゃんと決めておかないと、ダラダラ増築していくことになるわよ?」

「わかってる……一応、夫婦3人で暮らす家に加えて、隊員が泊まれる部屋や客室も欲しい。あと馬や荷車を置ける倉庫も……ううん、考えがまとまらねえ……!」


初めての“家づくり”に戸惑う俺を見て、職人は「男爵殿、ゆっくり考えましょうや」と笑う。

(こういう平和な悩みが、逆に新鮮で悪くない……)



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夜遅くまで打ち合わせをしていると、ラニアが宿舎の一角で資料を整理しながら言う。

「シチトラさん、わたしが魔法関連の設備で必要そうな道具とかリストアップしておきました。拠点に魔法陣を据えておけば、護衛結界とかも活かせますし」

「サンキュ、助かるよ。すげえなラニア、こんなに細かく……」

「えへへ……。わたし、あなたと住む家だから張り切っちゃって……すみません、ウザかったら言ってください」

「いや、嬉しいよ。正直助かる」


ベアトリクスも黙々とメモをとっており、「鍛錬用の広場も確保しないとね。あなたが護衛任務を兼ねるなら、広い空き地が必要だし。あるいは裏庭に作れるかも」などと効率的な提案をする。

二人とも、嫁入り前で緊張しているはずだが、家づくりの話になると夢が膨らんで楽しげだ。

(こうしてワイワイ話していると、戦国から来た俺が貴族の家を建てるなんて、変な気分だが……悪くないな)



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一方、王女セレスティアにはまだ「家を建てる話」は公に言っていない。

(“何だか最近、あなたは忙しそうだけど。わたくしの護衛が嫌になったの?”と拗ねた顔をするのが目に浮かぶ……でも、こればかりは仕方ねえ)

俺は頭の片隅で王女の表情を思い出しながら、建築計画を進める。

(姫には姫の事情があるし、今は二人の嫁を迎える家づくりに専念しよう。ああ、でも護衛任務は忙しいな……)



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こうして新居の建設は、少しずつ動き始めた。

地ならしや設計のまとめに時間を要するが、完成すれば“ハシダ家”として正式にスタートするわけだ。ラニアとベアトリクスもそこへ嫁ぐ形で、同居生活が始まる可能性が高い。

男爵としての立派な屋敷を建てるか、それとも適度に質素な住まいにするかはまだ悩み中だが、3人で一緒に暮らす想像は少しだけ楽しみでもある。


「ようし、だいたい工期の目処も立ったな。数か月はかかりそうだが、その間に式の準備も進められるし……」

俺は書類を見ながらつぶやく。ラニアがにこやかにうなずき、ベアトリクスも「なるべくスムーズに終わらせましょう」とクールに笑う。

それは新しい人生の始まりであり、同時に責任も重くなるが……ワクワクする気持ちもあるのだ。


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