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L.F.  作者: 河上歩
4/10

第四編 河上あゆみ

旅人は

やけに明るい火に請われ

歌と踊りに明け暮れる

それは痛みに変わりゆき

求めた未来は消えていく

夢の中へと消えていく



「水族館って、やっぱり落ち着く。泳いでる魚を見てると涼しい感じするし。あ、いや、まだそんな季節じゃないけどさ…」

未咲が、巨大な水槽に泳ぐマンボウを見つめながら言った。

「落ち着くっていうのは…やっぱり私たちが遠い昔に海に生きていたからかしらね。その記憶が、身体のどこかで生きている…」

私も、マンボウを目で追いかけながら、言う。

「ん……なんだろ、もっと身近な……」

腕を組んで、未咲は目を閉じている。

「身近な…?」

言葉を切って考え込んでいる未咲は、水の青色で包まれていた。そこに大小様々な魚たちの影が、足早に通り抜けていく。薄暗い館内にぼうっと青く浮かび上がった未咲は、まるで海と同化したように見えた。

「そう…身近な……」

「……」

いつの間にか静まり返っていた館内に、未咲の声が、響く。

「……お母さんの、お腹の中」

私は、未咲の言葉に違和感を覚えた。

…かつては誰もが、そこにいた。だけど、それを認めたくない人もいる。

不意に、茜さんの哀しげな横顔を思い出した。そして、亡くなった後に会った、茜さんの家族も。

「そんな感じ、しない?生まれる前の記憶っていうか、なんかこう……」

「……小さい時に見た夢、覚えているわ」

「え?」

人気が無くなったせいか、私の声がやけに響く。

「暗い海の中を泳いでいて…遠くから低い笛の音のような、私を不安にさせる音が聞こえてくるの。時々、甲高い悲鳴のような音も混じっていて…。怖くなってうずくまっていると、大きなシャチがやってきて、私を食べてしまう。それで、私はシャチの口の中にいるんだけど、そこはなんだか居心地がよくて……。やっと安心出来てホッとしてると、シャチの口が開いて、その先には星がキラキラと光っていて…ああ、多分これ宇宙なんだ、って思って……そこで目が覚めたの。今でも鮮明に覚えているわ」

私は夢中で話していた。いつでも詳細に思い出せるから、話し始めると全て語り終えるまで止まらなくなってしまうのだ。要約して話すことなど出来ない。これは私にとって大切な記憶だった。

「それって…生まれる前の記憶が夢になって現れたのかな。胎児の時の記憶っていうやつ」

未咲はそう言いながら、歩き出した。私も後に続く。

「そうかしら…。でも、それ以来シャチが好きになったの。私を安心させてくれたから」

その夢をよく見たのは、10歳の頃だった。学校という場所が恐くなっていた、そんな時期だ。

「この前、シャチが好きって言ってたよね。そっか、だから好きなんだ…なんか素敵な話」

しばらく歩くと、今度は珍しい深海魚たちが、小さな水槽にじっとしていた。薄暗い室内に、クラゲのような透明な生き物が電飾で飾られたように、光を発していた。

「うわあ…なんだか地球の生き物じゃないみたい。ねえ、これすごいね。頭しかないよ」

未咲が歓声を上げた。そちらを見ると、確かに魚の頭しかないように見える。だがよく見ると、まるで骨だけのような体があった。

「…面白いわね。生きているのが不思議に見える」

痩せ細り、頭だけが異常に大きな魚…。肥大化した自己満足が泳いでいるのか。そんな考えが浮かび、私は思わず苦笑した。

小学校でも中学校でも高校でも、周りにはそんな生徒や教師達しかいなかった。思いやりの言葉も慰めの言葉も、自分が人より優れているという優越感を得たいだけの行為だ。それは人を気遣っているとはいえない。胸糞の悪い自己満足だ。そんな人間ばかりだった。上っ面だけ取り繕っているだけの、つまらない集団だ。

「ねえ未咲、こっちは蟹が真っ直ぐ歩いてるわよ」

さりげなく未咲の手をとり、その水槽へ近づく。未咲の小さな手は、冷たくて柔らかい。

「わっ、ほんとだ。何これ!かっわいい!…あ、潜っちゃった…」

残念そうに呟く。その間に、私は未咲の手を両手で包み込んだ。

「あ、見て見て。こっちにはクリオネがいるよ」

今度は未咲に手を引かれて、次の水槽へと移る。

「へえ〜…思ったよりちっちゃいんだね」

水槽に顔をぶつけるぐらい近寄って、くるくると大きな瞳を回している。クリオネの動きを目で追っているようだった。

春先の水族館というのも、なかなか面白いな、と思った。未咲が期待していたイルカのショーは、さすがに夏場にならないとやっていないそうだが、しかしその分、入場者が少なく、私たちはここまでのほとんどの水槽を二人きりで過ごすことが出来た。

「…あゆみさん?」

「なあに?」

「まわり…誰もいないよ?」

言われて辺りを見ると、そこには私と未咲しかいなかった。さっきまで親子連れがいたはずだが、深海魚はつまらなかったのか、今はもう誰もいなかった。

「深海魚は、子供には人気ないのかしら…」

「ふふ…そうじゃないよ、あゆみさん」

水槽に背中をくっつけて、未咲はいたずらっぽく笑うと、私を見上げた。そして、私の両手をとると、目を閉じて耳元にささやいた。

「…二人きりにしてくれたんだよ」

「…未咲ったら」

薄く目を開けて、未咲は微笑みを浮かべた。

「ねえ…」

誘いの言葉が、未咲の唇を震わせる。薄暗い室内に、未咲の白い喉がやけに目についた。

「ええ……」

そう、私は応じた。薄暗く青い母の胎内で。

そして、私たちは唇を重ねた。未咲の身体を水槽に押しつけるようにして、両肩を抱きしめて。

…だが、ここは人の手で作られた擬似的な“母なる海”だ。そんな場所で行うこのキスには、一体何の意味があるのだろう?

これも、擬似的な何かなのだろうか。それともこれは、擬似的な何かへの、生々しい抵抗なのだろうか?

引っ掛かる“何か”の正体は、私にはわからなかった。

「…二度目、だね」

唇を離すと、未咲が言った。

胸が高鳴るせいで、上手く言葉を紡ぎだせない私は、こくん、とうなずくしかなかった。

「…三度目は、どこがいい?」

「…そうね……」

かすれた声が響いて、私は戸惑う。こんなにも私は動揺しているのか。私の心を動かすことなど滅多にないから、こんな状態に慣れていないのだ。

だから、私は混乱した状態で、口をついて出た言葉に自分で驚くばかりだった。

「未咲の部屋が…いいわ」

未咲は恥ずかしそうに下を向いて、小さく「うん」と答えた。



お昼は、水族館から10分近く歩いたところにあった喫茶店でとることにした。最初の予定では回転寿司だったが、店はどこもお客でいっぱいだった。

そこからしばらく歩いたところで、偶然、喫茶店を見つけたのだ。

表には立て看板しか出ておらず、店は地下にあった。小さなランプの灯りが下がった狭い階段を下りていくと、ガラスの扉があった。

店内に入ると、若い夫婦らしき男女がカウンターにいた。こちらを見ると、女性の方が席まで案内してくれた。

店内は意外に広く、カウンター席を入れて座席は50人分ほどありそうだ。カウンター近くにピアノが置いてあるところを見ると、音楽の生演奏でもするのか、ただの飾りか。

ぐるりと店内を見ると、テーブルの上にあるウサギの人形が目についた。あれはメニュー立てのようだ。両手でメニューを抱えて座っている。

席についた未咲は、ウサギの耳を引っ張って喜んでいる。落ち着いた照明の中に座っている、真新しいウサギのぬいぐるみは、年季の入った内装には不似合いな気がした。あの女性店員の趣味なのかもしれない。

「さてと…あゆみさん、何がいい?」

「とりあえず…オレンジジュースがいいわ」

「オレンジ?コーヒーじゃなくて?」

「ええ。喫茶店で飲むオレンジジュースっておいしいのよ。小さい時に父親に連れていってもらった喫茶店で飲んでね…それが忘れられなくて」

父親。今はどこで何をしているのか、知らない。あまり口に出したくない単語ではある。だが、別に好きでも嫌いでもない。記憶が薄れているせいだ。

「ふうん…でも、メニューにあるかな…」

ウサギからメニューを取り上げて見てみると、「ブラッドオレンジジュース」という聞き慣れないものがあった。

「オレンジジュースには違いないでしょう…多分ね。私はこれとシナモンロールがいいわ。未咲は?」

「ふふ…シナモンロール、か。私もそうしようかな」

あの時、未咲が焼いてきてくれたシナモンロールの強烈な甘さが、舌によみがえる。私はその時、初めて人前で泣いた。未咲の、私を思う優しさに触れたからなのか、甘すぎてむせ返ったからなのか、私にはわからなかったが、ただ、涙が溢れた。

「うーん…シナモンロールもおいしそうだけど…これもいいかも。あ!レモンケーキだって!うわぁ…おいしそう…パスタもいいなぁ…どうしよう。ごめん、あゆみさん。ちょっと待っててね。あ、ねえシナモンロールだけでいいの?お腹空いてない?」

「もともと食欲がないの。だから、十分よ」

「そっか…あゆみさん、細いもんね。いいなあ…ダイエットとかしたこと無いでしょ」

「そういえば…無いわね。気にしたことも無いわ」

「えーっ、ホントに?同じ人間なのに…。それでいてさあ…」

未咲は、ちらり、と私の胸元をみた。

「…いいな」

「…何が?」

「…ん、別に。よく食べてよく遊ぼう。ね、あゆみさん?」

「え?え、ええ…」

何のことかよくわからなかったが、私の胸を気にしているらしいことはわかった。

(だけどね、これはこれでつらい目にもあってるのよ)

言いかけて、やめた。未咲が真剣な表情でメニューをにらみ始めたからだ。恐らく、カロリーと戦っているのだろう。

頬杖をついた手の小指を軽くかみながら、未咲はうんうんとうなりながらメニューをにらんでいる。

しばらくかかりそうだ…そう思って何気なく視線を上げて店内を見ると、カウンター席の近くに置かれたピアノの前に、いつの間にか長髪の女性が座っていた。

先ほどカウンターにいた女性よりも、もっと若い。

と、その女性はいい加減に鍵盤を叩き始めた。メロディになっていないことは、素人の私にもわかった。

すぐに演奏をやめ、カウンターにいた店長らしき男性と話し始めた。ピアノの調律師だろうか。

と、私の視線に気づいたのか、女性がこちらを振り向いて、私と目が合った。すると、こちらに向かって歩いてくる。

「ご注文でしたら承りますけど」

ジーンズに白いブラウスの彼女は、およそ店員には見えなかった。

「…シナモンロールと、ブラッドオレンジジュースを」

「あ、あゆみさん、ちょっと待って。まだ格闘中なの」

相変わらず未咲はメニューをにらみ続けていた。

「食べたいもの食べたら?南さん。おごるわよ?」

未咲の後ろに立っていた彼女が、驚くような言葉を口にした。

未咲も驚いて振り返る。

「あっ!……えっ、吉埜先生!?ど、どうしたんですか、こんなとこで」

吉埜……確か、茜さんの担任だった先生だ。そう思ってよく見ると、茜さんの葬儀の日にずっと泣いていた、あの人だということがわかった。

「私ね…先生やめたの。で、しばらくこの店に置いてもらっててさ」

「えっ…そうなんですか。なんでそんな急に…」

言ってしまってから、未咲はバツの悪そうな顔をした。急に辞めるぐらいだから、複雑な事情があるはずだ。人は、色々な理由があって行動を起こす。その理由を、聞いてはいけない時があるのだ。

それに、吉埜先生がやめた理由。

(きっと、茜さんだ)

それでも、吉埜先生は笑顔を崩さなかった。私には、それがどこか痛々しくみえた。

「まあ、やりたいことはやらなきゃ、って思って。ピアノは前からやりたかったから、ちょうどいいかな、なんてね。大体、教職向きじゃなかったのよ、あたしは。今だから言うけどね」

そう言った吉埜先生は、本当に嬉しそうだった。確かにそれも理由の一つなのだろう。だが、もっと大きな理由は、きっと茜さんだ。ピアノは、言い訳の為の小さな理由に過ぎない。

「今日はあたしがおごってあげるから、二人とも好きなもの頼んでいいわよ」

「わっ、本当ですかぁ!?やったね、あゆみさん!じゃあ、これとこれと…」

「南さん…少しは遠慮しなさいってば」

吉埜先生は、無邪気にはしゃいでいる未咲を笑顔で見ている。だが、ひと通り注文を終えた後の去りぎわ、先生の目の端に涙が見えたのを、私は見逃さなかった。それは何に対する涙なのか…未咲を見て、茜さんのことを思い出したのだろうか。私にはわからなかった。


また来ます、と挨拶をして、私たちは店を出た。

「吉埜先生、凄かったね。格好良かったぁ…。あんなにピアノ上手だったなんて知らなかったよ。古文の先生なのにね」

「趣味でやってることって長続きするものよね。きっと、毎日練習を欠かさずやってたんでしょう。あれだけ弾けるのなら、すぐにでもプロになれそうよね」

「吉埜先生、まだ20代だもん、きっとなれるよ。でも本当に格好良かったなぁ…。あの地味な吉埜先生が、あんなに格好良くなるんだもん、私もピアノやってみよっかなぁ…」

吉埜先生が奏でたメロディは、力強く明るくて、何よりも華やかだった。帰り際に先生に聞いてみたところ、自分で作曲したのだという。けれども、どんなことをイメージして作曲したのか、それは聞かなかった。だけど、どこか吹っ切れたような、歯切れの良い音楽だった。

でも…。

先生は後悔していないのだろうか。もし茜さんの自殺が原因なら、ピアノの道へ進むことは逃避的な行動ではないか?教師として続けていくことこそが、吉埜先生のとるべき道ではないのか?

…私が考えることではないが、しかし、そうやって茜さんを忘れていってしまうことは、とても悲しいことだ。私は、茜さんのことを、忘れたくはない。いや、忘れられない。今でも、私にとっては生きているからだ。

「どうしたの、あゆみさん。考え込んじゃって…」

未咲が心配そうに、私を覗き込む。

「吉埜先生のこと…考えてたの」

そう言うと、未咲は笑顔を見せた。

「ふふ…そうだよね。ホント、びっくりしちゃった。まさかあんなところで、よね。でも楽しかったぁ。ねえ、また来ようね。あゆみさん!」

私の腕をとり、未咲が明るい声を出した。そうか…未咲には、まだ茜さんのことを話してなかった。事情を知らないのだ。

いずれ話す時がくるだろう…。いつになるかは、わからないが。

「ええ…そうね。また、来ましょう」

また、いつか。確定しない約束の言葉が、私を少しだけ不安にさせた。

今までのように、毎日学校で会えない。その現実を突きつけられているようだった。でもそれは、受け入れなければならない現実だ。

「ねえ、あゆみさん…毎日会えないかな。春休みの間だけでも、毎日一緒にいたい」

未咲は、真っすぐに私を見つめた。どうやら、考えていることは同じだったようだ。

「ええ」

私は、すぐに返事をした。

「…ホントに、いいの?」

「断る理由は無いわ。私も貴女と一緒にいたいもの」

私も、未咲の目を真っすぐに見つめ返す。未咲の瞳が、僅かに震えているように見えた。

「じゃあ…明日、泊まりにきて。今日はお姉ちゃんが帰ってくるから…久しぶりにお姉ちゃんにも会いたいから…ごめん」

「お姉ちゃん…ああ、結婚してるのよね、確か」

初めて未咲に会った時に、聞いたことがある。姉は結婚して別のところに住んでいて、滅多に会えなくて寂しい思いをしている、と。そんな会話から、私たちの付き合いは始まったのだった。

「いいわよ。お姉さんとのことを優先して。私とはいつでも会えるんだから」

「うん…ありがとう。でも、ホントにごめん」

「大丈夫よ。私は貴女のこと……」

言いかけて、気づく。

…私は、未咲が好きなのか。それは恋愛感情なのか。だとしたら、それは初恋だ。

…息苦しい。次の言葉が言いだせない。と、突然、夕焼けに染まった茜さんの横顔が、よみがえった。

「…あゆみさん?」

急に黙った私を、未咲は不安そうに見つめている。

「……うして」

「え?」

「どうして……」

不意に、両目が熱くなる。

「どうして」

私の口から、意味の無い言葉がもれていた。

「…あゆみさん、大丈夫?具合悪いの?」

立ち止まって、未咲は私の肩に手をかけた。

「…ごめんなさい。少し、気分が悪くて」

ハンカチで、両目を押さえる。ぎゅっと押し付けると、温度の高い、熱い涙がハンカチを濡らした。

何だろう、これは。いつもと、違う。

「えっ…じゃあ、私の家で休んでいってよ。ここからなら、ウチの方が近いから」

「…大丈夫。一人で帰れるわ。心配しないで」

「…でも」

「平気よ。薬は自宅にあるから」

「じゃあ、せめてあゆみさんの家まで送っていくから」

「…いい。大丈夫だから…」

別に拒む理由など無い。しかし、何故か私は未咲の申し出を頑なに拒んでいた。

「やだよ。ほっとけないよ。大好きだもん、あゆみさんのこと。だから…」

「……やめて。未咲……。後で理由を話すから……今は……帰って」

私は、今にも泣き崩れそうだった。これは……何だろう。私にだって理由はわからない。

「あゆみさん……わかった。きっとだよ」

今までとは違う私の様子を見て何かを察したのか、未咲はそう言ってくれた。

「……ごめん…なさい」

それだけ言うのがやっとだった。

私は両目を押さえながら、駅に向かって歩き出した。未咲はそれ以上何も言わず、踵をかえして黙って歩いていった。


電車の中で窓を見ると、赤く泣き腫らした私の目が映っていた。

これは、一体なんなのだろう。茜さんが亡くなってから、発作のように突然涙が溢れるようになってしまった。

…吉埜先生は、どうなのだろう。喫茶店で、先生は不意に涙を見せていた。もしかしたら、今の私と同じ状態になっていたのだろうか。

聞いてみる必要がある。明日、未咲ともう一度、あの喫茶店へ行ってみよう。

その前に、家についたら未咲に電話をかけなければ。

あんなに心配させてしまったのだから、電話ぐらいはしておきたい。

ブラウスの胸ポケットから、未咲からもらったイルカのカードを取り出す。

(未咲……)

私は、そのカードに指を滑らせるように、そっと撫でた。未咲との、キスの味を思い出しながら。



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