9・おっさん、外堀が埋まった事を受け入れる
それからしばらく、第四を中心に警戒を続けたが特に何もなく、日暮れを迎える頃には穴から帰還する冒険者を見送った。
穴の直径は2km程度だが、なぜか下りるととんでもない広さを持つようになる。もちろん、木が生える以前は上空から見えていたのだが、降りていく冒険者たちの多くが途中で消えてしまい、上空から見えなくなったという。だが、降りた俺たちにはしっかり呑まれた市街地の残骸が見えているし、触れる事も出来た。一部で言われたような小人化したなんて事は無く、瓦礫も残骸も等身大のままであった。
それなのに、行けども行けども反対の壁には辿り着かず、複数個所から降りた他のグループと合流する事すら叶わなかった。
まさに下りた先は異世界なのか異次元なのか。とにかく不思議なところだった。まあ、数か月もすると慣れたがな。
疑問に思いながらもモンスターを倒し、なぜか瓦礫以外にも落ちている不思議な石を拾い、そうやって活動を続けてきた訳だ。
昔はヒヒイロカネを大量採掘しようと建設機械を下ろそうと試みたりもした。が、不思議な事に斜面を伝って降りることが出来ないものは底へは到達しなかった。人が歩くのがやっとの斜面を走らせようとして事故が起きたりもした。
農業や建設現場で使う産業用モノレールを建設しようともしたが、なぜか数時間で壁に呑み込まれてしまった。瓦礫や残骸はそのままなのに、モンスターや人の亡骸、落とした道具なども数時間で消えていった。
そんな不思議な穴の調査は早々にオカルト化し、変な宗教が生まれたりもしたが、まあ、それが中東や欧州の混乱、騒乱を招き、日本では新興宗教の否定につながった。面白いことに神社は残った。奇跡か偶然か、御神木や護摩が数日以上そこに存在し続けたからだと言われるが、真相は分からない。ああ、十字架や経典の類は数時間で消えるそうだよ。
そんな訳で、人が穴へと下り、人力で背負えるだけしか持ち出す事が出来ない希少な品がそこから採れる訳で、それはもう、大変収入が良いのである。リスクもそれだけ高いが、魔法を得られる特典もあるのだから、多くの人が一度は挑むことになる。ま、一度挑んで辞める例も多々存在し、そう言った人たちが否定や拒否をしていたりもするが、モンスターが湧き出て地上にまで被害をもたらす現実は変えられない。
そんな特性から、穴での活動期間は6時間以内と定められ、10時間以上の滞在は危険とされている。経験上、底なし沼みたいに消えた例は知らないが、魔力面での異常を来すので危険なことには変わりないだろう。
などと大した事件も無く巡回時間が終り、日暮れからしばらくすると交代チームがやって来た。
「第四はトロルが出たので監視を強化する事になりました」
リーダーがそう言い、徳善さんたち常駐メンバーに加え、俺たちも明日の朝まで待機して欲しいとの事だ。
「分かったよ。私らの延長料金は高いよぉ?」
と、おどける金香。
「ひとまず待機所まで帰って腹ごしらえだな」
俺はみんなにそう言い、改札まで帰ることにした。
冒険者と言えば大型モンスターと戦ったり、異界鉱物を採取して高収入を得るってイメージが強いが、それが出来るのは極一部だ。
まずは地上でモンスター討伐や流出監視を行い、そこでスキルを積んで、穴に下りる様になるが、高価値なモンスターと出会うことは少なく、知られた場所で地道に鉱物採取する方が安定した収入になる。
そんな単調な仕事に飽きてしまう奴も多いが、かと言って他の仕事はと言うと、昔の様なサービス業などほとんど壊滅していてありはしない。大半の物資は配給なのだから仕方がない。
「結構使えそうで良かったよ、これなら銃士としてやって行けそうだろう?」
待機所が見えて来たところでそう聞いてみた。
「イケルねぇ。新たな伝説の始まりかぁ?」
と、あまり興味がなさそうな金香。
「術者と射手の良いとこ取りじゃない?さらに戦士や斥候まで出来ちゃう。うん、器用貧乏かな」
水次はちょっと辛辣である。
「背中を任せられて、隣で戦う事も出来る。私は賛成ですよ」
と、まあ、予想通りの犬渕。
「でもさぁ、必殺技持った近接も出来る術者って、マトモな奴が居たためしないし、アメリカみたいにバリバリ撃てない銃士って、大軍相手にどうなのかな」
と言う金香の意見は正しい。弾倉式のレールガンも考えたが、今の段階でそう言う複雑な仕組みは金が嵩むんだよ。
「それはこれから試してみないと分からんが、術者と同等、優秀な射手には劣るってレベルか」
俺自身の予想ではその辺りだ。
「でも、トロルをあっけなく倒しましたよね?」
と、犬渕は言うが、
「ああ、最大威力なら、もっと上のモンスターでもヤれる。が、群棲するゴブリンには手こずる。銃剣使って槍使いの真似事すれば良いだけだがな」
不満顔な犬渕だが、それがコイツの現状だ。リボルバー式と言う事もあるが、熱や残渣魔力なんて問題を考え抜いた末の形状なのだから、そう簡単に解決できる話じゃない。
「ねぇ、しばらく私たちと組むんでしょ?ブチと千疋さんは相性良いし、ソレの戦術試すなら、腕のあるメンバー居ないと下に下りられないし?」
金香がそう言って犬渕を見る。
「そうだな、勝手知ったるメンバーの方が色々試せるし、安心して動ける」
俺がそう言うと、目をキラキラさせ、振られる尻尾が見える様な顔の犬渕が視界に入った。
「そうね。私たちも良い歳だし、周りの目もあるもんね」
色っぽくそういう水次。いや、そっちはどうかなぁ?
「ブチと育休に入るまでは付き合ってあげるよぉ」
と、それ前提で笑う金香。
まだまだ魔動レールガンの性能は確立されちゃいないからな、こいつらが良いなら甘えてみるのも良いだろう。
さて、俺の冒険はこれからだ!と言った処で完結です。
あくまでレールガンを魔法で動かすというテーマから、なぜかカッコイイリボルバーショットガンの画像を見てこのような作品へと至る意味不明な発想になりました。
転生で5万、10万と続けるほどの熱意も無く、現代ファンタジーとしてサクッとショートに仕上げました。
ローファンと言えば、3年前になるのかな?近未来東京を舞台にしたダンジョン物がありましたが、まあ、そんな系統の作品ですよ、コレ。




