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3・おっさん、外れジョブへの転職を疑われる

「冗談ですよね?」


 受付はまったく信じていない。が、それが当然の反応だろう。

 そもそも、日本において対モンスター武器として認められているのは刀剣、弓、魔術杖、槍、斧etc、そこに銃器は無い。

 

 なんとも日本らしい事に、銃刀法の銃器部分に関してはシッカリ今も生きていたりする。なので、銃器免許無しには所持も使用も出来ないし、さらに問題なのが、日本で許可される猟銃ではモンスターを倒しきれない事。


 米国の冒険者は銃器を盛んに使用するが、それは対モンスター用に50口径弾を用いた代物(バレット)だ。いくら対モンスターだと言っても、日本では許可が下りない縦割り縄張り、利権が今でも生きている。


 ただ、仮に入手し、許可が下りたとしても、対モンスター弾は穴から採取した異界鉱物を用いた特殊弾なため、一発千円なんて笑えない話になる。

 それなら弓を用いて矢じりを異界鉱物製にして再利用できるようした方が賢い。


 結果、米国の冒険者はあまり儲からない。盛んに宣伝されてる「儲かる冒険者」は、銃をサブ、メインは槍や斧ってのが常識だよ。テレビの前で銃を格好よく携えてるのは撮影用。


 もちろん、日本で許可が下りる口径の猟銃に対応した対モンスター弾も存在するが、威力が弱く日本の法律上の弾数制限では使い勝手が悪すぎる。猟銃弾の場合、10発は叩き込む必要があるのに5発しか装填出来ないんじゃあ使えないだろ?

 そもそも、そんなライフル銃を所持するにも、モンスターに何の効果もない散弾銃を10年所持した後の話ってんだから、銃士(ガンマン)が外れジョブ以外の何だというのだろうか?


 10年も銃器以外の武器で戦えるなら、弱体な銃器なんざ不要だよな。


 そんな訳で、受付が真面目に受け止めてくれない件。


「ああ、普通なら悪い冗談にしかならないんだが、コレなら別さ」


 そう言って持って来たブツを受付へと見せる。


「変わった剣ですね。まさか、ホムラを売りに出してそんなモノを?」


 もはや呆れている受付が、笑いながら尋ねてくる。


 ホムラとは、オヤジの店へとブツの下取りとして売ったヒヒイロカネ製魔刀の事。20代で手にするには高価な刀だが、俺達のグループはそれだけ稼いでいた訳だ。


「剣じゃなく、ほら」


 俺はブツを操作してシリンダーを取り出した。


「本当に銃器でしたか」


 冒険者センターの受付だけあって一通りの知識はあるらしく、5発シリンダーを見て銃器だと認識している。


「でも、それってライフルや散弾銃じゃ無いですよね?空気銃ですか?」


 おや、気が付いたらしい。


 そうなのだ。日本で許可されるライフルは6ミリ以上、世界的に使われる22口径は所持出来なかったりする。

 まあ、22口径なんて小動物用のライフルなんて、散弾銃があるから許可されなくて当然だが。

 つまり、10ミリを超えるショットシェルや8ミリ前後あるライフル弾に比べ、シリンダーの穴が小さいからそう思うのは当然だ。


「空気銃なんか冒険者にはオモチャにもならんよ。コイツは素材持ち込みでホムラより高いシロモノだよ。しかも、違法ではないが脱法気味のシロモノ」


 もちろん、オヤジと共に警察交えて話し合った結果、「ホール案件はノータッチ」との言質を取り付け、書類も用意させた。まったく抜かりはない。その書類も受付へ提示する。


「マジですかぁ〜」


 書類を目にした受付は顔を引きつらせながらそう言った。


 利用する素材がほぼほぼ異界鉱物とモンスター素材なため、購入や使用に多額の費用を要する。もちろん、犯罪等に使えばすぐに分かるようなシロモノ。

 

「しかも、普通に億単位とかヤバいですね」


 書類をめくる受付が呆れた声で言うが、それはあくまで、コレに関してである。


「ああ、素材から買い集めたらそうなるな。が、コイツを知って我も我もとなった場合、素材採取は競争になるし、需要と供給の事を考えると、注目が集まれば値段はさらに五倍十倍になるだろうな。ホールはそれぞれ獲れる素材も、採れる鉱物も変わる。コレを求めるなら、特定のホールでしか得られない材料を使うから競争になる。そうなれば需要を満たす数はそう簡単に造れない」


 オヤジ曰く、もう作りたくないほど苦労したシロモノだそうで、量産化自体が怪しい。他の生産職が手を出したとしても、かかる手間と時間を考えれば、億の金を積まれても断る事例が出るだろうって話だ。「ホムラを10振り打つ方が楽だ。ソイツ一つにそれ以上の時間がかかる。趣味には良いが、仕事にはしたくないな」

 と、オヤジに言わしめた逸品だ。だからこそ、全国に名の知れたオヤジをして製作に2年を要したのだ。


 その話をすると、さらに顔を引きつらせる受付。


「ハ、ハハハ・・・、そう言う事なら分かりました」


 どこか諦めたように俺の冒険者タグを受け取り、ジョブ変更作業を行ってくれた。


 穴の出現と共に魔法を得た人類だったが、最初は何でも出来るとあって皆が適当に、万能に使っていたが、どうしてもそこには得手不得手があった。日本のとあるベンチャー起業家がその得手不得手がどこから来るのかを調べ、ゲームのようにジョブ化する事を発明し、それが全国へとひろまるまでに約一カ月、その起業家を中心としてジョブ化魔法が編み出され、あれよあれよと冒険者センターと技術センターが出現し、半年もする頃には、もはや現実とゲームの違いが分からない状況になっていた訳だ。


 そして、そのジョブ化によっていくつもの職が誕生し、試行錯誤の末に今の形に収斂していった。


「はい、出来ました。これで千疋さんのジョブは銃士(ガンマン)です」


 そう言ってタグを返してもらう。


 このジョブ化にはメリットデメリットがある。いくら手先が器用だろうと、戦闘職のジョブでは生産職の様に武器や製品の加工製造は難しく、多少不器用だろうと生産職ジョブを得れば並み以上の製品を生み出す事が出来る。

 もはやそれまでの常識が通用しない世界がこうして誕生した訳だが、昔気質な職人にはそれがウケたらしい。


 ちなみに銃士(ガンマン)は遠距離狙撃も近接戦も可能だが、短刀、短剣の扱いは出来ても刀や長剣の扱いでは劣る。例外は銃剣術が可能なので槍を扱えることだろうか。つまり、俺がホムラを持ち続けていても宝の持ち腐れにしかならんという事だ。


  

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