トラブル請負人兼トラブルの発生の元~仕方ないですわだって悪女ですもの~
ある日、隣国のフェア王国から王妃レアとその王子が国にやって来た。
フィミアが話を聞くと──
これでしばらくゆっくりできると考えていると、王宮に突然の来訪者が。
赤い長い髪に青い目の美しい女性と女性と同じ髪と目と幼い男の子。
「フェア王国の王妃のレア様ではないですか、子どもまで抱いてどうしたのです?」
私が問いかけると、レア様はその場でぶわっと涙を流し泣き始めました。
「ママ、泣かないで」
子どもである、王子も不安そうです。
私はとりあえず、城の中の客間へ案内し、夫であるルカード様とともに話を聞くことになりました。
「……あの国王は」
つい最近国王になったフェア国の王子ルドはなんと王妃レア様のお子様ではなく、側妃のカナンとの間に生まれたばかりの子に王位継承権を与え、レア様のお子様には与えず除籍処分にすると言い出したのです。
レアの子は自分の子では無いと言い切り、カナンとの子だけが自分の子と言って居るとのこと。
「レア様、一応聞きますが、その子はルド様との子ですよね?」
「はい、間違いありません!」
「……真実の石はひび割れず、誠のようだ」
「……退いたという元国王に連絡しよう、フィミア君は彼女とその息子を頼む」
「はい、ルカード様」
ルカード様がいなくなると、私は彼女達を連れて国王陛下の元へ行きました。
そして事情を話します。
「……今の国王、元国王の血は引いておらぬぞ」
「はい?」
「聞いた話だが、王妃とその愛人の子らしい、が子どもが生まれなかった王は苦肉の策として王族の血を引くレア、其方と結婚させることで血をつなげようとしていたらしい」
「ということは、平民の側妃との子には……」
「継承権はないな。私も言って〆てくる」
「私達も連れて行ってはいただけないでしょうか?」
「良かろう」
無数のコウモリの足場が出来、レア様と息子様と共に乗り、空をかける。
「父上!」
「ルカード、ちょうど良い」
「おお、真祖様。我が愚息が申し訳ない……」
フェア王国の元国王陛下がいらっしゃった。
「其方が謝るべきは私ではない、この二人だ」
レア様とレア様のお子様を指し示す。
「すまなんだ、本当にすまなんだ……!」
「いいえ」
そう言って扉を開ける。
無数の兵士達が現国王と側妃を捕縛していた。
「何をしている貴様等!」
「それは私の台詞だルド!」
「ち、父上!」
「お前は私と王妃の子ではない! 王妃とその愛人の子だ!」
「な、何をおっしゃるのです父上⁈」
「愛人はのちに処刑したが、お前の処遇に悩んだ。子が生まれぬならば王子扱いをし、王族の血を引くレアと結婚することで王族の血を守ろうとしたのだ」
「そ、そんな! で、でもレアは私との子ではなく別の男との子を──」
「いいえ、レア様の息子は正真正銘貴方とレア様の子よ」
「よし問う、王妃レアよ、其方の息子は国王ルドとの子か」
「はい、勿論です」
真実の石はひび割れず光ったまま。
「では、側妃カナンに問おう、その子は本当にお前と国王ルドの子か?」
「え、ええ本当です!」
真実の石がびきりとひび割れ、光を失う。
ルドの顔色が青ざめる。
「ルド、側妃カナン。貴様等は幽閉じゃ。国王の座には変わりに王妃レアの父フレデリック公爵に代わりについて貰う、レアの息子フィデリカが王になるまでな」
「ち、父上、そんな! お許しを!」
「どこの誰かに分からん噂に翻弄されてレアをないがしろにしたお前の罪は重い! そして側妃、貴様がその噂を流したのだろう自分が王妃になるために!」
「そ、そうよ! 何がいけないの‼⁇」
「カナンよ、やはり貴様は処刑だ! 子どもは孤児院へ! 良いな!」
「いや、いやよ、まだ死にたくない!」
側妃カナンは悲鳴を上げて連れて行かれた。
後日処刑が執行された。
王族を謀った平民の女、と言うことで重い罪だった。
「これで安心ですかね」
「ルカード殿下、フィミア妃殿下」
現国王のフレデリック様が私達に挨拶に来た。
「レアが居なくなったと聞き慌てたものだ、聞いた話では命も狙われていたという。今命を狙っていた者も処分している最中です」
「側妃見目だけはよかったですからね」
「側妃側の連中は全員処刑、王妃レアと息子フィデリカは安心して王宮で暮らせるようになったという訳ですわね」
「本当だ、私の可愛い娘が酷い目に遭わされていたなんて……親として知らなかったことが恥ずかしいよ」
「その分、これから大切にしてあげてくださいませ」
「ああ、そうするとも」
「フィミア様」
「レア様」
レア様が子どもを抱きかかえて近づいてきた。
「貴方様のおかげで我が子も私の名誉も守ることができました、本当に有り難うございます」
「いいえ、行動に移した貴方がいたからこそ、私共も動けたのです。ねぇ、ルカード様」
「ああ、その通りだ。どうかご子息と仲良く暮らして欲しい」
「はい」
レア様は行ってしまわれた、護衛に囲まれて。
まだ安全ではないのだろう、だが、じき安全になるはずだ。
後に、若き賢き王がフェア国に誕生し、実母を聖王妃と祭り、国の発展に尽くすことになるのだが、それはまた、別の話。
「やっと国に戻って参りましたね」
「そうですわね」
「フィミア」
「何でしょうルカード様」
「やはり君は働き過ぎる、それに君は聖女のような存在だ、多くの人を救っている」
「働き過ぎは肯定しますわ、でも私は一部の国では悪女と呼ばれておりますわよ」
「悪女だなんてとんでもない、人材を不遇に扱っていた罰だ!」
「ルカード様……」
本当、なんて優しい御方、美しい御方。
心も体も美しい御方。
そうして日々穏やかにすごしておりました。
が。
「ルカード様!」
「メイフェ?」
城に令嬢らしき人物が訪れました。
反応からすると、幼なじみかそれに相当する方でしょう?
「どうして私と結婚してくださらなかったの⁈」
「メイフェ、私は昔から君をそんな風に見られないと言っただろう」
「あんな人間、すぐしわくちゃの婆になってしまいますわ!」
「……メイフェ、私を怒らせたいのかい?」
ルカード様は静かな声でしたが、侮蔑と怒りに満ちた表情で彼女を見ます。
「なんで、なんで、こんな女──!」
「フィミア‼」
私はかつんとヒールをならします。
すると水の塊が彼女を覆います。
顔だけでている間抜けな姿。
「おてんばなお嬢さんは水でずぶ濡れになるのがお好きと聞きましたので」
「きゅ、吸血鬼殺し! 私を殺したら、お父様とお母様が黙って──」
ルカード様が私を守るように移動しました。
「我が妃を殺そうとしたお前をもはや幼なじみなどとは思わぬ、ただの犯罪者だ」
「そ、ぞんな、ルカード様!」
「だが、わが妃の手を汚すのは忍びない。お前達!」
「「「は!」」」」
近衛兵の方々が姿を現し、メイフェという吸血鬼の令嬢を囲みます。
私は水の魔法を解除しました。
水は無くなり、床に倒れるメイフェという令嬢を近衛兵は連れて行きました。
「ねぇ、ルカード様。どうして貴方は彼女と結婚しなかったの?」
「彼女は我が儘で人から欲しいものは何でも奪おうとする気質だったんだ、相手も公爵ということがあり、奪われる一方、そんな彼女を妃にしてみろ、国が崩壊する」
「そうですわねぇ」
「一方君は我が国に尽くし、発展させてくれている、なにより君は美しい、ありかたも姿も」
「まぁ……」
ルカード様の言葉に少し紅くなってしまいます。
メイフェ令嬢ですが、王子の妃に危害を加えようとしたという罪状で幽閉処分となった。
日の光が入る塔の中で苦しみながら過ごすことになるらしい。
メイフェ令嬢の父である公爵は温情を求めたが、ルカード様が許さなかった。
今までの所業にも加え、今回の事態を重く見て重い罰を与えた。
メイフェ令嬢の父はがっくりと項垂れて帰って行った。
これ以上文句を言うと爵位を取り上げられると思ったのだろう。
それから数日しないうちに、また訪問者が。
「フィミアという娘はどこにいるの⁈」
私を探しています。
「フェル公爵夫人、何用ですか」
出ようかなと思っていたらルカード様が対応なされています。
「ルカード様、何故うちの娘をあのようなむごい罰を与えたのです⁈ 日の塔は吸血鬼が入ったら出られぬ苦痛刑の場所、そんなむごい場所に何故⁈」
日の光は吸血鬼にとって天敵、よほど苦痛なのでしょう。
「貴方の娘が我が妻に危害を加えようとしたからだ、我が妻が魔法に達者だから助かったものの、そうで無ければ大怪我を負っていたかもしれない」
まぁ、確かにそれはありますわ。
「だからと言って……!」
「フェル公爵夫人、あまり文句を言いますと爵位を取り上げることも検討しますよ」
「そんなに、その女がよいのですか」
「ええ、勿論。どの女性よりも美しい心のありようが」
「人間などすぐ死ぬ生き物、そんな生き物に──」
「黙れ」
ルカード様は冷たいまなざしをフェル公爵夫人に向けます。
「今すぐ失せろ、でなくば爵位を取り上げ、家を取り潰す」
「っ……‼」
行ってしまわれました、カツカツとヒールの音が遠のくのが聞こえます。
「ルカード様」
「フィミア!」
ルカード様は驚いた様子でした。
私に気づいていなかったのでしょう。
「聞いていたのかい?」
「ええ、もしかして私この国の吸血鬼の貴族に祝福されておりません?」
「そんなことはない!」
「ですがあのような事態がありました、ならば手は一つ」
「何でしょうか?」
「私を吸血鬼にしてくださいませ」
トラブルに巻き込まれるが自分が悪女と呼ばれるからしゃーないと受け入れているフィミアですが人間だから言われるなら吸血鬼になってやろうと決意をした模様。
解決するのでしょうか?
ここまで読んでくださり有り難うございました!
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