第八話 入学と同時に決闘だなんて…
私を置いて行かないで…。
私たちは、学校から手配された空飛ぶ馬車に乗って1時間程で学校の門の前に到着した。
ここは、英雄学校と呼ばれている学校で、パパやママもこの学校出身らしい。
門の前にはめちゃくちゃ長い階段が続いている。
「うぇ~…。ここ上るのかよ~。」
ヒカリが馬車から降りて早々文句を言った。
「気持ちはわかるケド…。」
私たちは階段を渋々上り始めた。
半分ほど上ったところでふと思った。
…魔法で飛べばよくね?
「トーコさん、魔法で…。」
私はトーコさんに魔法を頼もうとして、隣を見ると、そこには誰もいなかった。
ナオハも、ヒカリも。
「…。」
あ・い・つ・らぁ…。
後で覚えてろよぉ…。
私はまだ階段を上っている人をどんどん抜かして、そのまま3人にタックルをかました。
校舎裏。
「マジでゴメンって…。そんなつもりじゃなかったんだって…。」
私のタックルで体力が半分減ったと思われる3人が私に土下座をしている。
「嫌だ。」
私が冷たく言い放つと、ヒカリは、
「どうすれば許してもらえますか…?」
と、弱々しく言った。
そ~だなぁ~。
私は、3人はこれから私をどこにも置いていかないことを約束させた。
3人は泣きそうになりながら、ごめんよぉ…、と言った。
入学式。
私たちは、制服に着替え、無事入学式に出席した。
「え~、続いて、校長先生の話、ナオヤ先生、お願いします。」
司会の先生がマイクを使って言った。
舞台のそでから、去年の収穫祭で出会った、白髪で所々赤毛と青毛が混じった男性がのぼってきた。
校長先生だったのか…。
「え~…。皆さん、本日はご入学おめでとうございます。これから皆さんは称号を取得するための授業を受けてもらいます。仲間と共に、良職につけるように頑張ってくださいね。」
話終わるの早っ!
前世の学校の校長先生の話は10分以上はあったからなぁ。
めっちゃ短い。
彼は素晴らしい校長先生なんだろう。
その後は、カミサマからのありがた~いお言葉やらなんやらがあったらしいが、私はすっかり寝落ちしてしまった。
ヒカリに起こされるまで、爆睡していました(笑)。
入学式が終わって、トーコさんと寮へ向かっていた。
荷物は既に部屋に置いてあるらしく、手ぶらである。
「ふぁ~…。眠いよぉ…。」
「ふふふっ、さっき散々寝てたじゃない。」
「だって話長いんだも~ん!」
と、話していると、カッっと靴を鳴らして、一人の少女が曲がり角から出てきた。
リボンの色が赤色なので、私たちと同じ新入生だということが、伺える。
「あ、こんにちはー。」
私たちは普通に挨拶をして、その場を立ち去ろうとした。
しかし、
「待ちなさい。」
その少女は私たちに話しかけてきた。
「な、何ですか?」
「アンタたち、さっきまでの様子、見てたわよ!」
長い金髪に、赤色のキツイ印象の瞳。
右手を腰に当て、左手でビシィッと私たちを指さしている姿は、小学生のメンドクサイ女子だった。
…せっかく綺麗な顔なのに、言動のせいで台無しという、残念な女子だ。
「セント・ウォム様のお言葉を聞きながら眠るなんて!」
彼女の両手がわなわなと震えている。
…そんなこと言われても…。
「決闘を申し込むわ!」
ビシィッと、右手の人差し指を私に向けて言った。
「決闘?」
「そうよ!この学校では、決闘によって全ての物事を決めるのよ!」
すると、何処からともなく「決闘委員会」というプレートを着けた生徒が2人現れた。
1人は緑色のネクタイ(2年生)の少年、もう1人は青色のリボン(5年生)の少女だ。
この学校は、基本的に3年間で習得を終え、卒業するのだが、称号の内容によって、長いと8年間かかるらしい。(入学は11歳以上から。)
「決闘委員会の方々も来たわけだし、戦うの?戦わないの?」
なんか、面白そうだしやってみるか。
「いいよ。」
「両者の合意を確認!委員会室に転移します!」
うわっ。
びっくりした、急におっきい声出すなよぉ。
私と少女の足元に青色の魔法陣が浮かび上がった。
そして、魔法陣が光始めた。
気が付くと、私と少女は小さい部屋に立っていた。
「では、2人とも、宣誓を。この紙に書いてあることを。」
私と少女の間に、委員長と書かれたプレートを着けた男子生徒が言った。
紙には、なんか魔法やスキルの使用はオッケーだけど、やりすぎないでね、みたいなことが書かれていた。
しかも紙には、幼稚園のお手紙みたいな可愛らしい花の模様が描かれていた。
…決闘をやる雰囲気の紙ではなくない?
「宣誓?」
「フンッ。こう言うのよ。我、レオナ・クウェルソン、この契約に従うことをここに誓う。」
ドヤ顔で言った。
「えーっと、我、アヤノ・ドラティリガン、この契約に従うことをここに誓う。…これでいいの?」
なんだか、簡単だなぁ。
まあ、少女改め、レオナちゃんも私たちも、7歳のちびっ子だしね。
難しいことはわかんないよね。
「両者宣誓完了!勝負は明日の午前1時!それまで、各自準備を整えてください。」
委員長がそう言うと、また魔法陣が現れ、もと居た場所に戻された。
「逃げるんじゃないわよ。宣誓したんだからね。」
レオナちゃんはそう言って、また出てきた曲がり角に消えていった。
「…一体何なんだ…。」
私がつぶやくと、トーコさんが私の肩に手を乗せて、
「目をつけられちゃったね。」
と、言った。
うぅ…。
ピンポンパンポーン♪
と、軽い音がして放送が流れ始めた。
『校内放送入ります。えーっと、決闘委員会より、明日午前1時、第1決闘場にて新入生対新入生の決闘が行われます。競技者の名前は明日公表いたします。』
ピンポンパンポーン♪
「…。」
「…。」
校内放送かけるんかい。
「ガンバ♪」
トーコさんが苦笑いしながら言った。
うぅ…。
「頑張りましゅ~…。」
噛んだ。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。