第七話 転生者と学校
「転生者だなんて聞いてないよ!」
…
「学校に行くの楽しみー!」
収穫祭から、何日か経った頃。
ナオハに教えて貰った、ステータスの強化方法を試して私たちが帰って来ると、パパが私たち4人を書斎に呼び出してきた。
書斎の入り口のドアをしっかり閉めて切り出した。
「女神様たちから聞いたよ。4人とも、ドラティリガン王国の救世主として転生したんだね。」
「うん。」
トーコさんがうなずいた。
パパはそうか、と呟いて話し始めた。
「この前、女神様に聞いてみたら…。」
「王様の子供たちが転生者って、本当ですか!?」
僕が、女神神殿に入ると、女神様はソファに寝っ転がって聖典を読んでいた。
『ん~?どったのサーヤ?』
(サーヤは、スリンキーの最初のSと最後のY発音で作った僕のニックネームだ。)
…なんか、前会った時と雰囲気というか、なんか違う…。
前会った時はなんか、すごい孤高の女神って、感じだったのに…。
残念な女神様だなぁ…。
『おや、これは、これは。スリンキー様。』
神殿の奥のドアからオアキュリアンが入って来た。
「あぁ、僕達が預かっている王様の子供たちが、転生者って…。」
僕がそう切り出すと、女神様は、
『あぁ、うん。ドラティリガン王国の原動力の石を守ってもらおうと思ってね。』
と、言った。
「僕もいるし、先生だっているじゃないですか!またいろんな人を巻き込むなんて…。」
『いや、あの4人は、元々サーヤの言う、先生たちの仲間だよ。この世界を救う権利がある。世界の漂流者だからね。』
「…。一体、世界の漂流者というのは…。」
女神様は読んでいた本をしまって、別の本を本の山から取り出した。
そして、パラパラとめくって僕にそのページを見せてきた。
そこには、以下のように書かれていた。
[世界の漂流者]
全ての世界で生まれる魂の総称。
普通の生物の魂は、同じ世界で生まれ変わり、他世界に干渉することはできない。
普通の生物と何ら変わりないが、特別な能力を秘めやすい。
なお、生まれ変わる度に、記憶はリセットされ、神々の力を受けなければ記憶は復活しない。
記憶の復活により、人格に影響を及ぼす場合がある。
しかし、その分知識が増える。
「4人は、前世の記憶を全て取り戻したいかい?」
パパは私たちに聞いた。
私は少し考えて言った。
「私はいいや。私は私のままがいいから。」
そして、他の3人も頷いた。
「そうか…。僕もそれがいいと思う。」
4人との話が終わり、4人が退出した後。
僕は机の引き出しを引いて、あるものを取り出した。
藍色のモノクルと、銀色のネックレスチェーンだ。
そして、ナオハたちが持っていた原動力の石を、ネックレスチェーンに取り付けた。
「…15歳に…、15歳になったら、…。」
この会話から、更に4年が経ち、私たちは10歳に、ユリエお姉ちゃんは14歳になった。
「称号選択?」
朝食のとき、ママが旅に必要なものを説明していた。
「えぇ。この世界では、称号を学校に入って決めるの。」
そう言って、称号の一覧表を見せてくれた。
「ちなみに、私は魔法使いと剣士の称号をつい先月修得したよ。」
お姉ちゃんが言った。
「うん、だからお姉ちゃんは、侍とか、魔法剣士とか、剣魔導士とか、いろんな職業につけるよ。」
まとめると、称号とは元の世界でいう、免許のようなものらしい。
というか、ステータスカードの一覧にあった気が。
<称号一覧>
・魔法使い…属性魔法や上級魔法を使用できる。
・剣士…強化剣技を習得できる。
・司書…本を媒体にした最上級魔法や、禁書庫と呼ばれる場所に行ける。
・霊媒師…地上に漂っている霊や、魂の欠片を媒体に能力を使える。
・保護管…忍びのスキルや、スピードが高くなる。
…など。
私はほとんどの魔法を習っていないし、魔力もそこまで高くないので、剣士と保護管の称号に決めた。
「成人してからも、その称号の人から習えば取得できるから、気軽に決めてね。」
と、ママも言っていることだし。
トーコさんやナオハ、ヒカリもそーゆー事なら、とあっさり称号を決めた。
トーコさんは霊媒師と司書を選んだ。
ナオハは司書と魔法使い、科学者という称号を選んだ。
ヒカリは魔法使いと戦士を選んだ。
「それぞれの専門学校に通うことになるけど、大丈夫か?」
パパが聞いてきた。
「うん!大丈夫!」
と、私たちは元気に返事をした。
「えぇ~!ナオハたちとまた3年間も離れ離れ~?!」
「こらこら、お姉ちゃんは次期村長なんだから、そのお勉強をしなきゃ。」
「うぅ~…。ナオハ、ヒカリ、アヤノ、トーコ、頑張ってね…。お姉ちゃんも頑張るから…。」
「うん!」
その後、入学までの1年間パパやママ、叔母さんやナオヤさんたちの指導のもと、入学に備えてみっちり鍛錬をした。
そして、入学式当日、パパが私たち4人に綺麗な石がはめ込まれたネックレスを渡してくれた。
「このネックレスには、原動力の石がはめ込まれているから、肌身離さず身に着けておくんだよ。」
御守り的な感じかと思ったんだけど、そうではないらしい。
お姉ちゃんは村長候補の証らしい、モノクルを貰っていた。
「みんな、誰かにいじめられたりしたら、手紙で教えてね!」
と、ちょっと涙ぐみなら言った。
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。」
「じゃあ…、いってらっしゃい!」
ママが手を振って言った。
私たちは頷いて、元気よく言った。
「「「「行ってきます!!!!!」」」」
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
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