第四話 家族について、知りました
「お母さんとお父さんはどうなったんだろう…」
朝、私が起きるといつもと違う部屋だった。
全体的に木でできていて、THE・ファンタジーの部屋って感じだ。
…あぁ、そうだった私たち転生して…。
これまでのことを思い出して、私は小さな自分の手のひらをみつめた。
私たちは今まだ2歳にもならない赤ちゃんになっていた。
横を見ると、私と一緒に転生した親友3人が私と同じようにベビーベッドの上に座っていた。
みんな前世と顔立ちは少し違うけど、雰囲気が全く同じで、一目で私の親友だと分かった。
…にしても、どうやら私たちは四つ子になってしまったらしい。
きぃ、と音が鳴って木製のドアから茶髪のロングヘアの私たちの今世のお母さんと同じくらいの年齢の女性が入ってきた。
「…ー!…!」
…おとなしそうな見た目なのに、どうやら活発な女性のようだ。
そして、女性の声を聞きつけたのか、更に2人が入室して来た。
1人は黒髪で犬(狸?)のような耳とエルフのような長い耳の男性だった。
ぱっと見、亜人とエルフのハーフのようだ。
もう1人はこげ茶色の髪に男性と同じような四つの耳の4歳か5歳くらいの女の子だ。
雰囲気からして、この3人は家族なのだろう。
…そして、私たちのお母さんとお父さんの代わりなのだろうか?
なんとなく、2人の会話の調子から、私たち4人を育てるのは、前から決まっていたらしく、2人とも乗り気らしい。
私たちがこの家に来てから一年が経った頃。
私たちはもうパパとママ(黒髪の男性と茶髪の女性のことだ。尚、2人のことはそう呼んでる。)たちの話す言葉を話せるようになっていた。
「パパ~」
とたとたと、私たちとパパがいる部屋にパパたちの子供、ユリエお姉ちゃんが入ってきた。
「ん~?どうした、ユリエ?」
パパがユリエの方を向いて言った。
「あのね、さっき風魔法つかえるようになったのー!!」
エルフの長い耳と狸のようなケモ耳をピコピコ動かしながら、ユリエお姉ちゃんが嬉しそうに言った。
「おぉ~!すごいじゃないか!」
ナオハが座っていた椅子から身を乗り出して、
「姉さんすごーい!!」
と、言った。
「ふっふ~ん♪ナオハたちも、すぐにできるようになるわよ!」
弟に褒められて、ユリエお姉ちゃんは嬉しそうだ。
元女子高校生の私から見ると、やっぱりユリエお姉ちゃんは可愛い…!
ユリエが四つ子たちに、風魔法を披露しているのを、僕ー…スリンキーが微笑ましく眺めていると。
「パパ~、ユリエ~ちょっとお料理運ぶの手伝って~!」
台所から、いつまでも可愛らしい声が聞こえてきた。
「は~い!アヤノ、ナオハ、トーコ、ヒカリ。おねえちゃんはママのおてつだいをしてくるからね。いい子にしてるんですよ?」
「あ~い!」「うん。」「は~い!」「わかった~!」
やっぱり、うちの子と王様の子供は可愛いなぁ~!
5人の会話を微笑ましく眺めていると、
「早く~!」
と、催促されてしまった。
パパとユリエお姉ちゃんとママが夕ご飯のボルシチをこぼさないように慎重に運んできた。
ボルシチがわからない人に説明すると。
ボルシチとは私たちの世界では、ウクライナやロシアの伝統料理で、酸味のあるビーツをもとにした、鮮やかな深紅色をしたスープ料理のことです!(ビシィ!!)
私は前世でも、たまにお母さんやおばあちゃんが作ってくれて、私もよく作った料理なので、結構好きな料理だ。
次の日。
今日は私たちの世界でいう、9月8日だ。(こちらの世界では、赤.小潮というらしい。)
つまり今日は、このフーリン村のなんか記念の収穫祭があるらしい。
何が言いたいかというと、今日は家にママもパパもユリエお姉ちゃんもいいない。
つまり、今のうちにこの世界のことを4人で調べられるのだー!
…と、思ったんだけど、フミナ叔母さんが、パパたちの代わりに私たちの世話をすることになっていた。
うー…そーだよねー、まだ私たち2歳だもんねー…。
「ヤッホー!みんな元気ー!?フミナ叔母さんだよー!!」
あー…。
この人もママと同じタイプだ…。
エルフみたいな長い耳に、白髪の長い髪で、とても綺麗な顔立ちだ。
叔母さんに聞いてみると、叔母さんはカチーナという、精霊らしい。
そして、パパはエルフと亜人のハーフで、カチーナとは違う種族らしい。
また、この国はドラティリガン王国の隣国のフェルトナ王国らしい。
「そして、こんにちは、アヤノさん、ヒカリさん、トーコさん、ナオハさん。」
叔母さんの声の調子が、まるで大人と話すような声だ。
「おばさん…?」
ナオハが小さい子特有のしたっ足らずな口調で聞くと。
「あー。そっか、私達カチーナは女神セント・ウォム様の使い魔みたいなものだから…。」
叔母さんはセントさんにそっくりな声と瞳で言った。
「…」
私たちが声を出せないでいると、叔母さんは「一回聞いて?」と言って、話し始めた。
この世界はOverと呼ばれる世界で、魔法やレベル、スキルなんかもあるらしい。
そして、私たちの今世のお父さんがドラティリガン王国の国王らしい。
もうすでにドラティリガン王国は異界人の「むろびな」という称号を持つ者たちの敵勢力に攻め落とされしまった。
しかし、4つある、原動力の石は私たちがそれぞれ1つずつ持っているため当分は無事である。
よって、原動力の石さえ守れれば、セントさんたちの依頼は達成である。
「では、お父様やお母様たちは…?」
トーコさんがおずおずと言った。
「現在、叔母さんたちの仲間が行方を捜索しているのだけど…。敵が王たちと共に煙のように消えてしまったの。だから、彼らの行方はわからないの…。ごめんなさい…。」
私たちは啞然としてしまった。
お父さんとお母さんが私たちが助けるべきだった、ドラティリガン王国の王様…?
「どっちにしろ、母さんと父さんは助けないとだな。」
ヒカリがそう言うと、ナオハも頷いた。
「で・も!みんなまだこの世界では2歳だから、無茶しないでね。」
「うん。」「はーい。」
私たちが元気よく返事をすると、叔母さんは頷いて、ニッコリと笑った。
そして、私はなんだか眠くなってしまい、そのまま隣に座っていたナオハに倒れこむようにして眠りについた。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
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