第二話 神様に会いました
まさか神様に会うなんて。
…異世界転生なら当然か…。
気がつくと、私、文乃は知らない場所に立っていた。
頭上には、きれいな青い空が広がっていて、足元は…
「水面?」
私は水面に立っていた。
有り得ない現象に戸惑っていると、後ろから声が聞こえた。
「え~っと…どこここ?」
「みんな無事だったか!」
振り向くと、さっき一緒に家の下敷きになった私の親友、
黒髪の少年、直刃と、白髪の少年、光、
そして長い黒髪の少女ー…に見える女性、燈子さんが立っていた。
「みんな!」
私は思わず声を上げた。
「や。さっきぶり。」
直刃はまるでさっき自分たちが、死んだことなんてなかったかのように、のほほんと言った。
「ここってどこなんだろうねー。」
燈子さんものんびりと言った。
「そういえば、あの女の子どうなったんだろな?」
光が私たちの状況を特に気にした様子もなく呟いた。
『あなた方が助けた幼女はーあなた方のおかげで打撲だけで済みましたよー。』
間延びした幼い少女のような声が聞こえた。
「なんだこの声?」
光が言った。
ふいに、空の雲がサアっと消えた。
そして、私たちの目の前に白色のワンピースのようなものを着た美少女と、赤いスーツを着たハンサムな男性が立っていた。
…紅白歌合戦かな?
『今、お主凄く失礼なこと考えたじゃろ。』
赤い男性が私に言った。
「い、いえ…何も…。」
私はちょっとびっくりして言葉に詰まってしまった。
『まあいいじゃろう。さて本題だ。』
『結論から申し上げますとー、あなた方は死にましたー。』
「うん。」「何となくわかってましたよ?」
『あらー、察しがよろしいんですねー。』
「…というかこんなのテンプレじゃないですか?」
私は中学生の時に読み漁った小説の内容を思い出して言った。
「それで…僕たちはこれからどうなるんです?」
「というか私たちの自己紹介を…」
真面目な燈子さんが言った。
『あー。あなた方の個人情報は粗方知っていますよー。
むしろー、私たちが自己紹介をしなくてはなりませんねー。
私はー、女神 セント・ウォム、と申しますー。』
『吾輩は魔神、オアキュリアンである。
お主らにはこれから、ドラティリガンという、国を救って欲しいんじゃ。』
「国…ですか…?」
「そうゆうのって神様みたいのは干渉できないのでは…?」
頭に?を浮かべながら、私たちは言った。
『普通はそうなのですがー…。あの国には原動力の石が置いてありましてー…。
原動力の石というのはー、世界とー世界をー、繋ぐ装置のような役割なのですがー…。』
「要はその石が見つかると他の世界を侵略してしまうかもしれない。」
「だから、その…ドラティリガンっていう国を救って欲しいと…。」
光と直刃が交互に言う。
『うむ。そうじゃ。しかし、普通は他世界からデータ…もとい魂を持ってくることは出来ん。
だが、ある条件を満たせばできる。』
『それの一つがー、ゲートを通るということですー。
私たちはあなた方の地域にー地震予報というー、普通ならばー、誰も信じない予報を出してー、
神社にあるー、この世界のゲートの所まで誰かを誘導しようとしましたー。』
「それで、引っかかったのが私たち、と。」
私が言うと、セント・ウォムさん(様?)は視線を落して言った。
『はいー。でもー、4人も来るのは想定外でしたー。
しかもー、すぐに死んでしまうなんてー…。』
『情けないのぅ。
しかしもう一つの条件である良いことをして死ぬ、ということをしてこの世界にこれたのだから、まあ、良しとしよう。』
いやいや、アンタはどこの王様だよっ!
あー、ということは。
「えーっと、…セントさん?たちが私たちを殺したわけではない、と…?」
『はいー。私たちはあくまでもー、世界の均衡を保たなければならない立場なのですー。
なのでー、均衡を保つためにー、他世界の均衡を壊すことはできませんー。』
『つまりまあ、お主らの運が悪かったのじゃろう。』
オアキュリアンさんが私たちを憐れむように、オレンジ色の瞳を私たちに向けてきた。
『それでー…。引き受けて頂けますかー?
勿論ー、あなた方のステータスはー、底上げさせていただきますがー…。』
「勿論引き受けますよ。」「もう死んでしまったしねぇ。」
「よろしくお願いします。」「うん。引き受けます。」
私たち4人はそれぞれ引き受ける、と言った。
『良かったー…。断られたらどうしようかとー…。』
『ふん。まああのような幼子一人に命をかけるような人間だしの。
断るわけないと思っていたぞ。』
セントさんは本当に、心の底からほっとしたように言った。
…実は以前に断られたことがあったのかもしれない。
まあ、やろうとしてたこと誘拐と同じだしね。
「それで…いつ転生するんですか?」
光が言った。
『はいー。そろそろー、準備ができるところだと思いますー。リアンー?』
『大丈夫じゃ。後は、カオスワードを打ち込めば良いぞ。』
『ではー、皆さんー、ドラティリガン王国をー、よろしくお願いしますー。』
そう言って、セントさんは何かの呪文のようなものを唱えた。
そして、私たちは温かな光につつまれ、ここではないどこかへ消えた。
『さて、私たちはどうしましょうか?』
セント・ウォムが先ほどとは打って変わって大人のような口調で言った。
他の人と話す時はいつものように間延びした口調で話をするのだが、オアキュリアンなど仕事仲間(他の神たち)と話すときはお仕事モードで話すのが、セント・ウォムのやり方である。
セント・ウォムはこのやり方が世界一かっこいいと思っているらしい。
(転生者たちにも同じように話した方が良いと思うだが、当の本人はそうは思っていないらしい。)
『あ奴らなら大丈夫じゃろう。まあ、貴女の武器を渡してやったらいいじゃろ?』
『確かにそうですね。むろびなには彼らはなれませんが…。
何しろ敵は強大ですし。万全は期したいですから。』
そう言って、鳥の翼の形をしたキーホルダーを取り出した。
『一応、このことはカチーナの皆に報告しておきます。』
そう言って、セント・ウォムはキーホルダーに向かって話し始めた。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。