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救国の転生四つ子(18)

セントさんから女神の武器をもらった私たちはまたエコ先生の魔法で、校長室に戻ってきた。

セントさんと分かれて校長室に戻ってくると、暇を持て余したダズリーとシルビアさんが校長室の真ん中にある大きいソファーにぼーっと座っていた。

「ただいまー。」

私が声をかけると、やっとか、という目を2人に向けられた。

「2人にはお土産があるよ。」

エコ先生がダズリーとシルビアさんに何か宝石のような群青色に輝く握りこぶしくらいの大きさの星のような形をした石を渡した。

「これは…?」

ダズリーが宝石を見つめながら言った。

「それは女神の星よ。英傑の証。」

「英傑…。」


この世界の英傑についての逸話は数多くある。

例えば、ティテラ学園があるこのフェルトナ王国はドラゴンオーブを持ったドラゴンヒーローと、女神の星を持つ英傑が建てた国と言われている。

その英傑は世界を崩壊させようとした悪魔の王を倒して、その功績を讃えて各国からの褒美として土地やら財宝やらをもらい、この国を建てたらしい。

他には奴隷制度のあったウィロードロッド帝国の制度改革をして、奴隷を解放した英傑もいたらしい。


「そうよ。なおほびを手助けする役目の人、ガーディアンとも言われているわ。」

シルビアさんがキラキラした瞳で、女神の星を両手に持って眺めていた。

「これから、あなたたちは通常の授業ではなく、聖者の授業を受けて貰うわ。」

エコ先生はそう言うと、手をパンパンと叩いた。

すると廊下の外で待機していたのか、魔法使いの授業の鳥の翼のカチーナの先生と、夕焼けのような赤色の髪に、優しそうな眼差しの先生が校長室に入って来た。

「紹介するわ。こっちのカチーナの先生は1年生の魔法使いの授業担当のハナビ先生。赤髪の先生が2年生保護管の授業担当のレッド先生よ。」

「よろしくね。」「よろしく!」

2人の先生がそれぞれ言った。

「「「「「よろしくお願いします。」」」」」


一方、ナオハは、校長先生と1時間前のむろびなの隠れ家に来ていた。


「それじゃあ、ナオハには時間移動の魔法を使いこなしてもらおうか。まずは普通の移動魔法と同じように自分が行きたい場所を正確に思い浮かべて。あそこの牢屋にしようか。」

僕は目を閉じて校長先生が指さした毛皮が床に敷かれ、格子が錆びてボロボロになっている牢屋を頭に浮かべた。

「はい。思い浮かべました。」

「そしたら次は女神様がいた空間にある銀色の時計を思い浮かべて。」

僕は銀色のフレームにこの世界の数字が刻まれた時計をイメージした。

「その時計の長針を一周戻して、呪文を唱えてみて。」

『古代魔法・時空転移』


唱えたとたん、僕はさっきの校長先生によって転移したときよりも激しく自分の身体が解けていくのを感じた。

痛みはないが、めまいがした。

自分の体が砂のように崩れていく。


少しして、ようやく焦点があうと僕は毛皮が床に敷かれ、格子が錆びてボロボロになっている牢屋の中に立っていた。

さっきまで校長先生と立っていた場所には人がいた形跡がなくなっていた。

どうやら時間を遡ることに成功したらしい。

しばらく先生が来るまでその牢屋で待機していると、さっき見た背が低い腰の曲がった男が酒を飲んで騒いでいた男たちを引き連れて奥の扉から入って来た。

男たちは全員どす黒くさび付いた斧やら剣やらを持ってヘラヘラと笑っていた。

…酒を飲みすぎたのだろう。

男たちはミネハとアリサがいる牢屋に向かって歩いていた。

僕は3発、魔力の塊を最後尾にいた男に打ち込んだ。

男は後方に吹っ飛んで壁に激突し、失神した。

「誰だ!」

背の低い、むろびなの幹部と話していた男が叫んだ。

「隠蔽魔法か何かだな?お前ら武器を振り回せ!」

…そんなことしても当たらないけどな。

男たちがワーワー言いながら武器を振り回しているとシルビアさんとトーコが階段から降りてきた。

だが、2人も僕と同じように存在隠蔽の魔法がかかっているため、男たちには見えていない。

しかし、一人の男が酒に酔って手元が狂ったのか、ミネハとアリサが入れられている牢屋の格子を粉砕してしまった。

さらに勢いが止められなかったのか、そのままミネハに斧が当たりそうになる。

「危ない!」

シルビアさんは隠蔽魔法を自ら解いて、黒っぽい炎のようなものを斧に当てて起動をずらした。

…やりますねえ。

「いたぞ!」

数人の男がシルビアさんに気づいて叫んだ。

一人の男がダガーをさっきの攻撃で動きが止まってしまったシルビアさんに投げつけた。

今度はトーコが濃い紫の壁のようなものを出現させてダガーを飲み込んだ。

「まだいたのか!」

「まて!猫の耳の方、髪色が雲色だ!殺さず生け捕りにしろ!」

背の低い男が叫ぶが、他の男の耳には入っていないようだった。

男たちが雨あられと武器を投げつけ、2人を殺そうと迫ってきた。

2人は(名前は後で知ったのだが)霊媒術の反動で動けないらしく、動きが止まってしまっていた。

『サモン・シールド』

僕は簡単に呪文を省略して唱えた。

すると僕の右手に白地に青く縁取りがされた僕の背丈と同じくらいの盾が現れた。

隠蔽魔法を解除し、2人の前に飛び出して投擲された武器を受け止めた。

「ナオハ!?なんでこっちに!?」

トーコがびっくりして叫んだ。

そうか、2時間前の2人だから事情を知らないんだ。

「説明は後だ!今は目の前の敵に集中しろ!」

僕は二人に言って『サモン・ソード』と唱えて、青色に光る剣を僕たちの右手に出現させた。

とりあえず武器を出したが、あいにく僕は剣はそんなに得意じゃない。

この世界ではスキルがあるらしいが、僕は魔法しか使えない。

剣のスキルが使えたら少しは違ったのだろうが…。

トーコは一つだけスキルが使えるが、この狭い空間じゃ使えない。

どうしたものかと、考えながら剣を振るうと、シルビアさんが叫んだ。

「剣ありがとうございます! スキル・剣呪壱式!」

すると、青色に光っていた剣が黒っぽい炎のようなものを纏った。

「シルビアさんスキル使えたのね!」

トーコが関心したように言った。


スキルは他人から学んで修得できるようなものではなく、本人の資質によって使えるようになる。

魔法との違いは魔法は他人から学べば使えるようになる。


シルビアさんが力のこもっていないヘロヘロの剣さばきで男の一人の胴体に剣を当てると、男はその場に崩れ落ちた。

男は顔面蒼白で、何かに怯えているような表情になっていた。

そしてそのまま動かない。

「これがスキルの呪い?」

トーコが聞くと、シルビアさんが大きく頷いた。

「壱式は相手を金縛りにする呪いになっています。」

どうやら男は金縛りになっているようだ。

似たような魔法はあるが、せいぜい10分程度しかかけられない。

「呪いの継続時間は?」

僕が聞くと、シルビアさんは別の男の足に剣を当てて言った。

「私が解くまでずっとです!」

「そりゃすごい!」

僕は思わず言った。

「じゃあトーコ!シルビアさんの援護をするぞ!」

「うん!」

僕は剣を消してさらに盾を出した。

2人には援護魔法をかけて防御力を上げた。

男の一人が振りかぶってシルビアさんに斧の強烈な一撃っぽいものをくらわせようとしていた。

『デルパソーラ!』

僕は退け呪文を発動させて二人の近くから男たちを離した。

二人の近くにいた男たちは後方に吹っ飛んだ。

だが最初に失神させた男と違い、しっかり受け身をとってきた。

「げへへへww」

…笑い方きっしょ。

やっぱりこいつらは酒に酔っているようだった。

足取りもおぼつかず、次々とシルビアさんの呪いの剣の前にひれ伏していく形となった。

僕は盾を構えなおして、ミネハとアリサの二人を守る位置まで走った。

「何なんだ、この子供たちは…!」

男の一人が焦ったように叫んだ。

流石に酔いもさめてしまったようだ。

ここで何か名乗れたらかっこよかったのだろうが、生憎名乗るような称号は持ち合わせていない。

…いや、そういや…。

僕はいつの間にか一人になってしまった幹部と話していた男に近づいて言った。

「他にも誘拐している集団はあるのか?」

僕は男の襟を掴んで、顔を引き寄せて言った。

「ぐ…。な、何故お前らのような餓鬼に…。」

「俺はなおほびだ。」

「!こ、こんな餓鬼が…?」

男の表情が苛立ちから恐れに変わった。

「だ、だが知らん!わしらはただ言われた人間や魔物を捕まえていただけだ!」

「そうか。」

俺は、いや僕は男たちを近くにあった縄で縛っているトーコ達の方へ踵を返した。


「やあ。」

男たちを全員縛り終えてから数分後。

トーコたちをアヤノたちがいる部屋に返したあと。

どこからともなく、校長先生が現れた。

「おー、流石。期待道理だよ、ナオハ。」

「ありがとうございます。」

「じゃあ、こいつらを学校まで運ぼうか。」

「はい。」

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