救国の転生四つ子(19)
僕たちは盗賊たちを捕まえて、校長先生に連れられてとある木造の豪邸の前に立っていた。
僕は校長先生に連れられて、どこかの小さな木造の家の中に居る。
「ここは?」
僕が聞くと、校長先生が言った。
「俺の家だよ。しばらくこいつらはここに閉じ込めておこう。」
先生は重そうな木造建築には不似合いな重そうな鉄の観音開きの扉を開けた。
ゴゴゴゴ…
重そうな音を立てて扉が内側に向かって開いた。
僕たちの後ろにいた男たちは部屋の中をのぞいて、ヒッと声を上げた。
部屋の中には凶暴そうな大型犬くらいのサイズの怪物が、箒と塵取りを持って部屋を掃除していた。
二足歩行で立っていて、2本の青く光る角と大きな口、さらには全身が深い青色の毛で覆われている。
いかにもモンスターなそいつは部屋の掃除をしていた。
なんとも不気味な絵面である。
「ウォン。」
先生が怪物に向かって呼びかけた。
「ナオ!」
怪物は見た目に反して可愛らしい声で言った。
すると次の瞬間、怪物は青い煙に巻かれ見えなくなったと思うと、そこには青色のワンピースを着た中学生くらいの少女が、白い三角巾を頭につけ、魔法使いが使うような空飛ぶ箒みたいな大きな箒と、これまた大きな塵取りを両手で持って立っていた。
男たちはヘナヘナとその場に座り込んでしまった。
男たちを部屋に閉じ込めたあと、僕は客室に案内された。
「さて、紹介が遅れてしまったが、娘のウォーキンスだ。」
校長先生がそう言うと、ウォーキンスちゃんはぺこりと長く美しい髪を揺らしながらお辞儀をした。
「ナオハです。よろしくお願いします。」
僕もそれに倣って自己紹介をした。
娘って…、どう考えてもこの子、モンスターだよな…。
「どうしてモンスターの娘がいるのかって顔してるね。」
「え、あ、はい…。」
校長先生はゆっくりと語り出した。
どのような経緯で、モンスターの娘を授かったのかということを。
俺はクラスメイトと弟ととあるRPGをやっていたんだ。
そして前話した通り、1人が変なボタンを見つけて押して、この世界に飛ばされたんだ。
なぜか、その時一緒にプレイしていなかった、中学のクラスメイト全員と一緒にな。
そこで初めて女神に会って、スキルを選ばせて貰った。
最初この世界に入った時は、ここはゲームの中の世界かと思ったんだ。
でも実際は、全く別の並行世界に来てしまったらしい、ということをカチーナの人たちから聞いて知った。
その後、俺は仲のいいクラスメイトと、この世界の崩壊の元凶であるとされた邪神討伐の旅に出た。
その途中、オークの群れに囲まれていた商人の荷車を助けたんだ。
サカイ商会っていう、俺たちのクラスメイトの1人で、商才のスキルをとったやつが早々つくってた商会だったんだ。
そこで俺たちは積荷の箱を一つ譲って貰ったんだ。
「んで、その中に入っていた卵からウォンが生まれたんだ。」
「左様ですか。」
校長先生は優しく微笑みながらウォーキンスさんの頭を撫でた。
ウォーキンスさんは目が見えないのか、ずっと目を閉じたままだ。
「そうそう、ナオハ。君に見せたいものがあってここに来たんだ。」
校長先生はウォーキンスさんを左肩に乗せると、立ち上がって言った。
「見せたいもの?」
先生の後についていくと、そこには無数の墓があった。
肝試しに行くような寂れた墓地ではなく、手入れが行き届き、木漏れ日が死者を慰めるように墓を照らしていた。
幻想的な風景が広がっていた。
墓石は全て青色の魔石でできていて、名前が彫られている。
この世界の文字のものもあれば、日本語で書かれているものもあった。
先生は更に奥へと進んでいた。
そこは寺院のような場所で、ここの近くの墓はヒビが入っていたり、ボロボロにかけていたりしていた。
寺院も所々崩れていて、青々とした苔や蔦がのびのびとしていた。
「これだよ。」
そう言って、先生は立ち止まった。
そこには一本の刀が鎮座していた。
刀は薄青く光を放っていて、その周囲がひどく冷たかった。
「これは…?」
「初代勇者が使っていた刀だよ。」
「初代?」
「今代の勇者は208代目と209代目だね。さっきエコから連絡が来た。アヤノが炎の勇者、ヒカリが光の勇者に選ばれたらしい。」
先生がステータスカードと似たようなカードをスクロールしながら言った。
「ナオ、アヤノとヒカリってあのアヤノとヒカリ?」
先生の肩でうつらうつらしていたウォーキンスさんが言った。
「そうだよ。でも、転生してしまっているから、俺たちのことは何も覚えてないよ。」
「そっかー。残念。」
「どういうことですか?」
「君たち4人は何度もこの世界に来ているんだよ。」
先生の赤と青の瞳が少しだけ揺れた気がした。
「今こそ語ろうと思う。始まりのなおほびについて。そうすれば、自ずと君の知りたいことがわかるはずだ。」
初代勇者、ほびのあ・アルフェス
本名、入江 直泰
彼は今まさに俺たちが立っているこの場所で、元々ここにあった王国の国王に召喚された。
この国は後に人種差別による戦争に巻き込まれて滅びたんだ。
目的は軍事力強化のため、頑強で魔法が通用しない異世界人が必要とされたんだ。
そして召喚されてから年月がたち、彼に恋人ができた。
青い瞳の女性だった。
そして、結婚し、子供ができた。
子供が10歳になる頃、むろびなの勢力がこの世界に及んだ。
魔王が送り込まれたのだ。
その時、近くにあった国は他世界と融合し、まるで魔王が国を滅ぼしたような風に見えたため、瞬く間に「魔王は恐ろしい。」「この世界を滅ぼすつもりなのかもしれない」という噂が広まった。
当時軍のトップだった直泰は国王に勇者と任命され、魔王討伐へ繰り出された。
そして、魔王との戦闘で命を落とした。
これで終わりではなかった。
二代目勇者として、直泰の子供、なおほびが勇者として選ばれたのだ。
思えば、この戦いからなおほびとむろびなの終わりのない戦いが始まったんだろう。
話を戻そう、その勇者なおほびの仲間の名が、聖騎士あやの、大魔導士とうこ、大賢者ひかりだった。
そして、3年にわたる時間をかけて、ようやくなおほびたちは魔王を元の世界に送り返すことができた。
その後、この寺院が建てられ、むろびなはこの世界の悪である、と認知されるようになった。
そして、当時なおほびに肩入れしていたこの世界の創造神、レクサは魔王むろびなを追い返すために力を使い果たし、代わりに勇者パーティ全員の魂の半分を統合したセントウォムを新たなこの世界の女神としたんだ。
残りの半分をいろんな世界を回り、世界の均衡を保たせる役割を背負ったんだ。
「それが、俺たちなおほびだ。」
そう言って、先生は話を締め括った。
「じゃあ、僕たちはずっとむろびなたちと戦い続けるしかないんですか?」
僕は恐る恐る言った。
「そうだ。」
先生は目を閉じて言った。
「そんな…。」
「でも、今回で終わらせる。なおほびが4人いるこの世界で終わらせる。」
「4人?」
「そうだ。だからこれから、君たちを今までのどのなおほびも成し遂げられなかったことをするための、武器を手に入れる。」
そう言って先生はひょいと初代の刀を持ち上げた。
「俺はもう、この刀を抜くことができない、でも、今代のなおほびの君ならできるだろう。」
僕は刀を受け取った。
そして、刀を抜いた。
するりと滑らかに刀身が現れた。
刀身は透き通る青色をしていて、その周りには冷気を纏っていた。
「やっぱり。」
先生は満足そうに言った。
「その刀の名前は月華。代々なおほびと呼ばれた者が扱ってきた刀だ。」
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