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第十六話 救出

私、アヤノはナオハに呼ばれて、トーコさんの友達の妹を助ける作戦会議をしている。

「それで、敵の数は?」

ヒカリが聞くと、ナオハが

「少なくとも6人。転生初日に見た鎧の奴もいた。警戒すべきは、あいつだと思う。」

と、言った。

自称最強のお父さんを倒したのかもしれない連中の仲間だしね。

「とりあえずミネハちゃん達だけでも連れ出せないの?」

トーコさんが聞くと、

「連れ出そうとしたけど、魔法で印がつけられてるのか、転移が出来なかった。」

と、ナオハが答えた。

「じゃあまずは、魔法の解除だな。印をつける魔法の場合は魔法をかけた本人を弱らせる必要がある。」

ヒカリが言った。

「魔法をかけた奴が鎧の奴だったらそいつと戦うことになる。校長先生たちの加護もあるし、用心すれば大丈夫だと思うが、なるべく4人で固まって行動するぞ。」

「待って!私も行きます。」

妹をさらわれたトーコさんの友達、シルビアさんが言った。

「危険だ。君のレベルはいくつなんだ?少なくとも奴らは50に近いと思うぞ。」

ナオハが言った。

「…大丈夫です。レベルは15ですが…霊媒術の技術は他の人よりも高いと思います。」

シルビアさんはナオハに食って掛かった。

「そうか。でも、危険だったらすぐにここに送り返すよ。いいね?」

ヒカリが言った。

「は、はい。ありがとうございます。」


ナオハが転移した場所は、石レンガで出来た苔むした監獄だった。

見た感じ、牢屋は全部で18個。

中には、ミネハちゃんとカチーナのアリサちゃん、そしてシルビアさんたちのお母さん、他にも凶暴そうなオークという種族の魔族が入れられていた。

オークは相当頭にきているようで、ゴツゴツの腕を格子にガンガンぶつけていた。

「取りあえず、姿を見られないように魔法をかけておこう。」

ヒカリがそう言うと、ナオハが呪文を唱え私たちは半透明になった。

「半透明に見えるけど他の人からは全く見えないし、存在も分からない。」

ナオハが説明した。

「凄い。魔法ってこんな事もできるんだ。」

シルビアさんが感心したように言った。

私たちはナオハの案内で、敵がいるという場所まで歩いた。

そこには5人の男たちがビールジョッキを片手に騒いでいた。

「こいつらは一体何をしているんだ?さっき来た時とやってることが同じだ。」

ナオハがぼそりと言った。

「印をつけたっぽいやつはいないな。」

ヒカリが言った。

「無視して進もう。」

トーコさんが言った。

私たちは部屋の奥に進んだ。

奥にあった扉をすり抜けて入った部屋には、一冊の本が閉じたままテーブルの上に置かれている以外は何もなかった。

その本には、人間の設計図のようなものが描かれていた。

ウサギのような耳に、真っ白な髪の毛、オークの不気味な渦を巻く赤紫色の瞳、カチーナの真っ白な鳥の翼が生えた少女のようなシルエットだった。

「何…これ…。」

トーコさんの顔は青く染まっていて、口に手を当てていた。

「改造人間、的な?」

そしてページをめくると、この改造人間の名前らしきものが書かれたページがあった。

「キメラ・タイプ・ラビット…?」

変に長くてダサい名前だった。

「誰かこの部屋に近づいてくるわ。」

長い耳をピンと立てていたシルビアさんが言った。

「様子を見よう。」

ヒカリはそう言って、壁にめり込んで顔だけをのぞかせた。

そんな必要あるだろうか。

そう思いながらも私たちもヒカリと同じように壁にめり込んだ。

「…これで残った素材は雲色の髪を持つ人間、白ウサギ、ウサギ系の魔物だ。」

部屋に入って来たのは転生初日に私たちを襲った白い鎧をまとった兵士だった。

そしてもう一人、背が低い腰の曲がったサル耳の太っちょの男だった。

「へい。現在捕らえている素材どもには印の呪いをかけてあります。逃げられる心配はないでしょう。」

変に甲高い声だった。

「あの蝶羽カチーナは殺しても構わないが?鳥羽カチーナは捕らえた。素材以外は要らぬと言ったはずだ。」

鎧は見開かれたページを眺めながら冷たく言った。

「し、しかし、カチーナを手にかけることは女神様への反逆行為に…。」

男は額にうっすらと汗をかきながら言った。

「女神だと?今更何を言う。」

鎧はせせら笑った。

「キメラを造ることが既に女神への反逆行為だと知らなかったのか?」

男の表情がこわばった。

「そ、それならば、あの蝶羽カチーナは逃がせば良いのでは?」

「ならぬ。やつは知りすぎた。逃がせば我らの計画がカチーナだけでなく、エルフや聖職者にばれてしまう。」

沈黙。

「わ、分かりました。」

そう言って男は部屋を出ていった。

「まずいな。アリサの所へ行くつもりだ。」

ナオハが言った。

鎧には聞こえていないようだった。

「取りあえず、私とシルビアさんで、ミネハちゃんとアリサちゃんのところで2人を守るよ。」

トーコさんが言った。

「分かった。頼んだ、2人とも。」

ナオハが頷いて言った。

2人は壁をすり抜けて、牢屋の方へ走っていった。

「さて?ここからどうするのだ?」

鎧がこちらを振り向いて言った。

いつの間にか私たちの透明化が切れている。

「!」

ナオハが目を見開いて鎧を凝視していた。

「隠れるのがなかなか上手いではないか。全く気付かなかったぞ。」

「どうやって…。」

「気づいたのか、か?決まっている。本が開いていたからだ。」

ナオハはたじろいだ。

「お前はなおほびだな?」

鎧は本のページをめくりながらナオハに言った。

「なおほびは古来より、どの世界、どの時代においても、我々クロノス軍と敵対してきた因縁の相手!よって、ここで始末する。」

鎧はそう言って長い藍色の刀身の剣を抜き出して言った。

「勿論、お前たちもだ、転生者ども。」

「我求む、我らの因縁の相手、むろびなの手下を捕らえよ!」

どこか懐かさを感じる低い声が狭い石レンガでできた部屋に響いた。

すると、鎧の手首、足首、首に銀色のリングが出現し、鎧は倒れ込んだ。

「危なかったね。」

そう言って天井から降りてきたのは校長先生だった。

「先生!」

「ぬう!貴様は、あのときのなおほびか!」

鎧が顔だけを持ち上げて言った。

「もうなおほびじゃない。俺はエルフになった。」

先生は長い耳を撫でながら言った。

「ここで何をしていた?」

先生が左右色が違う瞳を鎧に向けながら言った。

「先生、これを見れば分かります。」

ヒカリがあの設計図が描かれた本を先生に渡した。

先生はパラパラと本をめくり、さほど驚きもせずに言った。

「まだこんなものを作ろうとしていたのか。」

「お前たちがほとんど破壊してしまったからなあ!」

鎧は激昂して叫んだ。

先生は鎧の兜を引っ張って脱がせた。

「みんな、よく見ておいてくれ。これがむろびな軍の手下だ。」

その兜の下にあった顔は真っ黒な肌で、とんがった耳、髪の毛は生えておらず、それ以外の特徴は人間とほぼ同じだった。

「こいつは女神様に手渡そう。それじゃあ、4人とも後で校長室で。」

そう言って、先生は金色の本を開いて、むろびなの手下と一緒に消えた。

まもなくしてシルビアさんとトーコさんが捕らわれていた人たちと一緒に戻ってきた。

校長先生の登場により、ミネハちゃん奪還作戦はあっけなく幕を閉じた。

あと、トーコさんたちはナオハを見て何故か混乱してしていた。

「さっきまで私達と一緒に戦ったよね?」

トーコさんが言った。

「何のことだ?」

ナオハは不思議そうにトーコさんたちのことを見返していた。

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