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第十五話 襲撃

今日も授業がない僕、ナオハは一人で自分の寮のベッドの上で教科書を開いていた。

すると、コンコンと扉がノックされた。

誰だろう、と思いながらドアを開けると、トーコと知らない女子2人が立っていた。

女子2人は焦げ茶色の髪で、ウサギのような耳をしている。

「えぇっと…?」

「紹介するね。この2人は姉妹で、こっちの姉の方がシルビア・フィルナで、妹がミネハ。」

「こんにちは。」

「こんにちは!」

「あぁ…、こんにちは…。」

「で、2人とも、彼が私の四つ子のナオハ・ドラティリガンよ。」

「…で?何しに来たんですか?」

僕が尋ねると、姉のシルビアさんの方が言った。

「妹のミネハがテレポーテーショナーで、間違ってこの学校に家から、テレポーテーションしてしまったんです。それで、トーコさんがナオハさんに聞くといいって…。」

「なるほど。それだったら、アイテムを渡すよ。家に帰るだけのワープベルだ。」

僕はガサガサと音を立てて、これまで作ったマジックアイテムを漁った。

そして、銀色のクマよけの鈴みたいな形のアイテムを出した。

「自分の家を思い浮かべてみて。それでベルを振れば家につくはずだよ。しばらくはそれで練習しな。」

「これって…。」

「あぁ。僕の手作りだよ。」

「ありがと!」

早速ミネハはベルを振った。

チリン♪と音がして、ミネハの姿が消えた。

「少し様子を見てこよう。」

僕がそう言うと、トーコが、

「動いて大丈夫なの?」

と、聞いた。

「あぁ。もう何日もベッドで寝てたからな。ちょっとくらいいいだろ。」

そう言って、僕は呪文を唱えた。

『転移・合流→ミネハ・フィルナ』


シュっと音がして僕はミネハの前に着地した。

そこは、木造の小さな一軒家だった。

家具は年期が入っていて、使い古されている。

「君の家はここで合ってるか?」

僕が尋ねるとミネハは嬉しそうに、

「うん!おにいちゃん、ありがと!」

と、言った。

「お父さんやお母さんは?」

「ふたりとも、おしごとだって。いえにはあたしひとり。」

「そうだったのか…。」

「うん…。でもね、おともだちがいるの。きて!」

ミネハは僕の腕を引いて、外に飛び出した。


外は森に囲まれた、フーリン村にそっくりな村だった。

一つ違うのは、フーリン村は建物が全体的に綺麗に整備されていたのに対して、この村は少しさびれていて、家が所々植物に覆われている。

「こっちこっち!」

案内されたのは、水色の花が咲いている場所だった。

「お~い!あそびにきたよ~!」

ミネハが口に手をメガホンのように当てて言った。

すると、木々の間から蝶のような翼が生えた、少女の姿のカチーナが出てきた。


カチーナには2つの種類があるらしい。

1種は、鳥のような翼が生えた、天使のような姿のカチーナ。

もう1種は、蝶のような翼が生えた、妖精のような姿のカチーナだ。

この蝶のような翼が生えたカチーナは、手のひらサイズで、町や村にはほとんど現れない。

しかし、鳥の翼のカチーナは人間と同じくらいの大きさで、人と共存することもしばしばある。


「ヤッホー、ミー、このヒト誰?」

カチーナが言った。

「ん~っとね、アリサ、このひとは、ナオハさんっていうの。」

ミネハが僕を指さして言った。

「ナオハ?どこかで聞いた名前。それで、今日はどうしたの?」

カチーナ…アリサが花冠を作りながら言った。

「ん~っと、ナオハさんからワープベル?もらったから、自慢したかったんだぁ。」

「ワープベル?すごい!ナーさん、どこで買ったの?」

「いや、自分で作ったんだよ。」

僕が答えると、アリサが花冠をポ~ンと、放り投げて言った。

「すごい!」


特にその後はこれといった話はしなかった。

なので僕はミネハとアリサに別れを告げて部屋に戻ってきた。

「どうだった?」

トーコが戻ってきた僕に聞いてきた。

「あぁ、成功だったよ。無事に家に着いていたよ。」

「良かったぁ。ありがとうございましたぁ。」

シルビアさんがほっとしたように、ため息をついた。

「あ、そだ。ナオハに校長先生から伝言。夕食を食べ終わった後に校長室前に来て、だって。」

トーコがメモ用紙を見ながら言った。

「おっけ。分かった。」

「あの!」

急にシルビアさんが僕に話しかけてきた。

「ミネハを家に帰してくれてありがとうございました。なので、お礼をしたいんですけど…、今週の週末空いてますか?」

「え…?いや、別に大したことをしたわけじゃあ…。」

「いえ!お礼をしたいんです!トーコさんにも!」

「え?私にも?一体何故…?」

シルビアさんがなんでか、すごい押しが強い。

こんな人なのか。

「妹を家に帰すのを手伝ってくれたので!」

「でも家には、ミネハ一人だけだったぞ?」

僕がミネハの様子を見にいったときのことを伝えた。

「え?家に誰もいない?母がいるはずなんだけど…。仕事って一体…?」

シルビアさんは困惑した表情で言った。

「…もう一回様子を見に行って来るよ。」

『転移・合流→ミネハ』


今度は石で出来た牢屋みたいなところに着地した。

「お兄ちゃん!」

ミネハとアリサが、さっき見た時よりも服や顔が泥などで汚れていた。

特に手錠をかけられたりはしていなそうだ。

しかし、転移させようと呪文を唱えようとしたが、何故か2人を転移に巻き込めない。

「どうした?何があった?」

僕は泣きそうな顔のミネハとアリサにできる限り優しい声で聞いた。

「アリサとね、あたしのいえにかえったらね、きょうのあさ、あったおじちゃんにね、きゅうになぐられたの。」

「気がついたらここにいたんだ。」

「分かった。その朝会ったおじちゃんって、朝何か話した?」

そう質問すると、僕がなんとなく予想していた答えが返ってきた。

「うん。ママがきょうはむらでのおしごとだって、おしえてくれたの。」

「なるほど、じゃあ少し待っててくれる?」

「う、うん。」

「だいじょうぶ。」

僕は様子を見るために、姿くらましの呪文を唱えた。

『古代魔法・我望む私の姿をくらましたまえ』

すると、僕の姿がパッと消えた。

僕は牢屋の鉄格子をすり抜けて廊下に出た。

(この魔法は自分をポルターガイストやゴーストのような身体になれる魔法だ。)

別の牢屋には、ミネハやシルビアさんにそっくりな女性が床で座っている。

ミネハの声が聞こえるので、長いウサギのような耳をすませているようだった。

少し進むと男たちの笑い声が聞こえてきた。


「いやぁ、にしても、母親がバカなら娘もバカだよなあ!」

スキンヘッドの丸顔の男が言った。

「そうそう!あの間抜け面!」

入れ墨をしすぎて腕が真っ黒になっている男がそれに返した。

そして声を裏返して(多分ミネハの真似)言った。

「“おじちゃぁん、あたしのママがぁどこにいるかぁしってるぅ?”」

きっしょ。

鳥肌立ったわ。

「「ぎゃははははww!!!」」

男たちが更にバカ笑をした。

うるさい。

ふいに、ギィっと音がして、金属で出来たドアが開いた。

「よぉ!ボス!あんたも酒、どうだ?」

馴れ馴れしくスキンヘッドの丸顔男が肩を組んだのは、銀色の生地に紫色の刺繡が施された鎧を身に纏っている男だった。

確か、11年前に僕らを襲撃した奴らだ。

この世界での両親を倒した奴らなら、相当注意しなければならないな。

ここは一度、トーコ達と乗り込むべきだな。

そう思い、僕は呪文を唱えた。

『転移・合流→トーコ』

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