第十二話 保護管の授業
ダズリーとの決闘の後、ナオハはそのまま何日も眠っていた。
そのことをユリエお姉ちゃんに手紙で送ったら、送った次の日にダズリーへの呪いの手紙と目覚め薬が届いた。
お姉ちゃんはどんだけナオハが好きなんだ…。
私たちは、医務のエコ先生と一緒に、ナオハが寝ているベッドの周りを囲んでいた。
あの決闘の後、デイアトルも気絶し、医務室に運ばれた。
結果はナオハの勝利となった。
その理由としてはデイアトルの方が早くノックアウトした、というのと、デイアトルはゲルド麻薬という覚醒作用が通常の麻薬よりも強い麻薬を使用したため、反則負けとなった。
「ぁ…?」
ナオハが目を覚ました。
「「「ナオハ‼‼」」」
私たちがナオハに顔を近づけた。
「僕は…?」
ナオハが包帯の巻いてある頭を抑えながら言った。
「勝ったぞ。」
「でも、魔力か体力が尽きて、倒れちゃったんだよ。」
ヒカリとトーコさんが交互に言った。
「そうか。ん?というか、アヤノはもう車椅子はいいのか?」
私は1週間前にデイアトルから炎の魔法を受けて、車椅子生活だったのだ。
「うん、大丈夫だよ。ナオハは一週間寝たきりだったからね。」
私が言うと、ナオハは驚いて言った。
「1週間⁉じゃあもう授業始まったのか?」
「うん。」
「あ、お話中ごめんね。ナオハ君に受講してる教科担任からプリントと教科書を渡すね。」
エコ先生がそう言って、1週間分の3教科のプリントと3年間用の教科書を渡した。
「あ。ありがとうございます。」
「それよりも、3人とも今日の授業は?ナオハ君はあと1日休みだけど。」
「「「あ。」」」
私たちは、先生にお礼を言ってそれぞれの教室に向かった。
今日は保護管の称号を取るための課外活動だ。
保護管、というのは自然保護やボディーガードのような、とにかく何かを保護する・守るといった技能を高める称号である。
そのため、下手をすれば6年くらい掛けないと取得できないこともあるらしい。
盾士や近衛兵、レンジャーといった職業に就くために必要な称号だそうだ。
学校の裏の森にて。
「では今日は自然保護のための技能を学んでもらう。」
保護管・1年生担当のガーベラ先生が言った。
ガーベラ先生は迷彩柄のジャケットを着て、同じく迷彩柄の帽子をかぶっている。
それ以外は真っ黒で、いかにもレンジャーといった感じの服装だ。
ちなみに私たち生徒は紺色のジャージを着ている。
「全員、教科書、筆記用具などはポーチにしまい、わたしについてくるように!」
先生がここにいる十数名の生徒に大きな声で言った。
「「はい!!!!!」」
生徒全員も大きな声で返事をした。
森をしばらく進むと、草木が全く生えていない広場に出た。
秋だから枯れている、というわけではなく、何かに燃やされたような跡がある。
「先生!これは何ですか?」
生徒の一人が言った。
「ここは先月まで、火吹き竜の卵があった場所だよ。その卵はもう孵って火吹き竜はどこかへ行ってしまった。では、アヤノ・ドラティリガン。」
説明を聞いていると、唐突に名前を呼ばれた。
「は、はい!」
「火吹き竜の卵の周りで高温が発生する理由と範囲は?」
「はい。高温が発生する理由は、卵から高密度の魔素が発せられ、それによって周囲の温度が上昇するからです。範囲は大体半径800メートル前後です。」
私が昨日の夜、ナオハのベッドの隣で暗記した、ドラゴンの習性をスラスラと答えた。
私はやはり天才だ!
「素晴らしい!よく復習してきましたね!今回は指名しませんでしたが、他のみんなもしっかり復習するように!」
「「はい!」」
「では、今日の本題に入ります。」
先生が自分のポーチから緑色の袋を取り出し、生徒全員に配った。
「それは庭茂草の種。植えてから1週間程度で芽が生える、緑化活動に最適な植物の種だ。しかもそれは!周りの植物への侵食も少なく、1ヶ月経つと細い木になる、素晴らしい植物なのだ‼」
先生は興奮気味に言った。
パラパラと拍手が起こった。
「ありがとう。では各自好きなように種を蒔いてくれ。」
私は、地面がむき出しになっている場所の、比較的焦げ跡の多い場所に種を埋めた。
『シャワー』
水をシャワーのように出す魔法を発動させた。
真っ黒だった地面に更に水が染み込んで、色がより濃くなった。
ちなみに、今私が使った魔法は生活魔法と呼ばれる魔法だ。
魔力が少しでもあれば、誰でも使える基本魔法である。
たまにこの魔法すら使えない人もいるそうで、魔法障害者や、ノーマジックと呼ばれる。
彼らは魔石の入った杖を使ったりして、補っている人もいるとか。
「あ、あの…ドラティリガンさん。」
「ん?」
犬の耳の茶髪のショートカットの女の子が話しかけてきた。
「わたし、魔法が使えなくて…わたしの種にも…その…水をかけてくれませんか?」
「あぁ。そんなこと。いいよ、いいよ!」
『シャワー』
私のかけた水が女の子が埋めた土を濡らした。
「ありがとうございます。あ、わたし、ルナ・グレンジャーといいます。」
「よろしく、ルナちゃん。私のことはアヤノでいいよ。あと敬語もいいから。」
「…ありがとう、アヤノちゃん。」
ルナは嬉しそうに笑った。
可愛い。
「はーい。では、今日の授業はここまで!」
なかなか広い範囲だったが、みんなで協力して半日かかってようやく終わった。
「今日から一週間、3人1組の当番で水やりと害獣駆除をしてもらいます。3人1組になってください。」
「アヤノちゃん。わたしとペア組んでくれない?」
ルナちゃんがまた話しかけてきた。
「いいよー!じゃあ、あと1人だね。」
私が言うと、一人の男子生徒が話しかけてきた。
「あの…ボクもいいかな?」
前髪が青く、他は黒髪で、ナオハと似たような雰囲気だ。
「いいよー!あなたの名前は?私はアヤノ。アヤノ・ドラティリガン。」
「あ…わたしはルナ・グレンジャーです。よろしくお願いします。」
私とルナちゃんがそれぞれ自己紹介すると、彼もそれにならって自己紹介をした。
「ボクはダズリー・デイアトル。この前は…その…すまなかった…。」
ダズリーが自己紹介と同時に頭を勢いよく下げた。
「へ?い、いや…。別にいいけど…。え?ダズリー?前会った時はもっとこう…傲慢で…豚みたいな…。あ、ごめん。そういうつもりじゃ…。」
ダズリーは前回会ったときの100倍くらい瘦せていて、顔もシュっとしていてイケメンになっていた。
それに対して、私が混乱してモソモソ言うと、
「ハハハッ。いや、いいんだ。ボクが悪かった。…2人とも、よろしくね。」
ダズリーと少し仲良くなった!
(マジか。)
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。




