第十話 大丈夫なんだよね?
「こんなことになるなんて…。」
ナオハがあんな風に怒ったのは久しぶりに見た。
私、トーコが知っている中で一番最近は、ヒカリの作った曲をみんなに馬鹿にされた時だったかな。
その時もナオハはボロボロになって、全員をひざまずかせて、力で解決して来た。
今回もそうなってしまうんだろう。
ナオハは自分が傷つくのはいいけど、誰かが傷つくのは許せない、そんな人だ。
転生してからそういったことはなかったから、変わってくれたのかと安心したのに…。
ナオハは変わらず、自己犠牲で物事を解決しようとしている。
ナオハにも、みんなにも、誰にも傷ついて欲しくない。
それなのに…。
朝、私の寮の部屋。
「ごめんね。ナオハ、こんなことになっちゃって…。」
私は上半身を起こして、ナオハに謝った。
昨日の騒動の後、私は先生たちに運ばれて寮で眠っていたらしい。
火傷は、レオナちゃんが応急処置をしてくれたおかげと、制服にかかっていた防御魔法のおかげで、大事には至らなかったらしい。
しかし、制服で守られていた部分以外の皮膚の内部の状態があまり良くないらしく、しばらくは車椅子で生活することになるそうだ。
制服も昨日着ていた物はすべてダメになってしまったらしい。
ブレザーは燃え尽きてしまったし、リボンも所々焦げ目がついてしまった。
スカートは太ももの部分まで焼けてしまい、だいぶヤバイ状態(いろんな意味で。)だった。
「いや、いいんだ。アヤノは悪くない。」
そう言ったナオハの右の瞳は真っ赤だった。
これは、ナオハがとてつもない怒りを感じているサインだ。
前世の時からナオハはこういう体質だ。
私が口を開きかけた時、勢いよく部屋の扉が開いた。
「アヤノー!車椅子借りれたぞー!」
ヒカリが木で出来ているらしい車椅子を押しながら入ってきた。
「じゃあ、行こうか。」
ナオハが言うと、トーコさんは不安そうな目でナオハに、
「無理はしないでね。」
と、言った。
「あぁ。」
ナオハはその言葉を聞いていなかったように、素っ気ない返事をした。
『さ~ぁ!始まりました、今日の決闘は~⁉ナオハ・ドラティリガンVSダズリー・デイアトル、ッダァ~!』
実況役の放送委員会の委員が元気よく実況室でしゃべくっていた。
ナオハ大丈夫かな?
「そういえば、ナオハって武器とかって…。」
トーコさんが不安そうに言った。
「あー。確かに、ナオハって何使うんだっけ?」
『それでは、ナオハ・ドラティリガン、ダズリー・デイアトル入場~!』
そうこうしていると、2人が競技場に入場して来た。
いや、ダズリーは雇われの兵士っぽい装備をした人を4人引き連れて入場して来た。
なんかどっかの漫画でみた気がする…。
武器は…兵士は鉄の剣、ダズリーは…カービン銃?
この世界にも銃があるのか…。
ナオハは…。
丸腰⁉
「マジかよ…。」
パタッっと音がしたと思ったら、私の隣に座っていたトーコさんが気を失って倒れた。
「ちょっ。トーコ大丈夫かよ⁉」
ヒカリが焦ってトーコさんを起こした。
「おいおい。丸腰?なめてるのかい?」
豚野郎改め、デイアトルがニヤニヤしながら言った。
「僕は魔法使いだぞ?武器なんて使わねぇよ。」
僕がそう言うと、
「じゃあ、せめて防具くらいつけたらどうだい?」
と言った。
「よくしゃべるな。怖いのか?」
「はぁ?ボクが?怖い?」
デイアトルが顔を真っ赤にして怒りを滲ませて言った。
「フンッ。」
『そぉれではぁ~。両者向かい合って…バトルぅ~スタァ~トゥ!!!』
カーンカーンカーン!!
銅鑼のなる音がけたたましく鳴り響いた。
ナオハ対デイアトル戦、開幕だ。
「行けっ!お前ら。」
デイアトルが雇われの兵士に命令して、長い猟銃のような銃に炎の魔法を込め始めた。
「終わりだ。ドラティリガン君。」
兵士の一人が僕に剣を向けながら言った。
『古代魔法・我に万物にも勝る脚力を与えたまえ.』
僕がそう唱えると、周囲に水色の光が集まり、僕の足に纏わりついた。
「古代魔法⁉なんだそれは⁉」
デイアトルが驚いて叫んだ。
僕はそれを無視して、強く足を踏み込んだ。
そして兵士の背後に回り込んで、回し蹴りで蹴り飛ばして気絶させた。
「は…?」
デイアトルが間抜けな声を出した。
「み…見えなかった…。」
兵士たちが一歩後ろに後ずさりした。
「まだやるのか?」
僕がそう問うとデイアトルは、
「あ…当たり前だ!」
と、威勢よく叫んだ。
私は決闘の様子をよぉく見ていた。
ナオハがパパから教えてもらった古代魔法を唱え、脚力を大幅に上昇させた。
そして兵士に回し蹴りを食らわせたのである。
ヒカリは啞然として、あんぐり口を開けていた。
トーコさんは未だ気絶したままである。
『…おぉっとぉ⁉ナオハ・ドラティリガン、謎の魔法を使って兵士の一人を蹴り飛ばしたぁ~⁉』
実況役が驚いて、実況するのを忘れてしまっていた。
「トーコさん、トーコさん。ナオハが…古代魔法を…!」
私はトーコさんを揺さぶって起こした。
「う…うぅん…?」
トーコさんが目を開けて、ナオハと蹴り飛ばされて地面に寝そべっている兵士を見た。
そしてまた目を閉じて、
「ナオハ…強くなっちゃったんだね…。」
と、悲しそうな声をあげて涙を流した。
私にも、ヒカリにも、本当の意味はまだ、わからない。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。




