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「シャワー浴びてくる!」
そう言われて手持ち無沙汰の名張は、どうしていいのかわからず、ぐるぐるした挙げ句、ベッドの上に座っていた。
しばらくして、バスローブ姿の香奈恵が来た。
リンスとボディーソープのほのかないい香りが名張の鼻腔を刺激した。
「お待たせ」ではなく、
「バチン!!」
頬をおもいっきしビンタされて大きな音が辺りにこだました。
「アンタ何してんのよ。この変態。痴漢。警察に突き出してやる」
「香奈恵。僕のことがわからないのかい?」
「気安く名前なんて呼ばないで。アンタなんか知らない。この変質者!」
名張は一目散に逃げ出した。
(2)
「残念だったね」
聞き覚えのある声で、名張は、公園の木の陰から後ろを振り向く。
「お前は、マルン」
「任務達成おめでとうございます。これでひとりの自殺願望者が救われました」
「それはいいけどいったいどういうことさ。彼女、僕のことなんて知らないって」
マルンは額のほくろをこすった。
「それはそうだよ。名張。だって君は、禁句ワードを言ってしまったんだから」
「禁句ワードだって!」
「うん。それは、『ハグさせて』」
名張は消沈した。突然心臓の辺りが痛くなったけど、そのせいだと思った。
その様子を見てマルンが笑った。その笑いが悪意に満ちていた。もちろんこれも気のせいだと思った。
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○月●日
本日の『禁句ワード』
『ハグさせて』
無事に回収することに成功しました。
残り何個あるかは不明。
以上
名張ノートより抜粋
以下同文