2
「あ、間違えちゃった」
その、名張の目の前に現れた仏を名乗る子どもは、開口一番そう言った。
改めて注視する。
スキンヘッドの、額にほくろのある、はだかに赤い逆三角形の前掛けをした子ども・・・・・・。
(う~ん。見るからに怪しい)
「間違えたって、・・・・・・いったい何を」
「色々。ごめんなさい。おいら、この術 使うの久しぶりなもんでして。
あ、申し遅れました。おいら名前は『マルン』っていうんだ。年は、・・・・・・えっと、人間界でいうところの・・・・・・」
話が飛んだ。理数系の名張には辛い。
「おい、こら坊主。お前の身の上話は聞いてないんだよ」
「坊主じゃないやいっ。マルンだよ」
「あー、もうわかった。マルン。それで何を間違えたっていうんだ?」
「う~んとね。それがその、何と言ったらいいか。面目次第もござらんです(汗)。でも大丈夫さ。お望み通り、自殺者の前にはちゃんと転送させてあげるから・・・・・・」
名張の身体が、光に包まれて消えていく。
「だから安心して。後は君が自殺しようとしてる人を助けることで、万事うまくいく」
「じゃあ、何が問題なんだ?」
「それは、禁句ワードなんだ」
「禁句ワード?」
「その言葉を言うと、君の記憶が消えてしまいます」
「わかった。それでその言葉とは?」
「はい。それは、ね・・・・・・あ?」
名張の身体が、全て消えた。