プロローグ
拙い文章ですが、読んでいただけると嬉しいです。
なにもきこえない
夜がきたからみんなねむってしまった
床も空気もひんやりしている
あついからだがひえていく
あかくなったからだは見飽きたし、あかくなったみんなはねむっているからしゃべらない
つまらないから空を見た
天井はどこかに行っちゃって、すごくおおきな穴がある
見えるのはくらい、くらい、くらい穴
ぼくは空に落ちていく
つめたい くらい みえない
けれどさいごに
星が、見えた
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目を閉じているのにまぶしくて、僕はゆっくり目を開けた。
白い天井が目に入る。
窓から風が入ってきて、白いカーテンを揺らしてる。
僕は白いベットで横になっている。
ねむくないから体を起こした。
横を見てみると点滴が僕の体につながれていた。
すこしすると看護師さんがやってきて、僕を見るとお医者さんを連れてきた。
どうやらここは病院みたいだ。
「やあ、私は井沢というんだ。お医者さんをやっている。君の名前も教えてくれるかな?」
井沢というお医者さんはベットの横に座ってぼくに聞いてきた。
聞いていて安心するような声で、優しい笑顔だったけど、なんだかすこしうそくさい。
それでも聞かれたから答えようとして。
「名前は……」
あれ、なんだっけ?
そもそも、僕はなんで病院にいて。
そもそも、僕はどこの誰だっけ?
"……真木"
ドクン
心臓が熱く跳ねる。
それと同時に呼ばれた名前は、間違いない、僕の名前だ。
「マキ……真木です。下の名前は真木、まことっていう字に山に生えてる木で真木です。」
口に出した名前は、僕を呼ぶときにいつも が言っていた。
みんなみんな、 は僕のことを真木、って。
「そうかい。真木君、だね。上の名前はわかるかな?」
「上の名前……は……わかりま……せん」
思い出そうとしたけど、わからない。
今度は誰も呼んではくれなかった。
井沢さんは一瞬険しい顔をして、すぐにまた笑顔に戻ると。
「いや。いいんだ、真木君。無理に思い出そうとしなくていいから、今はゆっくり休んでくれ」
そう言って部屋から出て行った。
広い部屋の中で僕は一人。
休んでくれと言われても、体はどこも痛くない。
だからって走り出したいわけでもないから、とりあえずベットに横になった。
部屋は静かだから、すこしの音でも耳が拾う。
廊下から井沢さんと看護師さんの声が聞こえてくる。
「記憶に欠損があるな。自分の名前以外忘れているようだ」
「あれほどの怪我で意識が回復しただけでも奇跡ですね。そもそもあの子は、その……現場にいたんでしょう?なら、忘れているほうが幸せなんじゃないんでしょうか」
「確かにな。しかし、警察は知りたがるだろうね」
会話を聞いてはいけない気がしたし、聞きたくもなかったから布団をかぶって耳を塞いだ。
目を瞑った。
目の前は真っ暗で、なにも聞こえない。
そうしているのがひどく怖くて、 の事を思い出して僕は息が荒くなる。
"……真木"
ドクン
心臓が熱く跳ねる。
耳は塞いでいるのに声が聞こえる。
暗闇の中に星が見えて、近づいて来た。
目の前にある、僕よりずっと大きい、暖かい光。
「あなたが僕を助けてくれたの?」
不思議とそんな気がして、聞いてみた。
"……ああ。私は真木と一つになって、助けることができた"
僕の中に声が伝わる。
"だが、このままでは真木の意識が消えてしまう"
「消えるって……死ぬって……こと?」
ああ、それは……
"……真木、君はまだ生き続けることができる。そのためには私の全てを受け継がなくてはならない。その先に待っているのは地獄だ。それでも君は……"
生きていたいか?
地獄というのはなんだろう。
多分、僕には想像もつかないほど過酷なことだ。
辛くて、逃げ出したくなるのかもしれない。
「僕は……」
それでも、あの穴に落ちるのは、怖い。
なにも見えなくて。
なにも聞こえなくて。
なにも考えられなくなるのが。
本当に、怖い。
死にたくないから、生きていたい。
答えを受け取って、頷いたら、光は僕を包んでいく。
ドクン ドクン ドクン
熱い鼓動が僕の鼓動と重なっていく。
「あなたは、どうなるの?」
"……気にしなくていい。真木、君の未来に幸福がある事を願う"
そう言い残して、僕の鼓動は一つになった。
読んでいただき、誠にありがとうございます。
言われてやる人はいないと思いますが、よろしければブックマークと☆もつけて行ってください。
明日か明後日には次話が投稿できると思いますので、覚えていたらまた読んでみてください。