7.昔この島には
ブックマーク1件いただきました。
ありがとうございます。
~お知らせ~
時代が少し背景とあっていない部分があったので、そこを訂正していきます。
(具体的には、3話の圏外に対する反応、缶詰の内容等です)
「ふぅ、食べたな」
「食べたね~。美味しかった~。」
「そうだな。じゃあ、少し口ゆすいで、寝る準備するか。」
「うん!」
そうして、ペットボトルの水で口をゆすぎ、四つあった毛布の、敷布団に使っていない二つを取り出した。
十年ほど前までは地球温暖化等が騒がれていたが、ここ数年で平均気温はグンと下がっており、更にここは北にある島なので、夜は寝冷えしないように警戒が必要である。
布団をしっかりと用意し、リュックの中も片づけた二人は、布団に入ることにした。
布団に入ってみると、予想していたよりも美結との距離が近い。
少し、いや、かなり緊張する。
「なんか、こうして布団を並べていると修学旅行みたいだね」
と、美結。
「そうだな。懐かしい…」
「だよね!じゃあ…修学旅行を思い出したってことで…そーゆーときにする話、しない?」
「お、怪談か?いいぞ?」
「え、か、か、怪談!?え、修学旅行って怪談するの?」
「え、しないのか…?美結は怖いの苦手?」
「そそそそそんなこと、ない、よ?よ、よーし、怖い話、考えるぞー!!
異常なまでにテンパっているのがかなり謎だったが、本人は大丈夫と言っているので怖い話を考えることにした。
数分後。
怖い話を考え付いた友佑は美結の方に向き直る。
すると、美結はじっと友佑の方を見ていた。
なんか怖い。可愛いけど。
「…ど、どうした?美結」
「…友佑君…本当に、怪談するの?」
「?したくないの?それならいいけど…」
「ううん、するよ!大丈夫!」
美結の様子が何か変だ。
大丈夫なのだろうか。
色々と引っ掛かるが、本人の言葉を信じて話始めることにした。
「さっきさ、俺洞窟の奥探索に行ったでしょ?その時に知ったことなんだけど」
「…うん」
「この島、昔は無人島じゃなかったらしい。まあ、昔っていっても、相当昔の話だろうな。多分、千五百年くらい前の話じゃないかな。この島にはとある王国があったんだってさ。とてもとても、その王国は繁栄していた。作物は沢山実り、王はとても素晴らしい治世を行って。国民は皆、とても幸せな日々を送っていた。
でも、それを妬ましく思っている人たちがいたんだ。
それが、海の向こうの人たち。
その人たちは、ある日遂に島に攻めてきたんだ。
王国側も、攻めてくるのは知っていたし、対策も練っていた。でも、数が圧倒的に違ったんだ。
王国軍は、なすすべもなく崩れていってね。
村には火がかけられ、穀物は奪われ、その間にもわずかに残った王国軍と王の一家はどんどん追い詰められていったんだ。
そうして王一家と王国軍が最後に逃げ込んだのがここの洞窟だったんだ。
そのうち、洞窟内でもどんどん追い詰められていく。それを見て王は、最後の命令を出した。
“全員敵に突っ込め”と。“幸せな暮らしを崩壊させた報いだけは受けさせるぞ”と。
そうして、王は妻子を己の手で殺し。
自らが率いてきた軍の部下たちと共に敵に突撃して、散ったんだ。」
「…ここが、そんな惨劇の現場だったなんて…」
どうやら、かなり信じ込んでくれているらしい。友佑は話を続ける。
「だよな。でも、島にとっての本当の惨劇はここからだったんだ。」
「王国軍と王一家を滅ぼした敵軍は、そのまま王国で暮らしていた人たちを次々と捕まえて、そして、自分たちが国に帰る時に連れて行って、奴隷にしたんだ。」
「うわぁ…酷い…」
「やがて、王国の人々は次々と死んでいった。酷使された挙句にろくな栄養も与えられなかったからね。そりゃあそうだ。深い、深い恨みを抱いた王国の人々の魂は王が果てた場所―すなわちこの洞窟に集まっていった。それと同時に、恨みの対象は敵のみならず島の外からくる全ての人に向けられていった。
対岸の村は長い年月を経て、漁業の栄えるところになったんだけどね。
この島の周りで船が沈没したり、大嵐に巻き込まれたりすることが度々あった。
そのうちに、人々はこの島に近づくと神の祟りがある、と恐れ、この島は来神島と呼ばれるようになったんだ。」
「この島の名前の由来ってそこだったんだね。……え、じゃ、じゃあ、私たちが今ここにいるのって…」
「多分、漂着しちゃっただけだからまだ許してくれているだけで、魂は快く思っていないだろうね。祟りがないように気をつけなきゃな。」
「え、あ、あと、友佑君がさ、さっき洞窟で知ったっていっていたけど、なん、で?」
美結が震え声で尋ねてきた。
「そりゃあ、見たからな…骨とか、刀とか…」
「ッッッッキャァァァァー!!!」
美結の悲鳴が洞窟内に響きわたると同時に友佑は強い衝撃を受けた。
「ちょ、ちょっと、美結!?」
「ここヤダ!い、今からでもいいから、寝る場所替えよ!」
「お、落ち着け!?これただの怪談だから!」
「ノンフィクションじゃん!」
「いや、違うから、そんなことないから!」
「絶対そうでしょ!こんな怖い話、絶対そうだよ!」
「いや、だから、俺が考え付いただけの話だから!」
「ウソ!」
「いや、本当だから!落ち着け!」
結局、美結を落ち着かせるのにかなりの時間がかかってしまった。
修学旅行と言えば恋バナでは?
(次回美結さんがそこ指摘します)
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