3.突然の電池切れ
上陸して3、4分くらいたった時のことである。
いきなり、“ビー!ビー!ビー!”と、赤いランプと共にベルが鳴り響いた。
【緊急、緊急!トラブルが発生しました。トラブルが発生しました。電池の残りがほぼなくなっています。至急、充電してください。】
と、の音声案内が流れる。
「えっ。充電?そんなこと言われたっけ?友佑君、何かわかる?」
「いや、わからん!そんな説明されてない!」
とりあえず、慌てても仕方がないので冷静に考えることにした。
まず、電話するのが先決であろう。
しかし、舟に備え付けられているパネルは反応がない。仕方がないので、スマホを開こうとしたのだが…
「け、圏外!?…なにそれ!?」
開くよりも前に美結の驚きの声が聞こえてきた。
「なんか、聞いたことあるな…昔はよくあったらしいんだけど、電波が極度に弱いとか、ないとかでケータイの通信ができなくなる状態、とかだったはず…」
「え、じゃ、じゃあ、連絡できないってこと!?」
美結が悲鳴にも近い声をあげた。
「ちょっと、俺のスマホも見てみる」
一応、友佑のスマホだと繋がるかもしれないというかすかな希望を持って開いたが、もちろん圏外だった。
連絡手段は、ない。
「こりゃまずいな…」
「ど、どうしよう…友佑君…」
「…助けが来るのを、待つしかないな…まあ、幸い、俺たちがここに来ることは知られているからな。数日待てば確実に来るとは思う。が…うーん、何かほかに方法はないかな…」
実際、待っておくのが最善手ではあろう。
ただ、ここはおそらく無人島。普段通りの生活などできるはずもなければ、食事すら十分に摂れるかわからない。友佑一人なら耐えるだけでいい。ただ、美結にそんな思いをさせたくない。その感情が友佑を迷わせていた。
しばらく考えたのち。
友佑は口を開いた。
「うーん、考えてみたけど、やっぱり島で助けを待つしかないか。泳いで帰るわけにもいかないし。」
「うん…」
「ごめん、美結…俺があの時にもっと反対していれば…」
友佑が言うと、美結はかぶりを振って、言った。
「ううん、そんなことないよ。そもそも、乗りたいっていったうちの一人が私だし。友佑君と良夏ちゃんは反対してたでしょ。だから、気にすることはないよ。それに…(ゴニョゴニョ)」
「ん、最後の方なんて言った?」
「なんでもない!」
最後の方が聞こえなかったので聞き直したら真っ赤になって否定されてしまった。
なんなんだ、と友佑が戸惑う間に美結は横で深呼吸をしている。
本当になんなんだ。
友佑としては何か歯がゆい。
ただ、そんなことを気にしているよりも何かしら対策を立てておいた方がいい。
「まあ、とりあえずだけど、ここで数日暮らせるための対策を立てておいた方がいいな。
衣・食・住はしっかりと整えることが大切だし。」
「そうね…どうしよっか…友佑君何かアイデアある?」
「あまりない。」
「あまり?」
「ああ。舟を有効活用できないかとは思った。ただ、その船あまりでかくないからな。うまくいけば屋根にできるかと期待したけど無理か…」
友佑が考えこんでいると、美結が突然「あっ…」と何かに気がついたような顔をしている。
「どうした?」
「舟の中に何かないかな?ほら、なんか前の方にもポケットあったし…」
失念していた。
まず、そのポケットや、後ろの方に置いてあったボックスの中身を見てみることにする。
その結果。
使えるものが出るわ、出るわ、出るわ。
5日分くらいありそうな食料、毛布、水。
「美結、本当にナイス発見だよ、これ。かなり過ごすのが楽になりそうだ」
「えへへ~。よかったでしょ。あ、リュックもある」
「本当に遭難した時のこと考えられていたんだな…というか、遭難する確率どのくらいだったんだろう?」
「さあ…でも、私たちは幸運だったね。電池が島に入ったところで切れてくれて。」
心から安堵した表情で美結が言った。
「だな…これがもし海の上で切れていたらと思うとゾッとする。」
「だね~。あっ」
二人でリュックに食料や水を詰めていたのだが、リュックの中をのぞいた美結が何か発見したようだった。
「何かあったのか?」
「うん。これ…地図じゃない?この島の」
「おお~本当だ。これは役立ちそうだな」
「でしょでしょ~!」
美結の(褒めて褒めて~)という心の声が聞こえてきた。
可愛い。
「美結、さっきから大発見の連続だな。本当にありがとう。」
「どういたしまして!これで二人で暮らせるね!」
可愛すぎる。発言も、何もかも。
その後、美結のあまりの可愛さによって心がオーバービートし、無心になった友佑によって速攻で荷物は全てリュックに収まったのだった。
美結さんはすぐに幼くなったりしますね…魅星さんに「妹みたい」と言われるわけですよ…
それにしても、二人とも遭難した後の切り替え早すぎません?そういうものなのでしょうか…?
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