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1.夏休み、海の上で

一面に広がる、澄んだ青。

その中に、舟が二艘浮かんでいる。

前を行く舟に乗っているのは、男女二人ずつで乗っている、仲のよさそうなグループ。

一方、後ろを行く舟はというと。少しばかり気まずそうな雰囲気を醸し出して会話している、男女が二人乗っていた。


(どうしてこうなった)

後ろの船の中で、倖田友佑(こうだともひろ)は一人、頭を抱えていた。

船に乗っているのは、友佑と、鏡筒美結(きょうとうみゆう)―友佑が想いを寄せているその人が乗っていた。友佑としては嬉しいことには嬉しい。ただ…とある事情でお互い気まずくなっているのだ。


話は、一時間ほど前に遡る。


友佑は、二日前から美結、翔音(しょういん)良夏(よしか)雄輔(ゆうすけ)魅星(みほし)の六人で良田家の別荘に遊びに来ていた。

今は夏休み。六人は、普段の学校生活で仲のいいグループである。昨日は午前中みんなで課題をこなす時間にし、午後少し遊んだ後夕方から近くで会った祭りに参加・花火を見た。花火はちいさな港町での花火と思えないほど豪華であった。そして今日、岸辺を散策していたところ、いきなり若干怪しい格好をした人に話しかけられたというのが一時間前のことである。

「すみませ~ん、ちょっとそこの学生さんたちにはなしがあるんですけど~」

「は、はい…?何かありました?」

と、戸惑いながらも良夏。

「私共は無人運転の開発を行っている団体なのですが…ただいま、無人運転の試験ツアーに参加していただける方を探しております。もしよろしければ参加していただけませんか…?」

「え、えっと…話し合いますので、少々お待ちください。」


良夏が話し合う時間を作ってくれたので、話しかけてきた人たちから少し離れた場所で話し合うことにした。

最初に現状の気持ちを聞くと、参加したいのが美結、翔音、雄輔、魅星。したいけれど心配が勝っているのが友佑、良夏。

多数決にすると何も考えずに乗るが決定してしまいそうだったので、疑問点を挙げてみることにする。

「無人運転の試験で、海の上。危険じゃないか?」

「うーん、一般人を乗せる段階まで来ているし、多分、かなりの安全は分かっている試験だと思うよ?友佑兄さんが心配するのもわかるけど、たぶんそこは大丈夫なんじゃない?」

「そうかもしれないけど、私もそこは心配です。後、あの方々“団体”としか名乗られていないんですよ。素性がわかりません。」

「まあ、そこは詳しいことを喋る必要がないとおもったんじゃない?美結先輩は警戒しすぎだよ。そうだよね、お兄?」

「それならば良いのですが…」

「うーん、まあ、いいか…」

意外と考えていたらしい雄輔と魅星にそれぞれ説得されてしまった。

まあ、友佑としても船酔いする体質ではなく、更にここら辺の海はとても綺麗なので懸念点さえ払拭されればもう楽しみなだけである。


参加することを先程の人に伝えたところ、

「それでは、舟は二人乗りと四人乗りのものがございますので、四人と二人に分かれていただけると幸いです。」との指示が返ってきた。

「どうする?」

と聞いたところ、

「じゃあ、美結と友佑が二人乗りだな!」

と翔音。

「え、ちょっ、え!?」

「え、おい!?」

「賛成!」

「同じく!」

「賛成です!」

美結と友佑が戸惑う間に、他の全員が賛成してしまった。

「あ、決まりましたか?」

「はい。ここの二人と、後の四人にします」

「わかりました。では、注意事項や緊急時の連絡方法などを説明いたします。」

…注意事項や連絡方法、見どころを聞いたが、どうしても話が長くなり、更に友佑も途中ボーっとして話をあまり聞いていなかったので割愛させていただこう。


さて、いよいよ舟に乗ろうかというとき、翔音と魅星が突然友佑と美結の方へやってきて翔音が友佑に小声で耳打ちしてみた。

「お前、美結のこと好きだったろ。今日告っちゃえよ。海の上に二人きり、なんてチャンスないぞ。」


それだけ言って四人乗りの方へと去ってゆく。

顔が熱くなるのを感じながら、横目で美結をチラ見すると、友佑よりも顔が赤くなっている美結と、ニコニコしている魅星がいた。どうやら、美結も何か言われたらしい。それで顔が赤い理由はいまいちわからないが。



そうしてその後、船に乗り込み、岸辺を離れ、今に至るわけだが…友佑は、あんなことを言われてしまったので勝手に気恥ずかしくなっているのであった。ただ、美結が恥ずかしそうにしている原因は知らない。まあ、おそらくではあるが魅星に先ほど何やら言われていたのでそれが原因だろう。


ただ、いつまでも会話がなく気恥ずかしくなっていても折角の船旅も景色も意味がないので、美結に話しかけてみることにする。…が、何故か今日は糸口がつかめない。


丁度見どころと言われていた場所が近づいてきたので利用させてもらうことにする。

「美結、ここら辺にさっきの人が言ってた平安時代だか室町時代だかの沈没船があるらしいよ」

「そ、そういえばそんなこと言っていたね…どこら辺にあるんだろうね」

「さあ…話によるともうほぼ船は残ってないらしいし。見えるといいけどね…」

「そうだね…うーん、みえないな…うーん」

「美結、危ない」

「え、あ、キャッ!」

美結が船から乗り出しすぎて、落ちそうに見えたので、咄嗟に手を持って止めたのだが…

美結は真っ赤になってそっぽを向いてしまった。


悪いことしちゃったな…いくら落ちそうで怖かったとはいえいきなり腕をつかむのはよくなかった…と、反省する友佑。


しかし、友佑は知らなかった。

そっぽを向いた美結は、赤くなると同時に満面の笑みがこぼしていたのを…


結局、美結が再び友佑の方を向いたのは、それから数分後のことだった。

幸いにも、そこからしばらくは大したトラブルもなく、楽しい船旅を続けることができた。


初めまして、☆キラメキ☆と申します。

このお話は日曜日、火曜日、木曜日、金曜日の正午に更新していく予定です。

よろしくお願いします。

それにしても、友佑君ちょっと鈍感すぎますね…

~グループの成り立ち~

なぜこんな人々が集まったグループがあるのか。ちょっと疑問に思った方々もいると思うので書いておきますね。

まあ、ちょっとした裏話です。

元々は学校内で人気がありすぎて疲れた美結、翔音、良夏が固まるようになったのが元です。当初、友佑はクラスが違ったのでいませんでした。少したってから翔音が美結と良夏に友佑を紹介し、仲良くなって4人グループになりました。

学年が変わり、入学してきた雄輔と魅星が加わってこのお話に至ります。


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