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第四十七話【ゴブパーク】

 わたしとソラが落っこちた後、先に目が覚めたのはソラだった。

 ソラはわたしを起こそうとしたみたいだけど、大勢のゴブリンに囲まれてることに気がついたの。

 敵意があるかと思って剣を構えたけれど、敵意どころか崇拝されてるのに気がついたんだって。


「どうやら落ちてくるところを見られてたらしくてな、神の使いだと思われたそうだ」

「ゴロもみなも驚きまジダ、まさか人間サマが降りてくるドは」


 ゴロさんの話によると、ゴブリンは人間を崇拝してる者が多いらしい。

 まだ人間が地上にいた頃、人間に仕えるゴブリンが沢山居て、とても良くしてもらってたんだって。

 人間がソラジマに移住した時、「天に昇り神に昇華した」って捉えたらしく、ずーっと伝承として言い伝えられてきたんだとか。


「つまり、彼らは全く脅威じゃない。むしろ味方だ」

「そうだったんだ……うう、泣き叫んじゃって恥ずかしい……」


 ああ……穴があったら入りたいよう……。

 でも、恥ずかしくて顔を隠したい私を慰めるように、ゴロさんがフォローしてくれた。


「我々ゴブリンは他種族ガら良く思われデまゼンガラ、仕方ないことデズ」

「ゴロさん優しい……けど、ゴブリンのみんなが笑ってたのって、やっぱり……?」

「まァ、はい。とても良いリアクションしてくれるのデ、みな面白かっダと言っデマズ」


 ……小鬼なのは間違いなさそうかも。


「でも、どうしてこんなところに住んでるの? 人里離れた場所なら他にもっと良い所あると思うのに」

「確かニ、ここは危険な場所デズ。デズガ、我々にとっデ、ここは聖地なのデズ」

「聖地……? 人間の遺跡だからってこと?」


 わたしの問いに、ゴロさんは首を振る。

 そして、ここに住むに至った経緯について説明してくれた。


「もともと我々は他種族に仕えていたゴブリンでジダ。ワダジが通訳としデ、みなでティグレスからも遠い辺境の農場で働いデダのデズガ……お察しかモしれまゼンガ、扱いはとても酷いものデジダ」


 ゴロさんが言うには、自由は無く、ご飯も最低限のものしか貰えず、まさに奴隷のような生活をしていたんだとか。

 時々通りかかる衛兵さんに助けを求めようにも、そんなことをすれば恐ろしいことをされるかもしれない。

 そんな恐怖から、何もできずに日々を過ごしてたんだって。


「デズガある日、畑からこんなモノを見つけまジデ」


 そう言うと、ゴロさんは小さな石板を取り出して見せてくれた。

 ええと……うん、なんて書いてあるか分からないけど、文字みたいなのが書かれてる。


「これは?」

「ゴブリンの言葉でかかれダ石板デズ。我々の知る人間サマに関する伝承のこと、そジデ、この遺跡のことが書かれデいまジダ」


 この遺跡のこと……?

 わたしが疑問に思っていると、ゴロさんは石板を訳してくれた。


「……『西の方角に、人間よりたまわりし我らの楽園アリ。名を"ゴブパーク"、ゴブリンの聖地ナリ』……ト、石板には書かれてマジダ」

「ゴブパーク……それがこの遺跡の名前?」

「ハイ。ここに残さレダ書物からも、その名が書かれてマジダ。ここはかつデ、人間サマが作られたゴブリンの住処だったようデズ」


 ゴロさんの話によると、ゴブパークは人間がゴブリンの献身を称えて作った施設らしい。

 地上と地下の二階層に分かれてて、かつては人間とゴブリンが共存していたんだとか。


「今は見る影もありまゼンガ……ここは確かニ、人間サマと我々の友好の証だったのデズ。我々はここをゴブリンの里として復興するダメ、農場を抜けだしてきたという訳でありマズ」


 いつかは散り散りになった仲間をここに集めて、ゴブリンだけの街を作りたいってゴロさんは語る。

 そして、迫害に脅かされることもなく、静かに暮らせる街にしたいのだとか。


 ゴブリンが人間と共存してたなんて、凄く驚きな話だけど……気になることが一つ。


「ソラ、人間って他種族を凄く恨んでたんじゃないの?」

「うむ、地上に居るものは例外なく全て魔物だと聞いていたが……人間と共存する種族が居たなんて、聞いたこともない」

「だよね、どういうことなんだろう」


 地上に生きるもの全てが魔物だって言っていたソラが言っていたことと矛盾するよね。

 でも、ゴブリンたちは心底人間を崇拝してるみたいだし……うーん。


「それに、こんな施設を建てるくらいゴブリンを大切にしてたんなら、どうして地上に置いてっちゃったんだろう」

「伝承では献身が足りず、神の世界に迎えられなかったとされていまジダガ……人間サマがこうして生きていられる以上、確かに不思議に思いマズ」


 ゴロさんも、ソラの話を聞いて不思議に思っているようだった。

 なぜ人間は、こうも献身的なゴブリンを置いて行ってしまったのだろう?

 うーん、分かんないことだらけ……。


「この遺跡をしっかり調べる必要がありそうだな、最深部に行って確かめなければ」

「あ、そうだった。ゴロさん、私たちこの遺跡の一番奥に行きたいんだけど……開かない大きな扉って、どこかで見たことないかな?」


 遺跡の内部に詳しそうなゴロさんに聞けば、何か分かるかなと思って聞いてみる。

 ゴロさんはすぐそばに居たゴブリンに話しかけ、あるものを取り出させた。

 それは二枚の紙で、地図のようなもの。

 これは……あっ、遺跡の見取り図だ!


「どうぞ、良ければお使いくだザイ」

「ありがとうゴロさん! ええと、現在地は……」


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


 一枚は地上階、もう一枚は地下階の見取り図。

 地図にはゴブリンたちが新しく掘った洞窟が後から書き足されている。

 今居るのは多分……地下階の洞窟の、この辺りかな?


挿絵(By みてみん)


 とすると、この洞窟の隣の部屋……多分、ここが目的地みたい。


「ここには大蜘蛛が居て近づけなかったのデズガ、ソラサマの話によると、お仲間が退治されたとの事デ」

「あっ、それってリエッタさんがやっつけた奴かも」

「今ならきっと安全に行けるでジョヴ、デズガどうかお気を付けデ、何があるか分かりませんガラ」

「うん、ありがとうゴロさん!」


 わたしが改めてお礼を言うと、ゴロさんは照れ臭そうに頬を掻いた。

 どうもお礼を言われなれてないみたい。良い人なのになぁ。


「じゃあソラ、早速行ってみる?」

「うむ、そうするか」


 ソラはこくりと頷いて、わたしの背中の方へ。

 いつものようにソラを背中に乗せた時。


「ううむ、ワダジも力がアレバ……」


 と、なぜか羨ましそうにゴロさんが呟いてた。

 ……よほど人間に献身したいみたい、遺伝子に刻まれてるレベルで。


「じゃあゴロさん、色々とありがとね!」

「……はっ、イエイエ、また何かございましダラ仰ってくだザイ」


 ペコペコと頭を下げるゴロさんにお礼を言うと、わたしは扉の方へ向かって歩き出した。

 ゴブリンたちはわたしたちが見えなくなるまでずっと見送ってくれて、なんだかちょっと照れくさい気分になりつつ。

 この先に待ち受けるものに、期待半分不安半分な気持ちを抱いていた。

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