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第四十三話【恐怖の毒蜘蛛】

 レッドラインスパイダー……この恐ろしい毒蜘蛛は、アウェロー大陸だけじゃなく、イリス大陸でも有名な存在。

 本来は洞窟に住んでる蜘蛛なんだけど、時々空き家に巣を作ったりするんだ。


 この毒蜘蛛の恐ろしいところは、やっぱり毒。

 噛まれた時は勿論すごく痛いんだけど、毒を急いで中和しないと大変なことになる。

 身体のいたるところに斑点ができて、しかもそこが物凄い激痛なんだって!

 あまりの痛さにショックで死んじゃう人もいるくらいで、万が一助かっても後遺症が残ることだってあるんだ。


 ハーピニアは山の上だから居なかったけど、そういう蜘蛛が居るって話はよく聞いていた。

 近郊で身体に赤い線の入った蜘蛛を見つけたら、まず逃げて衛兵を呼べ。なんて言ってたっけ。

 どんな相手でも果敢に襲ってくる凶暴性も持ち合わせてるから、出くわしただけでも危ないの。


 ……で、今その恐ろしい毒蜘蛛に囲まれそうになってるんだ、アハハ。

 いや笑いごとじゃないわ、うん。


「リエッタさん、一回下がろう! このままじゃ逃げ場がなくなっちゃう!」

「ええ、ハルちゃん!」


 元来た通路へと急いで戻るわたしたち。

 あの数じゃ流石にリエッタさんも大変だろうし、ソラは多分戦えないだろうし。

 何より噛まれたらひどいことになっちゃう、それだけは避けたい。


「う、ううっ……あ、あんなにいっぱい居るのか……!」

「ソラしっかり! ひとまず体制を立て直すから!」

「わっ、分かってる! 蜘蛛なんか怖く──ひぃっ!」


 ソラが逃げてる方向を見て叫び声をあげる。

 視線を向けると、そこにはさっきまでいなかった大蜘蛛が一匹。リエッタさんよりも大きい。

 これって、もしかしなくても挟み撃ちにされてる……!?


 通路の真ん中で立ち止まり、リエッタさんが槍を構える。

 前方には大蜘蛛、後方にはわらわらとやってくる大群。

 絶体絶命だ……! ど、どうしよう……!


「ソラ! 震えてないでアレ飛ばしてよ!」

「やや、やってる! やってるが、手が震えて……!」


 ソラは剣を抜いたはいいものの完全におびえちゃって、うまく剣を扱えないみたい。

 リエッタさんはにじり寄ってくる大蜘蛛と対峙してるし、私たちが蜘蛛の大群をなんとかしなきゃいけないんだけどな……!

 どうしよう、どうしよう……! わたしに出来ること、出来ることって……!?


「……ううぅぅっ! わぁぁぁぁぁぁっ!」

「ちょ、トアムナちゃん!?」


 すると突然、トアムナちゃんが叫びながら蜘蛛の大群に突撃。

 わたしが逃げて、という前にトアムナちゃんはべしゃっと蜘蛛の方へダイブ。

 一瞬にして蜘蛛に群がられ……た、次の瞬間。


 トアムナちゃんが瞬時に怪物形態に変身。

 膨張して、大小さまざまな蜘蛛を飲み込んで、通路を完全に粘液で封鎖しちゃったの!

 と、同時。蜘蛛から逃げるように濃い緑色の球体がコロコロと転がってきた。


「あう……ううう……こ、ここは塞いでますので、大蜘蛛をお願い、します……あ、あと私のコアも……守って……」

「トアムナちゃん……! ナイスだよっ! コアはわたしとソラが守るからね!」


 粘液の壁から聞こえてくる声に返すと、トアムナちゃんのコアの横に立って蜘蛛を警戒。


「ソラ、トアムナちゃんを守るよ! 壁から抜け出してきた蜘蛛が居たらアレ、よろしく!」

「わ、分かった……! やってやるともっ!」


 ソラも腹を括ったみたいだ。斬撃のチャージも終わったみたいで、剣をトアムナちゃんに阻まれた蜘蛛の方へ向けている。

 もがいて何とかこっちに来ようとしているけれど、トアムナちゃんが押し返してるみたい。

 ……ううっ、見た目がキモチワルイ。ソラが嫌がるのもわかる気がする。


「はあっ!」


 一方リエッタさんは、大蜘蛛相手に戦っていた。

 大蜘蛛にとっては狭い通路、その分リエッタさんにとっては有利に働いている。

 足での攻撃を軽やかに回避して、一本、また一本と足を刎ねた。

 しかし大蜘蛛も黙ってはいない。口元から褐色の液体が垂れたかと思えば──。


「リエッタさん、危ない!」

「っ!」


 ぶしゅうと液体を吐き出した! あれがレッドラインスパイダーの毒!

 リエッタさんはそれを浴びないように横へステップ。地面に落ちた液体はふつふつと泡を立てている。

 この蜘蛛、毒吐くんだ……危ないところだった。


「──隙ありッ!」


 リエッタさんは毒を吐き出した直後の硬直を見逃さなかった。

 次の毒を吐こうとしている大蜘蛛に向かって大胆にも近づいて、槍をそのまま突き出したの。

 大蜘蛛は急に目の前に迫ってきた槍を避けられず、口から胴体を貫かれた。

 リエッタさんは槍を手放して一歩下がり、大蜘蛛はのたうち回ったのち、動かなくなったんだ。


「リエッタさん流石っ!」

「さ、今のうちに撤退しましょう! トアムナちゃん、コア持つね!」


 リエッタさんが急いで槍を取り出すと、こちらへ近づいてトアムナちゃんのコアを片手に担ぐ。

 そして急いで元来た道を戻り始めたの。


「あううっ、ま、待ってくださいぃ……!」


 トアムナちゃんも急いで怪物状態から戻り、わたしたちについてくる。

 蜘蛛の大群は一瞬あっけにとられていたけれど、何匹かが追跡を開始したら再び動き始める。


 ひとまず広間に戻ってきたわたしとリエッタさん。

 だけど思った以上に蜘蛛がしつこく、トアムナちゃんの後ろをカサカサと追ってきていた。


「まだついてくるっ! 入り口まで逃げないとダメ!?」

「多分逃げることができるけれど、入り口に居座られたら探索どころじゃないね……」


 そう、あんな数の毒蜘蛛が入り口に居たら、入るのだって大変になっちゃう。

 何とかして戻ってもらわないといけないけれど……帰るまでトアムナちゃんに壁になってもらう?


「ハル、良い考えがある! 降りるぞ!」


 そういってソラはわたしから無理やり降りて、通路の方へと歩き出す。


 止めようとしたけれど、ソラは聞かずに黒い砂を纏った剣を構える。

 通路からトアムナちゃんと蜘蛛が向かってきている。そんなに時間はない。


「トアムナっ! 柵は抜けられるな!?」

「へっ!? はっ、はいぃぃっ!」

「よし……! 宝剣フェルムよ! 今一度力を貸してくれ!」


 ソラの言葉に応じるかのように、フェルムがキラリと光った。

 そして、ソラは剣を通路に突き立てる。石造りの通路を物ともせず、剣が通路に刺さった。

 地面が少し揺れるのを感じる。これは……!


「──スパイクッ!」


 ソラがそう叫ぶと同時、ソラの前方から何本もの黒い針が地面を突き破って出現。

 そのまま通路の天井に深く突き刺さり、まるで鉄柵のように通路を塞いだの。

 トアムナちゃんはスライムの身体を生かしてするりと抜けてくるけれど、蜘蛛たちは別。

 抜けることができずに、即席の鉄柵にぶつかったり噛みついたりしていた。


「ひっ……ひぃ……こ、怖かった……」

「トアムナちゃん、大丈夫? コア返すね」

「あ、ありがとうございます、リエッタさん……」


 トアムナちゃんは自分のコアをもらうと、もぞもぞと服の中へ。

 服はさっきのドタバタで少し傷ついている。ううん、直してあげたい……。

 って、それどころじゃない! ソラが使ったアレ何!?


「な、なんとかなったな……」

「ソラ、まだ技を隠してたの!? すごいよ!」

「隠してたわけじゃないが……本来はこういう技じゃないんだがな」


 ソラが言うには、地面の中にある鉄分を集めて一気に放出する技……らしい。

 放出された鉄はまるで針のように地面から生えてくるんだって。

 今回はそれを利用して、即席の鉄柵を作ったの。


「なんにしてもすごい! というかみんなすごかったよ!」

「ハルちゃんの判断も早かったわ。ひとまずは安全だね」

「わたしはもう必死だっただけだから……でも、えへへ、ありがとう」


 リエッタさんに褒められて上機嫌なわたし。

 我ながら単純だな……なんて思うけど、うれしいからしょうがない。


「で、でも、どうしましょう……先に進めなく、なっちゃいましたね……」


 トアムナちゃんが鉄柵を見ながら、不安げに言う。

 確かに、鉄柵を挟んでまだ蜘蛛がウロウロしてるし、先に進むのは大変だね。


「今後の行動を決めるのも含めて、一度休憩を入れないか? 僕は色々と疲れたぞ……」

「……そうですね、ツェペシュも綺麗にしないと」


 と、休憩を提案するソラと賛同するリエッタさん。

 特にわたしも異論はないや。トアムナちゃんも休ませてあげたいし。


 というわけで、わたしたちは戻ってきた広間で一度休憩することになった。

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