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第四十一話【初めての遺跡】

 ユク村を出て数日後、道中色々ありつつも……。

 森に囲まれた街道の分かれ道を進んだ先、少しだけ森が開けてきた所にわたしたちは居た。


「リエッタさん、そろそろかな?」

「地図だともう見えてもいい頃だけど……あっ、もしかしてあれかな?」


 しばらく進んだ辺り、リエッタさんの指差す方向に、大きな建造物が見えた。

 金属でできたそれは、太陽の光を反射して鈍い輝きを放っている。

 わたしはわあ、と思わず声をあげてしまった。


 歴史の授業でしか知らなかった人間の遺跡が、今目の前にあるのだ。


「すごく大きい、ですね……思ったよりも、ずっと……」

「これでも小さいほうらしいわ。ここは小さな町ぐらいの大きさだけど、それこそ都市レベルの大きさの遺跡もあるとか」

「ふえぇ……探検が大変そう、ですね……」


 リエッタさんの話を聞いて驚くトアムナちゃん。

 この大きさで小さい方だなんてびっくり……。


「この様式は……うむ、本で読んだことがあるぞ。確かに古代の建築様式だ」

「ソラ、知ってるの?」

「王宮じゃ嫌と言うほど勉強したからな、歴史の授業で覚えたぞ」


 背中に乗ってるソラがふんすと偉そうにしてる。

 もう、すぐ調子に乗るんだから……。


「かつて地上に居た時、僕たち人間は外敵から身を守るために防御の硬い城塞を築いていた。金属で作られた外壁はその名残だな」

「なるほど……ですが王子、ここまでの防御を備えないといけない外敵とは一体なんだったのです?」

「"魔物"だとされている。人間と相反れぬ存在、邪悪の化身……授業ではそう教わった」


 魔物……確かハーピニアで、ソラはわたしたちの事を魔物だーって言ってたっけ。


 魔物っていうと、まだ小さかった頃にお母さんに読んでもらった絵本に出てきた存在。

 悪い子は恐ろしい人間に捕まって、魔物にされちゃうってお話だった気がする。

 魔物になった子がどうなっちゃったのかは知らないけれど、その頃は本当に怖くて震えてたっけ……懐かしいなぁ……。


 って、思わず懐かしんじゃった、てへ。

 でも、ソラの言う魔物ってその魔物とはなんだか違う気がするな。


「ねえソラ、もしかしてソラの言う魔物って……」

「ああ、地上に居る全ての生き物が魔物だと教わった。だから僕はあの時ハルに剣を向けてしまったんだ」

「やっぱそっかぁ……あ、そんな申し訳無さそうにしないでよ! もう済んだことだしさ」

「……うむ」


 少しだけ声のトーンを落として話すソラ。ちょっと気にしてるのかな。

 まあ、あの時は慌ててたし、しょうが無いよね。

 多分、同じ状況ならわたしだってああなると思う。


「で、でも……人間以外が、魔物だなんて……他の種族を、一切拒んでる感じがします、ね」

「実際そうなのだろうな。人間は一度、力で世界を制した。タロスの有無に限らずとも、それは事実であるとこの間読んだ本に書いてあった。だがある時、人間はその支配を他の種族に譲ることになる……さて、支配を奪われた人間という種族は、どうなると思う?」


 ええと、要は他の種族を力でねじ伏せてたってことだよね?

 でもそれが出来なくなった……とすると、やっぱり──。


「……他種族による迫害、でしょうか、王子」

「僕もそうだと思う。魔物だなんて今世まで言い伝えるぐらいだ、徹底的にやられたのだろう。それこそ、このような遺跡を作らないと生きれないくらいに……」


 うん、確かに……やり返されたって感じなんだろうね。

 地上にはもう人間の居場所は無くて、こんな大きな建物の中で生活するしか出来なかったんだ。

 憶測に過ぎないけれど、なんだか可哀そうだなと思いながら、わたしはそびえる遺跡の入り口を見上げていた。


「……本題と逸れてしまったな、この遺跡の奥に扉があると言っていたのは覚えてるか?」

「うん、どうしても開かないって言ってたよね」

「ああ、そして僕の持っている"宝剣フェルム"なら開くかもしれないと、ラルスは言っていた」


 ラルスさんが言うには、人間の遺物なら何でも動かせるって話だったよね。

 つまり、絶対に開かない扉も人間の遺物である以上、開けられる可能性があるってこと。

 どういう原理で開くのかは分からないけれど……行けば分かるのかな?


「その先にきっと、かつての人間が大事にしていたものがあるはずだ。それが空を飛ぶ技術かは分からないが、ソラジマへ行く手がかりを得るには、遺跡を確かめるしかないだろう」

「そうですね、王子。……何が待ち受けているか分かりません、護衛はおまかせを」

「いざとなれば僕も戦うぞ、リエッタ。お前一人だけに任せてはおけないからな」

「ありがたいですが、無茶だけはしないで下さいね。……ハルちゃんも、危ないと思ったら逃げるのよ」


 真面目な表情でわたしとソラを見るリエッタさん。

 罠があるのか、それとも恐ろしい動物が住み着いてるのかは分からないけれど……注意して進まなきゃね。


「あ、あのぉ……私は、戦闘とか出来ません、ので……こっそり、陰で見守ってますね……」

「いや、あの怪物の姿は使えるぞ? トアムナ。いざという時は盾になれ」

「うえっ!? あうぅ……あれ、そんなに万能じゃないぃ……」

「冗談だ、薬の調合でもしててくれ。怪我をした時は頼む」


 あ、トアムナちゃんほっとした表情してる……分かりやすいくらいに……。

 怪物の姿なら確かに囮にはなるかもしれないけれど、流石に可哀そうだから、こっそり隠れてもらおう。


「ハルはいつもどおりだ、任せるぞ」

「もちろん! ソラもいつもどおりどっしり構えててよ」

「うむ……よし、では──」


 あ、否定しないんだ……なんて思ったけれど。

 ソラはすうっと息を吸って、力強く宣言。


「これより遺跡探索を開始するッ!」


 自信満々な幼い号令が、静かに佇む遺跡の辺りに響いた。

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