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閑話【ユク村から遺跡までの道中にて…①】

 ユク村を出発してから半日ほど経ち、もう日も暮れて野営しようということになった。

 進行としてはゆっくりなものだけれど、トアムナちゃんとの会話はとても楽しいもので……。


「へぇ、トアムナちゃんってキノコが好物なんだ!」

「は、はい……森の中でこっそり生えてるのが可愛くて、しかもおいしい、ので……むふぅ……」


 なんて、互いの好物について話し合っていた。

 トアムナちゃんはキノコが好物らしく、キノコについて語る時の表情はなんだか嬉しそう。

 わたし実は乾燥したキノコしか食べたことがないんだよね……。


「いいなぁ、ハーピニアの近辺じゃ新鮮なキノコなんて食べれないから、ちょっと羨ましいよ」

「で、でしたら、今からキノコ狩りでも……ど、どうです? なんて……」

「いいねいいね、大賛成! ソラ! リエッタさん! ちょっと行ってくるから!」

「あう、ちょ、ハルちゃん、あんまり引っ張られると、身体が崩れちゃ……あうぅぅぅ……っ」


 トアムナちゃんの服を引っ張って、街道沿いの森へと進むわたし。


「あらら、遅くならないように注意するのよー」

「まったく、元気な奴だ……僕たちは準備を続けよう、リエッタ」

「ふふっ、そうですね、王子」


 そんな二人の会話を聞きながら、奥へ奥へと進んでいった。

 採れたてのキノコが食べれる絶好のチャンス! これは逃せないよねっ!


「うぅぅ……あっ、はっ、ハルちゃんっ、ありましたよっ、とまってとまってえぇ……」

「おっ、流石はキノコ名人! どれどれ?」

「め、めいじん……」


 しばらくトアムナちゃんを引きずってたけれど、早速見つけてくれたみたいっ。

 やっぱり普段見慣れてるからか探すの上手いなあ……わたしも真似してみよっと!


 さてはて、トアムナちゃんが見つけたキノコは、と……?

 めっちゃ紫色で、白い斑点……ええと……。


「ねえトアムナちゃん、これってもしかしなくても……」

「"ミワクキノコ"、ですねぇ……ちょこんと生えててとっても可愛い……んふ……」

「うん、毒キノコだね?」


 トアムナちゃん、毒キノコも好きなのね……。

 きらきらした目でミワクキノコを見つめてるけど、有名な猛毒キノコだね。テミスさんのお茶にも入ってたけど。

 知らないで食べると数時間後にポックリ。まあ見た目が特徴的だから間違えないと思う……多分。


「可愛いキノコもいいけれど、わたし食べれるキノコがいいかなぁ」

「……はっ、すみません私、つい自分の世界に……キノコに目がないので……え、えへ……」


 少し照れながら、トアムナちゃんはいそいそとキノコから離れる。

 この好きっぷり、まさしくキノコマニアって感じだなぁ……。

 でも気持ちは分かるかも、わたしもはちみつを目の前にしたら堪えられるかどうか……むふぅ。


「ミワクキノコはポピュラーな毒キノコです、けど……これが生えてるってことは、近くにおいしいキノコも生えてるかも……です」

「へえ、そういうものなの?」

「は、はい、そうですね……あ、ちょうどそこに」


 そう言ってトアムナちゃんが指を差す先にはまたキノコ。

 手のひらぐらいの大きなキノコが二つ。赤褐色で、ちょっとだけ甘い匂いが……?


「立派な"レンニュウタケ"、ですねぇ……しかも二本……これは幸先がいい、です……ふふぅ」

「レンニュウタケ? うーん……食べれるの?」

「もちろんです……シチューに入れると、とってもおいしいんですよ……あ、あと、そうですね──」


 トアムナちゃんはレンニュウタケの片方を採ると、傘の裏を見せてくれた。

 無数のヒダが中心から外に向かって生えてるけど……?


「見ててください、ね」


 そういうとトアムナちゃんはカバンから小さなメスを取り出して、スッと傘の裏にキズを入れた。

 流石お医者さん、メス持ってるんだ……なんて思ってたら、真っ白な液体が切った個所から染み出てきたの!


「えっ、なにこれ!? キノコって樹液出るの!?」

「樹液……んふふ、樹液、とはまた違うかもですけど、キノコの中にはこんな面白いものもあるんですよ」

「へえぇ……! 他にも面白いキノコってあるの?」

「夜に光るキノコ、一晩しか傘を開かないキノコ、円を作るように生えるキノコ……ミワクキノコのように毒々しい見た目のものもあれば、大人しい見た目ですごい毒を持ったキノコまで……! 生態一つ一つが面白くて、可愛くて……!」


 トアムナちゃんはキノコのことで頭がいっぱいって感じで、両頬を抑えて首を振っている。

 なんかその、出会って間もないけど、見たことないくらい生き生きしてるなぁ……。


「ハルちゃんっ……! キノコについてもっと知りたかったりしますか、どうですかっ」

「え、あっ、う、うん、それなり、に?」

「んふふっ……!で、でしたら、私がいっぱい教えてあげますねっ、手取り足取り、傘の上から柄の下まで、じぃっくり……んふふふっ!」

「ちょ、トアムナちゃん? なんか顔が怖いけど──ふええっ!?」


 目を輝かせるトアムナちゃんにぎゅっと手を掴まれ、今度はわたしが力強く引っ張られる立場に。

 思わずよろけてしまうわたしだけど、トアムナちゃんはお構いなしで……。


「ま、まずですね、キノコの基本からお話しますね? えっと、私たちが見ているキノコって実はキノコの一部でして──」

「ちょ、待って、落ち着いて……うおっ力強っ」

「──そして、菌も生きてる細胞を好むものから死んでる細胞を好むものまでさまざまで、性質上育てるとしたら死んだ細胞を好む菌が育てやすくて──」

「あ、だめだこりゃ聞いてないわ」


 と、こんな感じで……キノコで暴走するトアムナちゃんに連れられながら、ちゃっかりキノコも収穫しつつ。

 ふと我に返ったトアムナちゃんと一緒に今日の野営地へと戻るのでした。

 ……キノコマニア、恐るべし。


                  ◇


 キノコ狩りから帰ったわたしたちは、野営の準備を終えたソラとリエッタさんに出迎えられた。

 わたしとトアムナちゃんは帽子をかご代わりにして、取れたてのキノコをたくさん持ち帰ったの。


「む、戻ったか……ん? どうしたハル、なんでそんなに疲れてるんだ?」

「ハハ……まあ、色々あったんだよ、うん……」


 まさかわたしが引きずり回されるとは夢にも思わなかったよ……。

 体力あるハーピーと言えど、流石に疲れたかな、うん……。


「うぅぅ……私ったら、とんでもないことを……穴があったら入りたい……」

「気にしないでいいって、トアムナちゃん。ちょっとびっくりしたけど、楽しかったよっ」

「あぅ……そ、そう言っていただけると、嬉しいです、けどぉ……」


 トアムナちゃんは自分が暴走しちゃったことを気にしてるみたい。

 でも好きな物に全力になれるって良いことだと思うし、なんだかんだわたしも楽しかったし!

 わたしは縮こまるトアムナちゃんの頭をぽんぽんとつい撫でて慰めた。


「ひゃ……ハルちゃん……?」

「ふふ、トアムナちゃんは心配しすぎだって、全然怒ってないから安心してね?」

「あぅ、はいぃ……でもなぜ頭を……」

「なんか可愛いからつい」


 トアムナちゃんはこう、小動物みたいな可愛さがあるよね……。

 だからつい撫でちゃっても仕方ないんだ、うん。


「はあ、まあ仲が良さそうで……ところでキノコはまだか? 僕はお腹がすいたぞ」


 ……こっちは可愛げがないなぁ。


「はいはい、焦らなくてもいっぱい採ってきたよ」

「ちゃんと安全な物だけを採りました、ので……怪しいものは採らない、これ鉄則……」


 わたしとトアムナちゃんの帽子の中にはどっさりとキノコの山。

 トアムナちゃんの助けもあって、山ほど採れたのだ。えっへん。


「わあ、沢山採ったのね。数日はキノコパーティが出来そう」

「キノコパーティ……むふ……」


 その量を見て驚くリエッタさんは、胸の上で両手を合わせてにこりと笑う。

 キノコパーティの単語にトアムナちゃんも嬉しそうに声を漏らした。

 確かにこれだけあればしばらくは食べ物に困らないかも。

 足りなくなったらまた採りに行けばいいしね、ふふっ。


「ではさっそくキノコ鍋と行こうじゃないか、鍋は用意してる」

「おっ、用意いいじゃんソラ!」

「ふふん、リエッタに教わって火も付けられるようになったんだ。火起こしはもう完璧だぞっ」


 えっへんと得意げに語るソラ。リエッタさんから野営について学んでたみたい。

 火起こしって難しいイメージあるし、なかなかやるじゃんソラ!

 ……王子様がやることかなぁ、なんて思っちゃったのは秘密。


 そのあと、わたしたちはみんなで料理することに。

 みんなでワイワイお喋りしながら、楽しくキノコを調理して。

 見事なキノコ鍋が出来上がる頃には、辺りは真っ暗になっていたのでした。

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