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第四十話【馬、騎士、メイド?】

「いやあしかし、大勢に見送ってもらえるなんてねー。まるで英雄の凱旋、って感じ?」

「まったく……ハルは調子に乗りすぎだ。そんな調子だといつか痛い目を見るぞ」

「痛い目ってなにさ、嬉しいことは素直に喜ばなくちゃ! それにソラだって得意げにしてたじゃん」

「……ぐぬぬ」


 村の外へと向いながら、わたしたちはそんなことを言い合って。

 その様子をリエッタさんがふふっと面白そうに見ていたの。


 すれ違う村人の人たちも手を振ってくれて、わたしはちょっと上機嫌。

 本当、色んな人に見送ってもらえてなんだか有名人になった気分だなぁ。


 さてはて、そうしているうちに村を囲う柵を抜けて、しばらく歩いた先。


「リエッタさん、そろそろコウモリになる?」

「ええそうね、ここからなら思い切り走っても大丈夫そう」


 そう言ってリエッタさんがコウモリに変身しようと身構えた、その時──。


「はあっ、はあっ……まっ、待って……っ! 待ってくだしゃ、あううっ!」


 わたしたちの後ろからべしゃりと水っぽい音が聞こえてきたの。

 驚いてその方向を見ると、緑色の水たまりを作りながらトアムナちゃんが倒れて……倒れて!?


「え、ちょ、トアムナちゃん!?」

「うぇ……はいぃ……トアムナです……」


 もそもそと起き上がり?ながら、トアムナちゃんは再び座った体勢に。

 やっぱりその体勢が一番落ち着くのね……ってのはさておき。


「トアムナ、どうしたんだ? 僕たちを追ってきたのか?」

「ふう、ふう……はい、そ、その……ついて、きました……靴底にこびりついた、ガムの如く……」

「その例えはどうなんだ、お前」


 ふうふうと息を切らして、わたしたちの方を見上げるトアムナちゃん。

 一体どうしたのかな、何か忘れてたことでも……?


「トアムナちゃん、何か忘れてたことでも? 村の人たちはついてこなかったの?」

「わ、私だけですリエッタさん……えと、その……っ、じ、実は……!」


 ふるふると震えながら、トアムナちゃんは三角帽子をくいっとあげて。

 自信なさげで不安そうな表情だけど、それでも決心した表情を見せながら。


「わっ、わたっ……! 私も、旅に連れてってほしく、てっ! その……! ついて、きちゃいました……っ!」


 と、トアムナちゃんなりに力強く言ったの。

 わたしたちが驚いていると、トアムナちゃんは言葉を続けた。


「私、そのっ、弱虫毛虫の、臆病虫な自分を、変えたくて……でも、一人じゃできそうになくて……三人についていったら、きっと治るかなって、思ったんですけど……さっきは、勇気がでなくて……」

「もしかして、さっき言おうとしてたことって……」

「はい、えと……その通りです、ハルちゃん……一緒に、旅に出たいって、それが言えなくて……で、でも……! ティルちゃんや、村長さんが、勇気を分けてくれて……! 私、変わるためにやらなくちゃって思って、気づいたら、ここまで来ちゃいました……っ!」


 頑張って目線を逸らさないように、わたしたちを強く見据えるトアムナちゃん。


「私、戦いは得意じゃない、ですけれど……治療は得意、というか、出来ます、ので……っ! 邪魔はしませんし、出過ぎた真似も、しませんのでっ! お願いします、私を、皆さんの仲間に加えてくださいっ!」


 そう言い切ると、はううと力が抜けたように三角帽子をつまんで目線を隠してしまう。

 指先はふるふると震えているけれど、その思いは本物だってことはよく分かった。

 仲間が増えたら全速力で走ることが出来なくて、歩みは遅くなってしまうかもしれないけれど……。


「……ふふ、もちろんだよ! 仲間は多いほうが楽しいし、もうわたしたち友達だしっ!」

「は、ハルちゃん……っ!」


 わたしはにこりと笑ってトアムナちゃんに微笑んだ。

 それ以上に、わたしは彼女の言葉に心を打たれたんだ。

 自分を変えたいってのは、わたしも同じだし……何より友達だしね!


「ふふ、私も賛成っ。トアムナちゃんが来てくれたら嬉しいわ」

「リエッタさんも……あうぅ……っ!」


 リエッタさんも賛成してくれて、トアムナちゃんは嬉しさのあまりか声を震わせていた。

 一方ソラはというと……。


「……ふむ」


 と言うだけで、特に投げかける言葉は無い。

 むう、ソラってば、それはちょっと冷たいんじゃない?


「ソラ、何か言うこと無いの?」

「言うことか、そうだな……よし、じゃあこうしよう」


 そういうとソラはまたすごーく偉そうに、ふんぞり返ってトアムナちゃんを指差した。


「魔女トアムナよ、今日からこの僕に"メイド"として仕えることを許す」

「はうっ、め、メイド……ですか?」

「うむ、一見鈍臭そうだが、あの手術の時の腕は確かに素晴らしかった。それだけじゃなくその不定形の身体を活かし、複数の仕事を一気にこなす実力も見せてくれた。僕の身の回りを世話するメイドがちょうど居ないからな、お前にピッタリの役割だと思うのだが?」


 ……もうっ、まーた始まったソラの悪い癖っ! すぐ偉そうになるんだから!


「トアムナちゃん、要するに歓迎するよってことだから。話聞かなくていいからね」

「むっ、なんだハル、馬の分際で申し立てるとは生意気だぞ」

「馬は禁句じゃコラ」


 まったく、人に調子に乗るなって言っておきながら自分だって調子に乗るじゃん!

 いつか振り落としてやろうかな……なんて悪いことを考えていたけれど。


「……は、はいっ! えと、その……トアムナ、喜んで仕えさせていただきますっ……?」

「ちょ、トアムナちゃん真に受けなくていいよ!?」

「はうっ……」


 なんて言うもんだから、慌てて訂正。

 ちょっと純粋すぎる気がするよ、トアムナちゃん……。


「……うむっっ!」


 一方、うちの傲慢王子様は大満足したみたい。やれやれ。


「ふふっ、賑やかでいいな……楽しい旅になりそうっ」


 リエッタさんはリエッタさんでこの状況を楽しんでるみたい。

 ま、まあ……楽しければそれでいい、のかな? アハハ……。


 さてはてとにかくっ!


 わたしたちは新たにトアムナちゃんっていう仲間を加え、改めてユク村の遺跡へと向かうのでした。

 遺跡に何が待ち構えているかは分からないし、恐ろしい動物が住んでいるかもしれないけれど……。

 ソラジマへと向かうための第一歩を、この時しっかりと歩みだしたような、そんな気がした。

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