─世界観紹介・第一章─
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【トットコ平原】
ハーピニアのある"ハルピー山脈"から東に広がっている平原。
数多くの動植物が生息しており、ハーピーたちが好む背の高い草が各地に生い茂っている。
ハーピニアへと繋がっている山道の麓には厩舎があり、定期的に馬車が近くの街を行き来している。
ハーピニアを訪れる、もしくはハーピニアから旅に出る者は必ずと言っていいほど通る。
街道を通るならば危険も少なく、気候も安定しているため野営もしやすい。更に食材も容易に手に入るという、まさに旅の練習にはもってこいの場所。
しかし街道を外れると、野生の"タウロス"など危険な生物も居るため、決して油断してはならない。
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【タウロス】
"平原のベヒモス"という異名を持つ巨大な牛。主に長い草のある平原に生息している。
体高約三メートル、体長約四メートル、体重数トンという化け物牛。
荒く太い毛でできた長いたてがみ、鋭く太い角、異常に発達した筋肉と言った風貌は、まさに猛獣。
縄張り意識が非常に強く、縄張りに入った者は地の果てまで追い詰めると言われている。
その凶暴さから飼いならす事も出来ないため、生息地の街道は彼らの縄張りを避けるように設置されている。
かつてハーピーたちの先祖はタウロスの背に降り立ち、たてがみを毟り取ることで成鳥として認められたとされている。
しかしそんな風習はもはや昔の事、今やタウロスに挑もうとする者は大馬鹿者かよほどの命知らずだ。
だが、タウロスの素材は強固な防具の材料となるため、非常に高値で取引されている。
そのため、毎年のように欲をかいた旅人や密猟者が大怪我をして街に運ばれてくるのだとか。
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【スライム】
この世界のスライムは大きく二種類に分かれている。
それは高度な知能を持っているか否か。持っていると『知的スライム』、持っていないと『原生スライム』といった感じだ。
知的スライムは他種族と同じように人里で暮らし、同じように仕事や家庭を持っている。
会話もできるし相手を思いやる気持ちも持っている、端的に言えば『粘液人間』である。
スライム特有の特性や習性を除けば、彼らは一般的な知的種族とほぼ変わらない。
原生スライムは野生に暮らす粘液生物で、野生動物と同じように暮らしている。
姿は我々が知るような粘液の塊みたいなもの。高度な知性はなく、飽くなき食欲を満たすために生きている。
また、神経毒を持つ種類も居るため、スライムが出る周辺の街にはスライム用の毒消しが常備してある。
どちらも共通することは、内部に丸い球体のようなコアを持ち、それが破壊されると死んでしまうという事。
いわば心臓が丸見えのような状態なので、知的スライム達は傷つくことを恐れ、擬態したりして上手いこと隠している。
その特性のためか知的スライムは種族的に臆病で、他種族との交流は消極的。
しかし彼らの"不定形"という特性は非常に有用で、様々な仕事を任されてたりもする。
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【ヴァンパイア】
頭部に蝙蝠の翼が付いた種族。別名"吸血族"。
長命種で容姿端麗、蝙蝠に変身することが出来る能力を持つ。
そして何より特徴的なのが、"血の扱いに長け、血の味を理解する事ができるほど繊細な舌を持つ"という事。
訓練することで、相手の健康状態やどんな病気を抱えてるかも全て把握することが出来てしまう、まさに"生まれながらにして名医"な種族なのだ。
優秀な医者が多いほか、繊細な舌を持つことから"グルメ"になったり、容姿端麗の為"モデル"になる者も多い。
だが、かつて血を美食としていた時期があり、他種族をさらったり血を求めて戦争を起こしたりなどしていた。
そのため、未だに種族間の仲はあまり良くなく、多くの種族が混在する社会でヴァンパイアが出世するのは非常に難しいとされている。
ヴァンパイアだから、という理由で毛嫌いする者も少なくはないのだ。
戦争を頻繁に起こしていたのもあり、軍事力も中々のものがある。
特にヴァンパイアの騎士は槍の名手であり、槍を扱わせたら右に出る者は居ないとされるほど。
現代でも、ヴァンパイアの都市では槍を用いた武術大会が頻繁に開かれたりして、技術の継承を怠らないようにしているとか。
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【ヴァラム】
ヴァンパイアが治めている大国。"フェ=ラトゥ山脈"の北側にある事から、"ノース・フェ=ラトゥ"とも。
同名の人間たちが残した城とその城下町が首都で、街は機能していない蒸気機関で溢れている。
ヴァンパイアの技術者たちが一部を復元したものの、完全な機能を取り戻すには至っていない"遺跡の街"なのだ。
医学が発展しており、どんな重傷者でもたちまち元通りに出来るとされているほど。
また、街のシンボルでもある巨大な時計塔の中では、人間たちの技術、そして遥か昔に失われてしまった"魔術"についての研究がされている……とのウワサ。
人間学研究と医学の最先端をゆく大都市なのだ。
住民はヴァンパイアがほとんどだが、大昔の戦争で連れてこられた他種族の子孫も暮らしている。
他種族の中でも特に多いのがドワーフで、彼らは街の機能回復と特殊な武器の製造に一役買っているとか。
人材が豊富な代わりに、かつての人間たちによる開発と、ヴァラム自体が寒帯のため資源に乏しい。
そのため、他の国や街から資源を仕入れ続けなければいけないのだが、かつての蛮行によりその仕入先も限られているという、非常に厳しい立場に置かれている。
さらには数十年前に戦争も仕掛けられ、危機的状況にあるとされている。
ハルたちの居る現在の場所からヴァラムは遠いため、最新の情報がなかなか入ってこない。
今はリエッタの情報でしか知り得る事しか出来ない遠方の地なのだ。
現在のヴァラムがどうなっているのか、彼女たちが知る日は来るのだろうか……。
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【港町ツギーノ】
イリス大陸の東海岸線に位置する港町。東西南北にある四港町の一つで、大陸東部の玄関口。
ハーピニアからトットコ平原を北東に向かって馬車で数日進んだ場所にあり、馬車の定期便が行き来している。
大勢の旅人や商人で賑わうこの場所は、他の大陸からの輸入品が多く見られ、異国の香りを感じる事が出来る場所でもある。
住民のほとんどは交易商、もしくは船乗り。施設は宿が多く見られ 商店には異国の品物がずらりと並ぶ。
中でもひときわ目立つ建物が"アルプの酒場"と呼ばれる大きな酒場。
ツギーノに来たら必ず寄るべきとされる酒場で、他の大陸や各地域の情報が多く集う場所だ。
そして従業員は美男美女ばかり。夜には美しい踊り子たちが素晴らしいショーを披露してくれる。
この酒場はツギーノが誇る、究極の娯楽施設なのである。
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【イリス大陸】
この世界にある大陸の一つ。世界で一番、多種多様な種族が暮らしている大陸とされている。
あらゆる種族が集うこの大陸は、各種族が暮らす大きな街がいくつもあり、それぞれの街が国としての機能を持っている。
種族間での小さないがみ合いは少なからずあるものの、後述の議会でイリス大陸内での戦争行為は禁じられている。
大陸の中心地には各種族の代表が集う議事堂と、それを囲うように大きな街がある。
議事堂では毎年議会が開かれて、それぞれの国の方針や法律を決めたりしているのだとか。
数年に一度選出される議長が実質的にイリス大陸の代表であり、別大陸の国王と交渉する時は議長が行う。
俗に言う"イリス合衆国"という別名が、この大陸の最大的な特徴を物語っている。
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【シエル通貨】
人間が使用している通貨。地上ではすでに殆どが失われている。
銅、銀、金、白金の順番に価値が高く、白金貨を使えるのは人間の王族や貴族くらいなもの。
我々の世界の金額に合わせるのは省略させて貰うが、作中でソラが使用した白金貨は一枚で家が買える代物である。
ただし、地上でこの通貨は忘れられて久しく、人間学を学ぶ者ぐらいしか知っているものは居ない。
つまり、一般人からしたら『おもちゃ』と変わりない価値のない物である。
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【ツェペシュ】
ヴァンパイアの騎士が扱う槍の中でも、特に特徴的なのがこのツェペシュだろう。
蝙蝠の羽を象った装飾のついたこの槍は、強烈な斬撃と突きが可能なほか、特殊な機構を持っている。
通常、武器は斬ることで鈍っていくものだが、ツェペシュはむしろ"斬ることで鋭さを増す"。
つまり簡単に言えば、"戦闘が長引けば長引くほど強くなる武器"なのである。
流石に手入れをしないと錆びてしまうため、戦闘が終わり手入れをした時点で元に戻ってしまう。
しかし、このツェペシュを見た他種族の兵士たちは、"血を吸う武器"として非常に恐れていたとか。
特殊な機構を作らねばならないことから、大量生産は絶対にできない。
そのためヴァンパイアの騎士にとって、ツェペシュを与えられるという事は"絶対的な名誉"とされている。
ツェペシュを扱える者は騎士隊長や近衛兵、そして素晴らしい武功を挙げた者のみなのだ。
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【子持ちタウロス】
タウロスは基本縄張り意識が強く、群れない習性を持つ。
しかし稀に、成長した自身の子供と群れるケースがあるのだ。
特に巣立ったばかりの子供は、親の鳴き声に反応して集まってくるのである。
しばらくすればそのような行動は見られなくなるものの、その期間はまちまちで定かではない。
タウロス狩りを行う際は、繁殖期が近くない事、もしくは老いた個体を狙う事が定説となっている。
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【宝剣フェルム】
かつて魔法がまだ存在した時代に、魔法によって作られた二対の剣の片方。ソラが所持している。
別名"鉄の鍵"とも呼ばれ、人間が残した過去の遺物を動かすことが出来る。
"金属を操る"という摩訶不思議な力を持っている。
地面の砂鉄を集めて斬撃のように飛ばす、地面に突き刺して砂鉄を棘のように成形し任意の場所に飛び出させるなど、かなり多様な攻撃手段を持つ。
半面、海の上など金属の無い場所だとただの剣と変わりない。
この剣の真の使い道はもう一本の剣と合わせて使用することで、"タロス"という最終兵器を動かせることだろう。
しかし、そのタロスの存在も怪しいもので、所在は一切分かってはいない。
だが、それが動いた時。世界はタロスを操る者の意のままになると言われている。
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【二対の鍵】
ソラの所持する"宝剣フェルム"とソラの父が所持する"宝剣イグニース"の総称。
この二つの剣は魔法めいた不思議な力を持ち、人間の遺物を動かせるという共通点を持つ。
そして二つが揃う時、かつての人間が作り上げた最終兵器"タロス"を動かせると言われている。
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【タロス】
別名"鋳造の巨神"。恐るべき力を持つ、人間が作り上げた"神"であり、最終兵器である。
まるで山のように大きく、無限に近い動力を持ち、全てを焦がす熱線を吐き、巨大なハンマーを振るう。
ハルの言葉を借りるなら、"漫画に出てくる怪物"と表現しても良いほどの化け物兵器である。
かつての人間は、世界を自分たちの物にするためにこのタロスを作り上げた。
二対の鍵によって操られたタロスは世界をその力で支配し、その支配は十数年に及んだという。
しかしある日、"神の怒り"によって人間たちは散り散りとなり、世界は再び誰の物でもなくなったと伝説は語る。
タロスは未だに地上にあると言われているが、それが何処にあるのか分からない。
むしろタロスが地上に居たという痕跡すらも怪しまれているのだ。
しかし、ソラジマの人間の中にはタロスは居ると妄信する者が居る。
それの代表格と言えるのが、"ソラジマ革新派"と呼ばれる者たちである。
タロスは本当に存在したのか、しなかったのか。
二対の鍵の存在が地上に知らされた今、その論争は激しくなる一方だろう。
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【ソラジマ革新派】
ソラジマの議会の一派。"人類は再び地上に戻るべき"という主張を持つ者たちである。
彼らは"ソラジマの資源は枯渇しつつあり、地上に戻り資源を確保するべき"という考えを持つ。
しかしその真意は"タロスの復活、および人間による地上支配"だとソラは語る。
ソラは自身の父から革新派に注意せよと言われていた。
しかしある日、革新派の刺客と思わしき集団により襲撃され、地上へと落下することになる。
ソラは父にそのことを伝え、首謀者を探し出すべく動かねばならないと主張。
彼が一刻も早いソラジマの帰還を願うのは、そのためなのだ。
タロス伝説を信じている狂信者であり、狂った思想家と評される革新派の者たち。
彼らが地上に来た時何が起こるか、それは想像に容易い。
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【ブティック(ツギーノ)】
ツギーノのブティックは一風変わっている。
洋服のほとんどが輸入品で、各国の民族衣装や異国の香りがする衣装が並んでいるのだ。
まるで"洋服の国際展覧会"ともいえるその様相は、ツギーノに来た観光客を楽しませている。
ハーピニアから来る洋服もあるのだが、ツギーノ向けなのかハーピー特有の民族衣装が多いとか。
ちなみになぜか、端的にコスプレとしか言えないような、ちょっとセクシーな服も売っている。
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【ラルスカヌス号】
ラルスの船。中型船ほどの大きさで白い船体が特徴。
特殊な構造により、一般的な中型船よりもかなりの早い速度で渡航することが可能である。
半面、早さを追求したせいなのか船体は脆く、岩礁に乗り上げたら一瞬で大破する恐れがあるとか。
ラルスはこれを借金のカタに取られていた。
この船を取り戻すために、ラルスはイヤーな鬼上司の元でずっと働いていたのだとか。
取り戻した後は丁寧に甲板を掃除する姿が目撃されている。
口には出さないが、ラルスにとって大切な船なのだ。
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