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第二十一話【出発準備……?】

 次の日、出発の準備を……してるかと思うじゃない?

 わたしとソラはリエッタさんを連れてツギーノのブティックへとやって来たのである。

 理由? もちろんリエッタさんを大改造するため! あとプレゼントも兼ねてるけど!

 ソラは最初「まあいいんじゃないか」なんてそっけなかったけど──。


「どうでしょう王子? 似合いますかね」

「う、うむ……よく、似合っているぞ」


 ひらひらのドレスを着せたリエッタさんを見て、少し照れ臭そうにしていた。

 まったく、分かりやすいんだから……ソラのスケベ。


 にしても、リエッタさんは何を着せてもよく似合う!

 着せてるこっちもつい楽しくなっちゃって、いろんな服を押し付けちゃうの!

 リエッタさんは基本断らないから、ちょっとセクシーな服も着せちゃったりして──。


「ハルちゃん? これはちょっと恥ずかしいかな……」

「えー、駄目?」


 ……流石に踊り子っぽい服は駄目か、ちょっとスケスケの奴。


 ここツギーノのブティックはハーピニアとはまた違って、ちょっと異国の香りがするものばかり売ってるの。

 ハーピニアから来てる服もあるけれど、南国風のものもあれば砂漠の人が着そうなものまで。

 まるで洋服の国際展覧会みたいな様相で、見てるだけでとっても楽しい。


 ハーピー用の服もあったけれど、今日はリエッタさんの為に来たんだから我慢我慢。

 あとちょっと、露出が多くて恥ずかしいってのもあるけれど──。


「ハルちゃん、これ着ないの?」

「えっ」


 あ、あのー、リエッタさん?

 その手にお持ちなのはわたしがスルーしたハーピー用の──。


「うふふ、()()()()?」

「アッハイ、着させて頂きます」


 こ、これが大人の圧力ってやつか……逆らえない……!


 …… …… ……。


「ふふ、とっても可愛らしいよ、ハルちゃん?」

「うう、あの、恥ずかしいんだけどこれ……もう着替えていい?」

「だーめ♪」

「そんなぁー……」


 散々お人形さんみたいにしたせいかな、ちょっと怒ってるみたい……うぅ……。


「む、むう……」

「王子、ハルちゃん可愛いですよね? うふふっ」

「う、うむ……中々似合ってるではないか」


 ほらー、ソラも顔そむけちゃってるしさぁ! うえーん、恥ずかしいよお!


 わたしが着たのは金色の刺繍が入った真っ赤な民族衣装……なんだけど、スカートに長いスリットが入ってて、こう、太ももが落ち着かない。

 ツギーノの宿通りで肉まん売ってるカタコトのお姉さんが着てたけど、なんでブティックにこんなのがあるのさ……。

 こんなところ、イチカとかに見られたら絶対笑われる……リエッタさん許してぇ……。


「そ、その、そうだな、うむ……馬子にも衣装というやつだな!」

「ソラ、それ喧嘩売ってる?」

「フッ、何もおかしくはないだろう、お前は僕の馬だし──あだっ!?」


 わたしは無言でソラにハンガーを投げつけて、ぴしゃりと更衣室のカーテンを閉めた。まったくもう。


                  ◇


 リエッタさん大改造……と、わたしの公開処刑を終えた後。

 わたしたちはアルプの酒場で昼食を食べて、ふらふらとツギーノを観光していた。

 あまり見て回る時間はなかったので、こうして改めて観光すると色々と発見がある。


 まずはツギーノに来る交易商人さんたち。大半が南国出身の人みたいで、ちょっと変わった服装をしているの。

 その南国出身の大半がナーガ族かラミア族。どっちも下半身が蛇なんだけど、男か女かで種族が変わるんだって! 不思議だよね。

 この蛇族の皆さんはアウェロー大陸よりも離れた"オキュペ島"っていう大きな島から来てるみたい。

 ちょっと香辛料の匂いが漂っていたから、多分香辛料を運んでるのかな? そのあたりは分からないや。


 あと多いのがやっぱり観光客。ぐるっと見渡すと本当に色んな種族が居るんだ。

 獣人(セリアン)、アラクネ、オーク、スライム──あ、原生スライムとは別ね? 知的スライム族ってやつ。

 とにかくいっぱいの種族がやってきて、ハーピニアだったり大陸の中心部へと向かって行くの。

 ハーピニアにも観光客は来るけれど、こんな大勢の他種族は中々見る事はない。


「ハル、ちょっと待ってくれ、疲れた」


 わたしが観光を楽しんでると、いつの間にかソラとリエッタさんを置いて進んでいた。

 おっといけない、夢中になり過ぎちゃったな。


「ごめんごめん、つい楽しくって」

「ふう、まったく。お前はいつも元気いっぱいだな」

「えへへ、なんなら背中に乗る?」

「いや、ここじゃやめとこう」


 むう、何今更恥ずかしがってるのやら、まあいいけど。

 なんだかんだ観光していたら、いつの間にか夕方の時間。

 そろそろ宿に帰って、またお風呂を楽しもうかなーって思ってた時。


「おおっと、なんか見慣れた顔だなと思ったらあ!」


 ふと声のする方を見ると、何だか変な雰囲気のラルスさん。

 ちょっとふらふらでお酒の匂い……あ、これ酔ってるな。


「えっと、ラルスさん? もしかしなくても酔ってますよね?」

「うええいっ! 気分は最高潮! もータウラス狩りのラルスだなんてあだ名つけられちゃってもー、最高!」

「ろれつ回ってませんよ?」


 この人、今日は準備があるかなんか言ってたけど、今の今までお酒飲んでたんじゃ……。


「ラルスさん、準備は大丈夫なんですか?」

「んおっ!? そこにおわすは女神様!」

「リエッタです」

「ツレないよおリエッタちゃあん……まあまあ聞いてくれよ、タウロスの素材が予想よりも高く売れちゃってさあ、残った借金の倍を借金取りに叩きつけてやったわけ! てやんでえい、持ってけドロボーってねえ! そしたらそいつら目ェん玉まん丸にしてさ──」

()()()()()()()()()()()?」

「んひっ! こ、こわいよおリエッタちゃあん……ちゃんと準備は済んでるから、怒らないで? ねっ? ねっ?」


 お、鬼のような形相のリエッタさんと両手を合わせてへこへこ頭を下げるラルスさん。

 なんだか力関係が着実に構築されてる気がする……主にリエッタさんが上位で。


「ふう、ならいいですけど」

「ほっ……ああそうだみんな、ツギーノから出る前に見て欲しいものがあるんだよ」


 そう言うとラルスさんは懐中時計を取り出して時間を確認する。


「うーん、まだ少し早いけど、席取っといてもいいかもしれないな」

「席? 一体どこに行くつもりなんだ、劇場か何かか?」

「ふっふっふ、ソラよ、そこは劇場よりも素晴らしい場所さ……!」


 そういうラルスさんはソラの背中を叩き、いくぞー! と大声をだして歩き出した。

 もう、少しは周りの目を気にしてほしいな……恥ずかしいじゃん。

 それにしてもラルスさんの歩いている方向って……"アルプの酒場"?


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