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第二十話【アウェロー大陸】

「ラルスさん、考えってなんですか?」

「ソラの剣が"鉄の鍵"と呼ばれているのはさっきも聞いただろう? それはタロスを動かすためだけの物じゃあない。大昔の人間が残した遺物なら何でも動かせる、いわば"マスターキー"なのさ」

「人間の遺物を動かせる……って、つまりそれじゃあ──」

「ああ、多分ハルが考えている通り、各地の遺跡を巡ろうかと思ってる。ソラジマを飛ばした過去の人間たちなら、何か試作品でも残してるんじゃないかと思ってね。その試作品さえ見つかれば、俺たちでもきっと空を飛ぶ乗り物が作れるかもしれない」


 ラルスさんが言うには、人間の遺跡にはどうやっても開かない"開かずの間"が存在していて、調査が進んでない場所が多いそうだ。

 つまり、ソラの剣ならその開かずの間を開くことが出来るかもしれないと、ラルスさんは考えていた。


「元々各地の遺跡を当たってみるつもりだったけど、ソラのお陰で未探索域を調査出来るかもしれない。もしかしたら危険な物もあるかもしれないけれど、空を飛ぶ技術を研究していたとするなら多分そこが一番怪しいはずだ」

「じゃあ次の目的地は近場の遺跡ですか?」

「その通り、と言ってもイリス大陸にはほとんど人間の遺跡がないから別の大陸に渡る必要がある。ここから一番近い大陸は"アウェロー大陸"、かつて大勢の人間が住んでいたとされる大陸さ」


 アウェロー大陸……! 授業だと内陸部はまだまだ未開の地が多い危険な大陸って言ってたっけ。

 イリス大陸から渡る船は多いけれど、海賊が活動しているから渡るのにも命がけだって聞いた。

 なんだかワクワクするのと同時に、ちょっと怖くなってきた……大丈夫かなあ。


「ハル、心配かい?」

「えっと、ちょっとだけ怖いかなって……」

「なに、哨戒船が通る安全な航路を辿るから問題ないさ。それに向こうにも知り合いがいるからねえ、ひとまず到着したらそこに行ってみよう」


 うーん……ラルスさんがそう言うなら信じてみようかな。


「よし、とりあえず今後の行動はそう言う事で! 俺は親父の船を点検しに戻るよ」

「む、そうか。出発はいつ頃だ?」

「うーん、とりあえず明後日かな、食べ物とか色々買わないといけないしさ。準備が出来たら連絡するよ」

「あいわかった」


 ラルスさんはそう言うと、手翼をひらひらと振って部屋を去っていった。

 残されたわたしとソラは今後について軽く話し合いを始めたの。


「アウェロー大陸の知り合い、か。また変な相手じゃないといいが」

「アハハ……まあラルスさんも真面目な時は真面目だしさ、多分大丈夫だよ」

「ううむ、いまいちあやつの事を信用できん……何か隠しているのは確実だしな」


 ソラはまだラルスさんの事を信用できないみたいだった。

 確かにただの船乗りにしては"色々知りすぎている"感は否めない。過去に何をしていたのかは気になるけれど……。

 でも、今はラルスさんの言葉を信じるしかないよね。どんな危険が待っているか分からないけれど、それでもソラジマへ行く手がかりがあるのなら、そこに行ってみるしかない。


「……リエッタはついてきてくれるだろうか」


 ふと、ソラがそんなことを呟いた。

 確かにリエッタさんはしばらく旅に同行するだけと言っていた。

 別の大陸へ行くなんてかなりの長旅になるだろうし、リエッタさんがまた一人旅に戻ると言えば引き留める事は出来ない。


 ついてくるのか来ないのか、その点ははっきりさせておかないといけないよね。

 ……わたし的には、ついてきてほしいけどさ。


「もちろん、ついていきますよ」


 と、扉の開く音と共に聞こえる声。

 後ろを振り向くとリエッタさんが扉を開けて入ってきていた。


「リエッタ、聞いていたのか」

「ハルちゃんの帰りが遅いので来てしまいました。アウェロー大陸に行くのでしょう?」

「うむ……しかし、いいのか? かなりの長旅になると思うが」


 リエッタさんはソラの言葉に強く頷いて、にこりと笑って答えたの。


「もちろんですよ、アウェロー大陸には私も用事がありますし」

「用事とな?」

「ええ、私の故郷ヴァラムはアウェロー大陸の北側にあるのです。遺跡を巡る旅ならきっと寄ると思うので、そこまでお供させて下さい」


 わたしは少し驚いた。もう故郷に帰るべきではないかもしれないと言っていたはずなのに。


「リエッタさん、ヴァラムに寄るって……」

「ハルちゃんと話してて、ちょっとだけ帰りたくなっちゃったの。どんなことを言われるかは分からないけれど、それでもちゃんとはっきりさせておきたくて」

「でもそれって、リエッタさんは──」

「ハルちゃん、気にしなくていいのよ? これは私の問題なんだから、ハルちゃんはソラジマに行くことだけを考えて? ……お願い」


 そういうリエッタさんの表情は、少しだけ悲しそうに見えた。

 もしかしたら重い罰を受けるかもしれないのに……なんとかならないのかな。


「むう、よく分からぬが……とにかくついてきてくれるなら、僕としても歓迎する。これからもよろしく頼む」

「はい、こちらこそ誠心誠意をもって仕えさせて頂きます、王子」

「……うむっ!」


 そんなわたしの心配を他所に、上機嫌に頷くソラ。

 もう、ソラにちゃんと説明してあげなくちゃ……今はそんな雰囲気じゃないから言えないけれどさ。


                  ◇


 ──こうして、わたしたちの次の目的地は決まった。

 目指す先はアウェロー大陸。わたしにとっては初めての外国で、未知の世界。

 一体どんなものが待ち受けているのだろう? どんな出会いが待っているのだろう?

 ソラジマの革新派とか、リエッタさんのこととか、色々考えるべきことは山ほどあるけれど。

 今はとにかく、このふわふわのベッドでゆっくり休みたいと思う。

 ハーピニアに帰ったら、タウロスを倒したことをイチカやみんなに自慢したいな。──



 わたしは日記にそう書き記すと、日記を閉じてもぞもぞと布団をかぶった。

 リエッタさんは隣のベッドですでに眠っている。

 ロデオを何回もしたし、流石に疲れたんだろうな。


 わたしも今日はいっぱい走ったから、ちょっと疲れたな……。

 まさかソラを乗せて戦う事になるなんて夢にも思わなかったけれど。

 自分で言うのもなんだけど、良いコンビネーションだったと思う。


 また、ソラを乗せて戦う日が来るのだろうか。

 あんな怪物に大立ち回りだなんて、できればもうしたくはないけれど。

 でもきっと、家来を守るためだとかなんとか言って、ソラは戦おうとするんだろうな。


 ……まったく、動けないくせに自分勝手なんだから。

 生意気でワガママだけど、仲間思いな諦めの悪いヤツ。

 そんな時が来たら、せいいっぱいアイツの足替わりになってやろう。なんてね、ふふっ。


 ふああ……今日はなんだか……いい夢が見れそうかも……。

 明日はどんなことをしようかな……なんて考えながら、わたしは意識をゆっくりと手放した。

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