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アイドリングアイドル!  作者: 蒼原悠
★frontside★
9/12

9# ここから、これから

 



 星の巡るのはあっという間だ。つい先日まで夜空には(さそり)座の姿があると思っていたのに、いつしかそこには冬の大三角が堂々と星彩を放っている。大人になって歳を重ねるたび、体感時間の加速するのを文綾は惜しく思う。


「──今度は私がパンケーキおごることになるとはね」


 皮肉を込めて笑いかけると、向かいの席の日向は「ほんとだよ」とフォークを振り上げた。一年前のクリスマスに日向の給料で高級パンケーキを食べたのが、つい先日のことのように思い出された。あの時も日向は大層立腹しながらパンケーキを頬張っていた。そして今日もまた、仇とばかりにパンケーキへフォークを突き立てている。


「マジで有り得ないから! 『日向とはそういう関係になれない』って何よ! だいたい先にデート誘うようになったのはあいつの方だし、今更そんな言葉で振られて放り出されるこっちの身にもなってほしいもんだよ! ほんっとムカつく! 新しい彼女と一緒にどっかで超新星爆発(スーパーノヴァ)でも起こせばいいのに!」


 笑うに笑えず、文綾はテーブルの片隅で落ちそうになっていたメイプルシロップのボトルをそっと置き直した。仕事も恋人もいないクリスマスイブを過ごしてから、早くも昨日で丸一年。なんとか新たな仕事にはありついたものの、良縁には相変わらず恵まれないでいる。恵まれない理由にも目星はついているつもりだった。

 千代田区の紀尾井町に鎮座する『ホテルニューオーグマ』といえば、東京都心の老舗高級ホテルとして知名度抜群の存在だ。今日、文綾と日向が連れ立って訪れているのは、その一角にある高級パンケーキが名物のコーヒーショップだった。クリスマスイブを目前にして恋人に浮気をされたあげく一方的に振られ、傷心の独り身で聖夜を迎える羽目になった哀れな日向を慰めるべく、一年前のお礼も兼ねて文綾の方から誘いをかけたのだった。さすがは一流ホテルのコーヒーショップだけあって店内の客層もよく、変な浮かれ方をしているカップルも見当たらない。独り身同士の世を忍んだ密会を(もよお)すのにも都合がよかった。


「ごめんね、無理に予定空けてもらっちゃってさ」


 パンケーキを飲み込みながら日向がしょげた。「無理にでもないよ」と首を振ったが、彼女の眉は傾いたままだ。


「でも文綾のとこ、イブなんてイベントの依頼で大忙しじゃないの」

「まぁね。部署によっては大忙しって感じ。私が仕事を抱えてなかったのは偶然だけど、こないだまでは私も仕事でずっとバタバタしてた」

「やっぱ出来る女はどこに行っても出来るんだな」

「そんなことないって。まだ全然みんなの役には立ててないよ。明星みたいな商社とは雰囲気もまるで違うし」

「明星綜合物産と今のとこ、どっちが居心地よさげ?」

「今んとこ、今の勤務先かな」

「それならいいや」


 ふっと肩の力を抜いた日向は、「しかし文綾がイベント会社とはねぇ」と感慨深げにこぼしながら追加のシロップをパンケーキに垂らした。文綾も真似をしてシロップのボトルを取り上げた。喉元に絡んで残る濃厚な甘みが、一年前の記憶と結びついて柔らかに萌え出した。

 あの劇的なクリスマスイブの一日を過ごしてから間もなく、文綾は勢いのままに再就職を決めた。新たな就職先は有数の業界シェアを誇るイベント企画会社『テレスコープ・アクト』だ。面接で前職のことを聞かれ、明星綜合物産の名前を出したら一発で採用が決まった。イベント企画では様々な物品の調達が必要になる、総合商社に身を置いていた人材なら仕事の出来も申し分ないだろう、という判断がなされたと聞いている。


【我々の役目はスターを拝む天体望遠鏡(テレスコープ)の整備である】──。


 採用ページの冒頭に載っていた社長の言葉が、就職先選びの決定打になった。舞台上に乗る数多のタレントやアイドルたちがより美しく、より華やかに輝くことで誰かの目に留まるよう、天体望遠鏡のガラスを磨くのが私の役目だ。そうと信じて、まだ慣れない仕事に文綾はせっせと励んでいる。誰かのために尽くす仕事をしたいと願った点では、文綾の(こころざし)は前職の頃から少しも変わっていない。かつて文綾を押し潰した唯一無二の夢は、結果的には違うカタチとなって、ふたたび文綾の魂を燃やし始めたのだ。


「仕事って意味じゃ、日向のほうが今は日程の自由も利かないんじゃないの?」


 さりげなく話題を差し向けたら、日向はフォークを口から引き抜いた。「そうなんだよ」と彼女はカバンから手帳を引っ張り出し、十二月の一ページを文綾に向かって開いてみせた。

 ほとんど毎日のようにイベントやレッスンの記載がある。


「担当アイドルが売れっ子になるってのも困り事だなって最近は思うよ……。冗談抜きで引っ張りだこだもん、あの子たち。おかげであたしもちっとも休めない」

「去年まではたくさん休んでたのにね」

「ほんとだよ。去年まではあの子たちもあたしも完全にアイドリング状態だった」


 日向は大袈裟な溜め息をパンケーキに吹きかけた。赤ん坊に迷惑をかけられて喜ぶ親のようだと文綾は思ったが、余計なことを言うと日向の顰蹙を買いそうなので唇に封をした。ただでさえ振られてピリピリしているところに液体燃料を注ぎ込めるほど、文綾だって命知らずではない。


「あ、それ」


 不意に日向が声を上げた。指差す先には文綾のスマートフォンが転がっている。紐で結ばれた先に輝く大判のアクリルキーホルダーを、日向は指先でちょいと持ち上げた。


「まだ付けてくれてんじゃん」

「外すつもりないからね」

「いやー、嬉しいな。文綾に推してもらえると心強いよ」

「半分くらいは去年のイブに見つけてあげられなかったお詫びのつもりだけどね」

「そんなのもういいよ。なんだかんだ言って自分たちで戻ってきたしさ」


 ふっと鼻で笑った日向は、摘まみ上げたキーホルダーを丁寧にテーブルへ伏せた。

 キーホルダーには両面にAsteroidのユニットロゴと、三百番台の会員番号が印刷されている。ファンクラブに会員登録すると特典として送られてくる、FC会員限定の逸品だ。三ケタの会員番号が古参として崇められるようになった今となっては、ライブやイベントでファン相手に見せびらかすのがいささか誇らしい。古参アピールできるほど古株でもないくせに──と内心では思いつつ、それでも誰より深くAsteroidというアイドルの内実を知っている自負と優越感が、ついつい文綾の鼻を高くしてしまうのだった。

 ほんの一年前、ファンクラブ会員数二百人という零細アイドルだったAsteroidは、この一年をかけて大変貌を遂げた。その当事者となったマネージャーは今、文綾の前で優雅に紅茶を啜りながらパンケーキを頬張っている。彼氏に振られた件は早々に忘れたのだろうか。


「いつ頃だったっけね。Asteroidが急に売れ始めたの」

「今年の六月だよ。忘れもしない」


 日向は目を細め、手元のスマートフォンに動画を表示した。私服姿という異例の格好で舞い踊る三人の少女の姿が、舞台すぐ正面からの視点で鮮明に捉えられている。


「結局あれってどういう経緯だったんだっけ」

「あの子たちが去年のイブに勝手にイベント出演したのは前も話したでしょ。そこでファンに撮られた動画が今年の夏頃になって急にネットで拡散して、この可愛いのは誰だ! って大騒ぎになったんだよ。そりゃ分かんないのも当然だよね。イブにイベント出演してたなんて、公式の情報ではいっさい触れてないんだから」

「例の()()()()()()()()を名乗ったっていう人は誰だか分かったの?」

「全然。報酬も三人が自分でもらって帰ってきたし、連絡先さえ知らないって」


 フォークを置いた日向はふてくされ気味に頬杖をついた。()()()()()()()()を名乗った本人が眼前でパンケーキを食べていることを知ったら、果たして彼女はどんな反応を示すだろう。脳の血管が破裂して死ぬかもしれない。大切な友人に死なれては困るので、最低でも今後二十年はこの事実を秘匿し続けようと文綾は天に誓った。そして同時に、口を割らないでくれたAsteroidの三人にも感謝しなくちゃな、と思った。

 あれから文綾にも色々な事情が見えてきた。

 もとをただせばAsteroidの長年の苦戦は、「大手事務所所属の地下(ライブ)アイドル」という微妙な立ち位置に端を発していたと言っていい。なまじ大手の看板を背負っているがゆえに、よその地下アイドルのようにがむしゃらな売り込み戦略を取れない。しかし無名であるがゆえに事務所も彼女たちを優遇できない。そんな窮屈な立場に追い込まれ、日向の手探りのプロデュースに従い必死に活動を展開してきたAsteroidは、結果として三年もの長きにわたり辛酸を舐める羽目になったのだった。

 だが、あの飛び入りライブが三人の運命を変えた。演出のすべてを自分たちで組み立て、一曲限りのライブをやり遂げた成功体験が、彼女たちにがらりと活動の方向を切り替えさせた。女子高生アイドルらしく「等身大のわたしたちを見てもらいたい」というリーダー・明日菜の旗振りで、衣装は可愛らしさよりもカッコよさを意識したものに変わり、振り付けや曲作りも彼女たちの「素」を生かす方へ大幅に変化した。はじめこそ戸惑った古参のファンたちも路線変更にようやく馴染み、さて、今後の売り込みはどうしようかと模索に励んでいた過渡期のさなかに、『イブの奇跡』事件は起こった。大拡散された動画や画像に惹かれて多くの新規ファンが殺到した結果、Asteroidのファンクラブ会員数は一週間も経たないうちに一万人の大台を突破。あっという間に定期的な単独公演をこなせる規模に成長し、ついにはテレビやラジオの出演機会にまで恵まれるようになった。売れっ子の先輩である流星★こめっとを含め、まだまだ国民的アイドルと呼べるような存在には遠く及ばないものの、かつてのように光の当たらない小惑星だった時代をAsteroidは着実に抜け出そうとしている。


「ほんと可愛いよね、これ。私服だと自然体の可愛さが見えるなって思う」


 動画を一時停止しながら水を向けると、「あの子たちも喜ぶよ」と日向は苦笑した。路線変更の当時は日夜、ほとんど言い合いにも等しい議論を三人と繰り返したようで、当時のことを日向は愉快そうに思い返したがらない。


「あの子たちにとっては微妙っぽいけどね、その動画。特に佑なんか『何度もパンツ見えそうになってる』っていって嫌がって見返そうともしないし」

「あー、確かにな……。台形ミニスカだから余計にね」

「去年あたりから『越中』なんてあだ名までつけられて色気担当扱いされてるのが本人としては気に入らないみたいよ」

「丈が短い方が見られやすいからって理由でミニスカ穿いてるのに?」

「え、なんでそれ知ってんの」


 日向が目をむいた。しまった、知っているはずのないことだったか。泡を食って「ファンの噂話だよ」と大嘘をつくと、マネージャーは安堵の面持ちで元の席に戻った。去年のイブに知り得た情報を迂闊に口にすべきではないと、冷や汗のなかで文綾は自分を戒めた。


「ま、その通りだけどね。見られるのは嬉しいけどエッチな目では見られたくないってさ。思春期の子は考えてることが難しいわ」


 複雑な笑みを口元へ描き、日向は紅茶のカップへ指を伸ばす。

 文綾にはどことなく佑の心境が窺い知れる気がした。人は理想の自分を物差しにすることで現在の自分の価値や状況をはかり、その差異に夢や不満を見出す生き物だ。ただ注目されるだけでよかった佑にしてみれば、変態扱いを受けるのは本意ではなかったということなのだろう。──安心してよ、大概のファンはそういう目で見てないから──。本人が目の前にいたなら、そう呼びかけてやれるのに。

 オレンジの『あすちゃん』は明るい女の子。MCの日本語は滅茶苦茶だが、元気に満ちた華やかな笑顔は誰の心も射止めてしまう。

 ブルーの『まおっち』は爽やかな女の子。なんでもそつなくこなす分、他の二人に振り回される姿が不器用でギャップ萌えする。

 グリーンの『まゆう』は可愛らしい女の子。おっとりして内気な割には服装で攻めている上、歌う時の迫力と実力はすさまじい。

 文綾の知る限り、それがファンクラブ『I.S.S.』会員の総意だった。

 会員になるとき初めて知ったが、ファンクラブの名前は明日菜の考案した「一緒に・スターを目指す為の・三人組のファンの会」の略称だという。さすが明日菜の命名、と言わせんばかりの表題である。その絶妙に変なツボを捉えたようなネーミングセンスも含め、Asteroidの描き出す世界観は独特で中毒性も高く、それでいて初見の客をはねのけないおおらかさを(たた)えているのが大きな魅力だ。

 メンバーはまだ十八歳。

 ここから、これから、いくらでも大きくなれる。


「あっという間に春が来て、夏が来て、秋が来たと思ったらもう冬か。今年もおしまいだな」


 穏やかな空気の漂う店内へ目線を放りながら、しみじみと日向がぼやいた。釣られて文綾も店内に屹立するツリーを見上げた。クリスマスに(ちな)んだ曲の数々がしっとりと馴染む赤と緑の季節を迎えるたび、じきにカレンダーの最後の一枚がめくられるのを身体が感じ取る。少しばかり寂しくて、けれども未来への展望に満ちた年末の香りがする。


「来年はどうなっていくのかな、あの子たちもあたしも。こうなってくると先が全く読めないよ」

「売り込みの戦略は立ててるんでしょ?」

「そりゃ、ある程度はね。一過性のブームで終わられちゃ困るからさ。だけど世間とかメディアがどう動くかなんて、今の時点じゃ予想もつかないし。なにより本人たちの意欲がちゃんと保たれるかどうかもね……」

「また脱走するかもしれないってこと?」

「思い出させないでよ。トラウマなんだよ」

「気持ちは分かるけど、マネージャーの日向がそこを不安がってちゃダメなんじゃないの」

「分かってるよ。分かってたって不安になるんだよ。……それこそ、いくらあたしに熱意があったって、あたしはAsteroidのメンバーに代わってあげられないんだから」

「私の見解が聞きたいの?」


 日向は正直にうなずいてみせる。自信をもって腕を組み、文綾は口角を上げた。


「心配いらないよ。あの子たちは絶対、日向(マネージャー)の信頼を裏切らない」


 それはアイドルとしての衣を脱ぎ捨て、裸の心でレッスンを飛び出してきた三人と、丸一日をともに過ごした文綾だからこそ押せる太鼓判だった。そうとは知らない日向の胸にどこまで響くかは分からない。文綾なりの誠意を精一杯に込め、(うた)に乗せて届けたつもりだ。

 不安の光を弱めた日向も「そうかな」と身を乗り出し、同じようにして腕を組む。交わした視線が不可思議に絡み合い、こそばゆくなって笑い合いながら、文綾は手元のアクリルキーホルダーに目を落とした。汚れの一つも見当たらない透き通ったユニットロゴが、間接照明を反射して穏やかに燃えていた。



 ファンの急増を招いた『イブの奇跡』事件が起こるまでの半年間、文綾はAsteroidの三人へ会いに行けないでいた。今も大きな現場──フェスや二〇〇〇人規模の単独ライブ、ホールコンサートでなければ、うっかり姿を覗きに行くこともできない。どこかで偶然にも目と目が合ってしまった時、どんな顔をすればいいか分からなくなるのが恐ろしいのだ。ファン対応に慣れているAsteroidの三人が文綾の前で平静を保てたとしても、文綾には同じことをできる自信がない。だからこそ、イベント企画会社の門戸を叩いた。近しい業界に身を置き、それぞれの夢に向かって推進してゆけば、いつかはどこかで自然と軌道の重なる日が訪れるかもしれない。その天文学的な偶然が叶ったとき、はじめて文綾は素の自分で三人と向かい合える。そんな気がするのだった。

『イブの奇跡』が起きて間もない頃、初めて出演した音楽番組で、司会者はAsteroidの三人に「いちばん楽しかった思い出は何ですか」と尋ねた。代表して答えを求められた明日菜は、迷いのない眼差しでこう答えている。


──「去年のクリスマスイブ、マネージャーさんに黙って出演したイベントです」

──「わたしたちはあの場所でサンタさんに、一生忘れられない思い出をもらいました」


 録画していた番組を視聴していて思いがけず明日菜の言葉を聞き、涙を流した日のことは、今も文綾の記憶に新しい。たとえそれが永遠に表の歴史に刻まれることのない出来事でも、三人にとって文綾と過ごした去年のクリスマスイブは、忘れがたい思い出を胸に刻んだ奇跡の一日だったのだ。

 夢は大きいほど叶わなくなる。

 その信念が揺らいだわけではない。

 それでも文綾が夢を見ることを投げ出したくないのは、夢を諦めることだけが大人の宿命ではないと、大切な推しの三人に教えてもらったからだ。



 仕事という生き甲斐がある。

 誰かのために尽くすという夢がある。

 そして、暗い夜空の彼方で華やかに燃え盛り、遠い明日(あす)を照らしてくれる希望の星がある。


 松永文綾は、もはや不幸な女ではなかった。









 ──以上で「アイドリングアイドル!」本編は完結となります。

 ご愛読いただき、ありがとうございました!


「アイドル」という横文字には二通りの綴りが存在します。いわゆるアイドルを指す"idol"と、サボっていることを意味する"idle"。同音異義な二語を組み合わせたら面白そうなタイトルになるな──と着想したことが、本作の構想の発端でした。

 英語圏では「スター」の語がアイドルという意味に対応していることから、本作では登場人物や舞台、作中描写の多くを宇宙用語から採用しています。また、ヒロインが仕事をサボって遊び歩くという物語の軸が共通している古典ラブコメ映画「ローマの休日」についても、そのオマージュを本作の各所に潜ませています。作中に登場するアイドル三人の人格や容姿は、実在するテクノポップユニット・Perfumeをモデルにしました。テレビアニメ版「THE IDOLM@STER」のキャラクターも参考にしているかもしれません。サブタイトルを「グレイテスト・ショーマン」のオマージュに仕立てているところも含め、本作はとにかくコメディと感動の中に小ネタをふんだんに盛り込むことに腐心した作品です!

 いろいろな楽しみ方ができると思うので、何度も読み返してもらえたら嬉しいな……などと願ってみたり。


 本作のテーマは「夢」でした。

 オトナが夢を見るだなんて格好悪い。この国に生きる大人たちの多くは、その言説を否定しないと思います。作者は今年に入って大人の仲間入りを果たしましたが、夢を叶える力もない自分に果たして夢や将来の云々を語る資格なんてあるんだろうか? と、いつも不安を抱えながら仕事に臨んでいます。この「アイドリングアイドル!」という物語は、そんな自分自身の問いに答えを出すための物語でもありました。

 夢を語ることは何も恥ずかしくないと作者は思います。ダサいダサいと蔑まれるなら、いつか叶えて見返してやればいい。夢の語り方も、叶え方も、決して一通りではないのだから、僕らはもっと堂々と憧れを口にする勇気を持っていいはずだと思います。

 諦めかけた夢をふたたび押し抱いて、前に進み始める。本作主人公のOL・文綾は、夢との向き合い方を新たにした「オトナ」の姿を作者なりに探った姿なのです。


 ──では、もうひとつ夢を諦めかけていた存在(Asteroid)は、いかにして夢を取り戻したのでしょうか?


 ファンにもマネージャーにも、そして当の文綾にすら知られることのなかった、小さなアイドルたちの苦悩と決意の物語。

 続編「小惑星たちの軌跡」を、次話より全三話でお送りします。





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