少し寂しいけど初陣
三話目です
私、天瀬秋と、アリ達とのバトルが始まった。まず不用意に岩場に近づいてきた一匹に、横から魔物の骨で作った有り合わせの剣を思いっきり振り下ろす。
「はあっ!」
さすが虫、頭と胸が離れても動いてる。キモチワルすぎだよね。ただ巨大化したところで再生能力が大幅に上がった様子は見られないし、このまま放置でいい気がする。問題は音に気付いて向かってくる二匹。
正面からぶつかってくと、確実にあのデカイ牙と剣が相殺してもう一匹に襲われてしまう。ただね、人間には虫さんと違って脳みそという☆最強☆の武器があるのですよ。まあこの状況じゃ考える暇もないんだけどね。
私はまず崩落してできた岩場を登って、岩の上にアリを誘導する。それにしても結構高いな。3mくらい登ったかな?
アリは足場が不安定で急な岩場に苦戦しているようだ。そのうち、私は少し平らなところに着いた。上にはぽっかり穴が空いていて、天井が崩落したことを物語っている。
私が考えていることは簡単。上から落とせばいいじゃん戦法だ。これなら猿にもできそうだよね。猿×合戦では木の上から狙撃してたけど。
その時、私の近くに岩があることに気づいた。これを喰らえばひとたまりもないでしょ、虫さんよ。慎重にタイミングを見計らう。アリ達がもうすぐ登ってくる方へ転がす。
「よいしょ!」
音を立てて岩とアリが地面に転げ落ちる。脳みそ使えるっていいね!
だが、後から登ってきたであろうもう一匹のアリが運よく岩の直撃を免れていて体勢を立て直していた。さすがは虫、大した怪我もしてないようでもうすぐにでも起き上がりそう。
チャンスは逃せないし、すぐに降りてぶった切るべきだよね。
急いで岩場から降りる私。
「きゃっ!」
急く気持ちが抑えられず、1mくらいの高さで岩からうっかり手が離れ地面に落ちる。落ちた瞬間背中に痛みが走る。背中打つのって結構やばいんだよね。大丈夫かな。あ、ちゃんと手も足も動いた。今考えるべき問題は別だけど。
急いで体を起こすとすぐそばまでアリは迫っていた。痛む体を無理やり手懐け、立ち上がって剣を構える。
考えろ私、どうやったら勝てるか。他の魔物が近くに迫っているかもしれないしこれ以上派手に戦うのは危険だ。
考えろ私。
考えろ。
……。
まてよ?スキルがあるじゃないか。
わざわざ梟なんて書いてあったんだし夜目を効かせるだけのスキルじゃないと思いたい。攻撃はできなくとも、この状況を少しだけでも有利にできたりはしないかな。まあ普通に肉弾戦して負けるわけがないんですけどね?
スキルを使いたいと強く頭で念じてみる。ふっと頭に文字が現れた。声のような音も聞こえた気がする。
スキル、梟眼を使用スル
目のスキルだし目に力を込めてみる。
そうしていると、体に熱いものが走るのが感じられた。ふと見るとアリの動きが止まって見える。いや、止まっていた。
今がチャンス。アリにの方へダッシュして向かう。その間もアリは動かないままだ。
「たあっ!」
思いっきり頭を剣で叩き斬る。そういえば研いでもいないのに切れ味いいよねこれ。キモイから状況は想像にお任せする。
「ようやく進めそうだね…」
全く、このダンジョンのような建物の一番弱そうな敵にどれだけ時間かけてるんだ私は。この先にはきっとボスみたいに強いやつもいるんでしょう。ヤダヤダ。スキル集めて道具集めて楽しみたいだけなのに。なんでこんな暗くて狭いところにずっとい続けなきゃいけないのよ……。
突然、頭にさっきの文字が浮かんだ。
スキル:空間探知ヲ獲得
おっ!願ったりかなったり!
このタイミングでスキル獲得したってことは、、、もしかして敵を倒せばスキルが奪えたりゲットできたりするのかな。てことはこれはあのアリのスキルってことかしら。色々便利そうだしありがたくもらうわ!
早速「空間探知」を使ってみる。すると、周りの魔物の気配や物のある場所が脳裏にはっきりと感じられるようになった。気配を探ってわかったが、私のそばにいた魔物の中であのアリが一番強かったようだ。だから襲ってこないのね。魔物にもカーストがあるんだろうな。
もう一つ空間探知でわかったのが、魔力が存在することだ。これは完全に私の想像というか予想だが、気配の大きい魔物ほどその気配の周りに濃いオーラのようなものを放っているみたいで、それが魔力だと私は仮定したのだ。
アリさん、結構いいスキル持ってんじゃん。そして私に襲いかかってくれてありがとう。キモイけど。
一息吐いて気づく。そういえば今日まだご飯食ってなくね?いつもなら死んじゃうほどお腹減る時間のはずだけど、なぜか減っていない。もしかしてご飯食わなくても生きていけるのかしら。
スキル、旅人ノ効果ニヨル
また文字が浮かぶ。
は?なにそのスキル?いつ獲得したのさ?
いくつもの疑問が頭の中を駆け巡る。だがあの文字は頭に浮かんでこない。まあいいや、ここにいても魔物の肉食べることになるだけだし外出てからのお楽しみにしよう。出れるかわかんないけど……。
この疑問はおいおい解決していくとして、まずは先に進みましょうかね。
私は長い廊下を進んでいく。物陰から魔物がこちらを伺っている。警戒しているんだろう。
いくらか進むと下に続く階段があった。学校とかによくある横幅の広く一段が低い階段だ。空間探知を使ってみると、この階段はかなり下の方へと続いてる模様。ちょっと怖いけど進む以外やることないしさっさと下りますか。そうして長い階段に足を踏み入れる。どうやら階段には魔物はいないようだった。
それにしても1人は心細い。見えるとはいえ、くらいし、なーんにも音はしないし。正直お化け屋敷より怖いと思う。ホラーに耐性があってよかった。おかげで普通の魔物ならなんとかビビらずに済みそうだ。
ただひたすらに自分の靴の音を聞く。そういえば靴もあの時履いてたのと同じだ。
食欲に関しては変なスキルのおかげで全くと言っていいほど無いからいいんだけどさ、やっぱり風呂に入りたいよね。せめて顔と手だけでも洗わせてほしい。そういえば何も食べてないおかげでトイレには行きたくはならないな。
寂しさを紛らわせるためにそんなことを考えて階段を下ること10分くらい。ついに終わりが見えてきた。一体今度はどんな敵が待っているのだろう。怖さと緊張を感じながら次の階へと足を踏み入れる。
どうやら地下1階と同じ様子。唯一違う点といえば崩落した所がないということだ。確かにさっきの階には地面に穴空いてなかったよね。
その時だった。ぼんやりとした光の玉がゆらゆらと視界に現れる。とても綺麗だけどどこか弱々しい光。これは一体何かしら?
100年後の設定はちゃんと考えてあるので安心して読み進めてくださいね(ニッコリ
ところで主人公のスキル旅人って一体なんなんでしょうねぇ…