表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/29

旅の始まり

新学期になりワクワクしてる人、クラス替えに一喜一憂してる人が多いことでしょう。私は静かに1年を過ごせればそれで満足です。

 その日はクリムと一緒に近くの宿に泊まった。もちろん一緒に寝たりしないしあんなことやこんなこともしてない。そもそも私はJKだ、そんなことされてたまるかよ。


「おはようアキ~」


「おはようクリム…ってその髪…くくっ」


 眠たげな目をしながら隣の部屋からクリムが出てくる。寝癖がボサボサでなんだか面白くて笑ってしまう。


「なにさ、芸術的と言いたまえよ」


 宿の朝ごはんは昨日食べた緑色の穀類としょっぱいような酸っぱいような味のする汁物だった。なんだか和食みたいだよね。蛇足だけどやっぱり私の黒髪は目立つみたいで宿のしょくどうに入る時も何人かの宿泊者にジロジロと見られた。


「さてクリム君、君はこれからどうするの?」


 私はもぐもぐしながら聞く。食事のマナーが悪いって叱る人間はもう居ない。


「1度家に帰ろうと思うんだ。いいところだしアキも来ないか?」


 うーん…確かにこの世界をこれから長い間旅するとしたらいつかは通る道なのだろう。ちなみにクリムは西方パルティスの山岳地出身だ。彼が恵まれた体格を持っているのは生まれた場所が過酷な環境だったからだろう。


「転移魔術の研究をするために西海には行ってみたいと思ってたし途中まで行こうかな」


「ほんとに?アキかいると心強いよ!」


「私そんなに強くないってば」


「謙遜でしょ?あの時のアキのオーラ凄かったよ?」


「あれはもう忘れて!」


 そうと決まれば話は早い。早速準備に取り掛からねば。

 私は朝食をさっさと済ませクリムとこの後通るルートを確認しあった。ここは中央パルティスの東側、対してクリムの故郷は双剣山脈の麓、西方パルティスの玄関口にある。山を越えるルートはかなり険しく魔物も多発するそうだ。一応リルさんにも聞いてみたけれどそこまで強い魔物は生息してないらしい。


(ただしあそこには小竜が生息している区域があるのでそこだけは注意が必要です)


(何が厄介なの?)


(まず飛行能力が高く動きが捉えにくいこと。そして個体によっては雷や火を吐いてきます)


 だそうだ。確かに少し前の私にとっては強敵だったかもしれないけどもう今は平気だ。


 宿屋の女将さんにも髪のことを聞かれたが適当に流しておいた。ここはパルティスの直接の支配地じゃないからいいけど、これからは偽名でも使わないとジーノウ達に存在が知られちゃうな。


「とりあえず山脈の東側の麓のラーズって街までは国営馬車を乗り継いで行くよ」


 クリムと城門の近くの駅まで歩きながら話す。


「あーその事なんだけど私実は事情があってパルティスに名前と顔を知られたくないんだ…だから徒歩とか私設のものにできないかな…?」


 一瞬クリムはぽかーんとし悟ったような表情になり薄く笑う。


「ははーん、さては親元を無許可で離れて捜索されてるんだろ?」


「そう、そうなんだよ…だからどうしても見つかる訳には行かないんだよね」


「アキがそう言うならもちろん道は変えるさ、それに新しい名前も必要なんじゃないの?それとももうその名前も偽名なのかい?」


 うっ、痛いところを突いてきますな。私の中ではクリムは恐らく信用できる男だから今更そんなこと心配する必要はないとは思うけど。でも気軽に名前を教えてしまったのは確かにミスだ。


「じゃあラナなんて名前はどう?うちの地域ではよく付けられる名前の一つさ」


 ありきたりの名前をつけてもらうのは助かる。特定が難しいのもそうだけど意外と可愛い名前なんだよね。


「ありがとう。新しい名前として大事に使うね」


「気に入ってもらえたみたいで良かったよ」


 こうして私はラナというこの世界にありふれた冒険者になったのだ。



 ◇◇◇



 駅で西方へ向かう商人の一行の馬車に乗せてもらい、私たちはゆったりと旅を楽しんでいた。私たちは格安で乗せてもらう代わりに席は馬車の荷台の一番後ろの荷物と一緒の場所だった。て言っても全部が全部新鮮だから全然気にならないんだけどね。

 目の前には青い草原とその間を突っ切る石畳の道が延々と続いている。馬車は四台あって私たちが乗るのは最後尾の馬車だ。今はもう街の城壁もかなり遠くに見える。この辺りは気候は日本で言う春で、雨はかなり少なく過ごしやすい。途中途中に広大な畑が広がっていて、そこではよく目にする緑のコメのようなものが育てられているようだ。


「ねえおじさん」


 私は商人の1人で私たちを快く馬車に乗せてくれた髭面の男に尋ねる。


「なんだいラナちゃん?」


 荷物の向こうで声がする。


「ラーズまであとどのくらいかかるの?」


「うーんそうだなあ…」


「それには僕が答えよう。ズバリあと二週間さ!」


 クリムがまるで◯尾くんのような調子で答える。


「おっ、よくわかったなあ。俺もそのくらいだと思ったんだ」


 それはそうだろう。だってクリムはこの辺りの地形は何度も通っているらしいし。そもそもなんでクリムは冒険者になろうと思ったのだろう。


「おじさんもう一つ気になったことがあるんだけど」


「お?俺の過去でも知りたくなったのかい?そりゃあなあ…」


 おいまだ話し始めてないだろう。人の話は最後まで聞きたまえ。


「いやそうじゃなくて、なんで護衛みたいな人がついてないの?」


「確かにな。このルートだと途中で龍谷関を通過するだろ?本当に大丈夫なのか?」


 おっと知らない地名が出てきたらリルさんの出番だ。じゃあみんなも一緒に呼んでみよう、おーい!


(なんですかアキ。ラナなんて可愛こぶった名前を名乗って…それに私は辞書じゃありませんよ?)


(ごめん、でさ龍谷関って何?)


(龍谷関、ドラゴンバレーなどと呼ばれる古代からの要所で、何でも何処ぞの王が聖剣の力を扱いきれずに地面にたたきつけた時に出来た谷だそうな…)


 神話か?いやいや、私が求めてるのはもっと現実的、科学的な由来なのだよ。これでも自称進学校の生徒だからな!ってもうその肩書きは意味無いけど。


(剣をたたきつけた時に巨大な溝が出来たのは本当です。そこに洪水時に多量の雨が流れ込んで侵食が起こって深い谷が出来たようです)


(そう!そういう回答待ってたんだよ!で、そこの何が危険なのかなって思って)


(そうですね、龍谷と言われるくらいですし龍でもいるんじゃありませんか?)


 リルさんは急に適当なことを言い出す。


(随分適当だね…)


(私行ったことないですから)


 なるほどね。ただ天然の要塞みたいな地形みたいだし盗賊やら何やらが出るのだろう。私が護衛の話を切り出した時に示したクリムの反応がその裏付けだと信じたい。


 そうして一行がゆったり旅をして1日近く、日が暮れ始めた頃、特に何事もなく隣街が見えてきた。





~旅人の能力~

・身体強化

・魔力炉

・環境適応

・スキル複製

・銀髪金眼に変身

・???


使用者が旅をしている限りその効果は途切れることがない祝福スキル

アキは魔力炉の20%しか引き出すことが出来ない


~スキルについて~

・通常スキル 一般的なスキル。汎用性が高いものから低いものまで。個人の努力や技量により身につく。

ex)錬成 魔力操作 etc

・先天性スキル 生まれつき持っているスキルで、血統による固有の能力や偶然持って生まれたりする。希少度が高く強い戦闘能力などを有することもしばしば。

ex)剣才 梟眼(アキは魔物から複製) etc


・祝福スキル 世界の理を超えた者(転生者、大魔道士等)が神から与えられる常識を覆すような極端な能力を持つスキル。クラス分けされている。

ex)旅人 豊穣神 境界 etc


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ