街には出会いが溢れている
卒業式シーズンで街で着物姿の女性をよく見かけるのですがすごく綺麗ですよね。
また間が空いてしまいました。すいません。
城壁の外にの門には門兵が1人つまらなそうに欠伸をしながら立っていた。もともとここはダンジョンに挑戦する冒険者が多く利用する街で、内陸部にあるため門兵の仕事はあまり多くない。じゃあなぜ城壁があるのかって?それは昔戦争があったからだよ!とリルさんは言っていた。
街に近づくにつれてこの街結構人の出入りが多くなっていった。どさくさに紛れて入れたりしないかな。門は人5人が並んで通れるくらいの幅で高さは4mくらい。私は門の方へ歩いてくる地味な身なりの大柄な男を見つけその影に隠れた。そして門兵が眠たげに瞬きをした隙を逃さずダッシュ!潜入成功!やったぜ!
(意外と簡単に入れたね〜)
(今のアキの動きを捉えられるほどの門兵はこの街にはいませんよ…)
私は少し得意げになる。て言っても多分今の私と互角のスピードで走れる人間なんて早々いないのだろう。ていうかいないことを祈るばかりだ。
さて街に来たとなれば…
「久しぶりにちゃんとしたご飯が食べたいな…」
そうこの世界に来てから私が食べたものは味の薄くて硬い魔物の肉と木になっていた毒々しい色の果実だけなのだ!塩胡椒がかかってて香ばしい肉やあったかいスープを想像すると大量の唾液が湧いてくる。
(それよりもまずその目立つ服装をなんとかしましょうよ。すぐジーノウら王都の人間に漏れますよ)
(確かに…こんな制服じゃ目立つよね…)
現に道行く人々がこちらをチラチラ見ながら通り過ぎていくのがわかる。今は迷宮産業は衰退して中継地として商業が盛んなようでいろんな身なりの人が通っていく。ただ獣耳が生えていたり翼が生えていたりする者は全くいない。やっぱりあのヴェート教っていうのが盛んなせいなのかな。
そんなことを考えながら服屋を探していると…
「よう姉ちゃん、この辺では見ないなりしてるじゃねえか」
「どうせ暇なんだろ?俺たちと遊ばね?」
出たよこういう役回りのキャラ…。パンクしたような頭髪に全身黒装備、怖いお兄さん2人組。ちなみに私、ナンパ野郎に絡まれるの初めてです。
「え、えっと遊ぶのはお断りだけどオススメの服屋さん知らない?」
「「は?」」
2人組が怪訝そうな顔で聞き返してくる。
「いやいや、俺らと遊ぶのが先だろ」
「その格好お似合いだぜ?わざわざ買わなくてもいいじゃんかよ」
といってチンピラ①に腕を掴まれる。あらやだ照れるわね……とはならない。何しろ私はこういう経験がほとんどないのだ。今はとにかくどうやってこの状況を切り抜ければいいのか脳みそフル回転で考える。できれば、というか絶対に荒事にはしたくない。そんなことしてここら一帯が吹っ飛んだら話にならないからね。
「おいそこのチンピラ」
お?白馬の王子さまが助けに来てくれたのかな?
「そこのお嬢さんが困っているだろう」
現れたのはさっき影に隠れさせてもらった大柄な…あれ?思ってたより若いおじさん、いやお兄さんだ。ボサボサの長髪を後ろで結い鋭い目にへの字の口、そして3回目だが質素な服に身を包んでいる。身長は180cm以上はありそう…。
「お前もこの街では見かけないツラだな?おい!!」
「俺らとやんのかよ?!!」
チンピラ2人が男に詰め寄る。男は動じずに2人を睨みつけたままだ。かなり肝が座っていて頼りになりそうだね。
すると男が思わぬ行動に出た。
「すまない!この通りだからその子を放してやってくれ!」
「「「は???」」」
3人同時にツッコミを入れてしまうほどの鮮やかな土下座だった。この男まさか…?
「なんだよハッタリか?図体ばっかでかいくせによお!」
見かけによらず気が弱いタイプのやつだ…!!一瞬ひるんでいたチンピラが再度攻勢を仕掛ける。もう1人は土下座をした男の背中を蹴っている。かわいそうだ…。頼りになりそうなんて思った私がバカだった。
「もうやめなよ」
私は間に分け入りチンピラを睨めつける。威嚇のために少し魔力を放出してみる。どのくらい効果があるのか知りたかったんだ。
結果は顕著だった。チンピラの表情は不安一色に染まり後ろの男は後ずさるのがわかった。あれ、私何かやっちゃいました?まあこの世界において私はかなり異質な存在みたいだししょうがないことなのかもしれない。でもそんな怖がらなくたっていいじゃないですか…。
「お、覚えてろよクソアマ…!」
「次会った時は女だからって容赦しねえからよ!」
そういって2人は急いで走り去っていき、後には恐怖に満ちた顔をしている男と気まずくなっている私が残ったのだった。
◇◇◇
予想通り男は人をまともに殴ったこともないような心の優しい人物だった。彼の名前はクリム、なんでも強くなりたくて実家を出たはいいものの、大した強みもなくて冒険者のグループになかなか入れてもらえずこの近くのまちを転々としていたのだとか。
「でアキちゃんはなんでこの街にきたんだい?」
さっきとは打って変わってにこやかに男は尋ねてくる。
「実は新しい服を探していてさ。この服は私の地元の服なんだけど目立つから」
「そういえば珍しい服を着ているんだね。とっても似合ってるじゃないか!」
そりゃそうよ!私の地域では結構おしゃれな制服だって評判だったんだから!と心の中でどやる私。
「向こうに冒険の装備とか服とか色々売ってるお店あるし案内するよ」
お互いのことを軽く話しながら石造りの街を歩く。ところどころか屋台みたいなのも出ていて美味しそうな匂いが漂っている。
私は流石に本当のことを話すわけにはいかないので適当に脚色したけどね。
「ほら見えてきた、ここがその店さ」
扉を引いて中に入ると薄明るい空間に色々な服や鎧が所狭しと並んでいた。
「いらっしゃい!…ってクリムじゃねえか。またハブられたのか?」
「いや、今日は僕の命の恩人に頼まれてここを紹介しに来たのさ」
店長らしき男とクリムはそこそこの知り合いみたいだ。そう思いながら私がお店を見ていると
「でその命の恩人がこのお嬢ちゃんってか?」
「ああ、アキさんって言うんだ」
「変わった格好してるな…」
「北方から来たんです」
躊躇うことなく嘘でまかせを言う。今の私は詐欺師だ。
「もし私に似合いそうな服とか装備とかあったら見繕っていただけませんか?」
「そういうことなら任せてくれや。おーい母ちゃん、ここのお嬢ちゃんの服選びを手伝ってやってくれ!」
はーいと年配の女性の声が店の奥から聞こえた。なるほど、親子2代、いや先祖代々このお店をやっているのかな?
────数10分後、私は完全にこの世界の住人になっていた。
戦うことがあると伝えたら店主のお母さん、私から見ればそこそこのおばさんはどちらかと言うと男性向けの動きやすい服を選んでくれた。Tシャツ、ズボン、ベルト、ローブなどどれも茶色っぽくてそれっぽい感じだ。
「ありがとうございました」
「おう、クリムの面倒見てやるんだぞ」
「やめろってば」
店主のお母さんが近づいてきて私の手を握る。
「これから大変なことが沢山あると思うけど頑張るんだよ」
「はいっ!」
そうして私の旅は1歩前に進んだのだった。
アキの髪の毛はスキル発動時のみ銀になります。通常時は茶味がかった黒です。




